その2 直前お偉いさん会議
第三部は視点がコロコロ変わります。
三日後に天道友美が学校に登校をする予定を控えているなか、関係者が緊急会議を開いていた。
秘密教団『ペルシアの華』の教主室。
そこには、普段とは違う顔ぶれが集まっている。
ペルシアの華教主の、天道秋彦
秋彦の娘、天道夏子
国持兵団研究所の所長、国持恭平
兼松財団の副会長、兼松矛美
現在の日本の総理大臣、麻草首相
荒川本家の長男、荒川武義
そして、フリーのスナイパー早川莉奈。
まずは教主の秋彦が口を開く。
「緊急でお集まりいただきありがとうございます。実はイケメンマスターの荒川武威君の動きについてみなさんのご意見をお聞きしたいと思います。まずは学校計画の資料をご覧ください。第四版までは普通に学園計画だったのですが、最後に送られてきた第五版について忌憚ないご意見をお聞かせいただきたいのです。なんといいますか、とても彼らしくないといいますか、こちらもコレを実行するべきか悩んでおりまして・・・。」
それに対してスマートなイケメンがメガネを直しながら声を出した。
荒川武義、武威の兄である。
「一読させていただきました。弟がこのようなことに関っていたという事に驚きを禁じえないのですが、この第4版までのものでも相当大掛かりに見えます。弟がこの計画を出したからといって、素直に実行しようという皆さんにも驚きます。弟程度のものの言葉をここまで素直に実行するのは、大胆が過ぎるのではと思うのですが。」
すると、麻草首相は武義を見る。
「いいえ、V君を知る我々は彼が何かしようとするのであれば、協力を惜しまない気持ちなのですよ。ですから第四版まではまったく彼の計画とおりに進めるつもりでした。ですが、彼を知っているからこそ第五版が理解できないのです。この『イケメンマスター争奪戦』という計画が。」
武義は首相にそういわれては、弟の武威を小物扱いするのも気が引けたので、純粋に今見た第五版の事だけをいう事にした。
「弟は随分信頼されているのですね。ですがこの第五版は常軌を逸しています。むだに若者を危険にさらすようなものです。こんな事が許されるわけがない。こんな計画はやめるべきです。」
そこで秋彦は今度は、兼松矛美に問いかけた。
「兼松さんはどのようにお考えですか?。」
すると女将校のようなたたずまいの矛美は鋭い目で秋彦を見る。
「私は武義とちがって武威の事が気に入っていますからすこし贔屓な見かたをしてしまいます。その私でもこの第五版は正直理解に苦しみます。なんと言いますか、友美様のために、学校の生徒だけではなく、そこに関るすべての人を犠牲にしようとしているようにすら見えます。たしかに武威らしくないですね。もっと別の意思がかかわっているようにも見えます。」
すると夏子がひとなつっこく矛美に言った。
「矛美さん、イケメンスイッチの中にVさんが入ったら、そこには武玄さんもいたそうですよ。わたしは武玄さんをよく知らないんですが、其の方向から何か考えられませんか?。」
矛美は驚いた顔をした
「え、父が?・・・いえ、あの非常識な人ならそのくらいはあるかもしれませんね。ですが父はもっと単純といいますか、武道の事しか興味がない人でしたから武威を鍛える事に楽しみを見出す事はあっても、孫が通う学校についてなどは興味を持たないと思います。」
そこで国持所長も同意してきた。
「ひょひょっひょ、ワシも武玄とは長いが、あやつは確かに孫の学校についてなど興味を持つまいよ。ましてV君がいるなら、武玄ジジイが馬鹿なことを言い出しても、V君がそれを許すまいて。この計画に武玄のジジイがかかわってると考える必要はないと思うぞ。」
すると、そこで一番奥で座っていた女性が足を込んで手を上げた。
早川莉奈だ。
「あの、お話中に申し訳ないんですが、私はココにいるの場違いじゃないかしら。お偉いさん達の中で居心地が悪いのよね。」
すると秋彦は莉奈に答えた。
「いや、あなたは荒川君のために随分自己犠牲的だと友美も言っていました。そんな貴方の眼から見た意見をお聞きしたい。少しでも何か思いつくことがあったらお話をお聞きしたのですが。」
莉奈は机の上に足を投げ出して組む。
「あのさ、あんたと夏子は私を拷問するほど敵対関係だったじゃない。その私に何を期待しているわけ?。」
