その1 始まりのうぷぷい
ここから第三章です。
チベットの、ある古代遺跡
ココは日本の発掘チームがアメリカやチベットの大学と協力して発掘を行っていたが、今は兼松財閥がすべてを買い取って研究を行っている。
チベットは、遺跡を大事にしていそうだが、実は外国人が楽しめる遺跡らしい遺跡はあまり無い。
その理由は二つあり、文明が途切れずに長く続いた土地であるため、西洋ならば遺跡になるような歴史のものも使い続けており、保存状態が良くない。
もう一つの理由は、いまだに古い言い伝えを守り、外部に秘密を漏らさないため、西洋文明にその存在が伝わらないからだ。
この地下から見つかった遺跡は後者のもので、秘密のお経を解読して