秋彦は、まっすぐ目線を返す。
「あの時は、我々は確かに殺し合いをする関係でした。ですが今は荒川君の問題です。我々の敵対関係が邪魔して荒川君の問題に答えが遅れるのは私の本意とするところではありません。私の土下座で今回はご協力をいただけないでしょうか。」
そういうと、秋彦は椅子を引いて椅子から降りようとした。
その瞬間、莉奈は足でガンと机を蹴り、秋彦を制する。
「土下座なんてあざという事はいらないわ!それにいい女っていうのは、信じた男のためなら敵とだって寝られるものよ。いいわ、荒川武威に免じて、今回は協力するわ。でも私の意見は多分あなた達には参考にならないと思うわよ。」
椅子に座りなおしながら秋彦は聞き返した。
「ありがとうございます。ですが我々に参考にならないというのはなぜですか?。」
「私は荒川武威を信じているし、友美ちゃん達が好き。だから友美ちゃんたちのために誰が犠牲になろうと関係ないし、その犠牲の中に私が含まれていても、喜んで荒川武威の言葉を信じるわ。私達に言えないことを荒川武威がしようとしているなら、私は黙って信じて手を貸すだけ。理由なんて意味の無いものは検討しないわ。馬鹿な女には『お前が必要だ』っていう言葉だけで充分なのよ。」
その言葉に全員が沈黙した。
そこでまずは秋彦が小さくつぶやく。
「なるほど、そうだな、そうかもしれないな。」
夏子も嬉しそうに言う。
「そうですね、Vさんは何かをしようとしているのは確かです。私にも理由はそれで充分かもしれないですねえ。現にチベットのあの遺跡に関しても動いている所を見ると、Vさんは学園だけの事を考えているわけではないと思うんです。そういえば爆滅団との決戦の時も、こちらの主力部隊を騙すように囮にして、少数で爆滅団を壊滅させたじゃないですか。もしかすると今回は私達がおとり側で、Vさんはコッソリ別の事をしようとしているのかもしれませんよ。」
国持所長もそれを聞いて嬉しそうに言う。
「ひょっひょっひょ、そうじゃ、あの男は浅はかではないし自分中心のずるい男でもない。V君が我らに危険を求めるならば、それは世界の為に必要なことかもしれんぞ。あの男をわしも信じることにしよう。第五版も実行して良いのではないか?」
そこで、兼松矛美もうなずく。
「私はまだ乗り気ではありません。ですがここまで信用されている武威には驚きました。充分なバックアップをいただけるのでしたら考えましょう。それにチベット遺跡での一件もあります。あれを見てしまった後では、この計画も意味がある気がしてきますし。」
麻草首相は黙ってうなずく。
慌てたのは、荒川武義だった。
「みなさん正気ですか?いくらなんでもおかしいでしょ。弟を信じすぎではないですか?こんな計画はおかしいです。第四版までが限界です。」
その武義の横で、鼻をすする音がした。
武義がその方向を見ると、莉奈がうっすら泣いていた。
「お兄さんが思うよりも荒川武威は偉大だったって事よ。ここの人たちの信頼が、荒川武威という男の真の姿。みんなが黙ってココまで信じてくれて、きっとあの人もスイッチの中で感動してくれてると思うわ。」
そういいつつ、莉奈はハンカチを取り出し目を覆う。
ここでは莉奈だけがVの覚悟を知っている。
だからこそ、このVへの信頼が嬉しかった。わが事のように・・・・。
そこに、バタバタと秋彦の秘書の武田が飛びこんできた。
「会議中失礼いたします、いまV様から学園計画の最終版が送られてきました。!」
それを受け取った秋彦は少し口元だけで笑うと、その受け取った紙を兼松矛美に渡した。
「見てください、そちらの心配は荒川君もわかっていたようですね。これで最終調整していただけませんか?。こちらもこの計画書に沿った人材を用意しましょう。」
それを見て矛美も口元で笑うと、隣に座る甥の武義を通り越して、紙を莉奈に渡す。
莉奈は「なんで私に?」という顔をしながら受け取る。
すると矛実は言うのだった。
「もしかすると、武威は数年後の未来に関して、なにか用意しようとしているのかもしれない気がしてきました。いいでしょう、これで調整しましょう。」
そして紙を受け取った莉奈は急に大きな声を上げる。
「ちょ、武威さんは何を考えてるの!こんなの無理でしょう!。」
読んでくださりありがとうございます。




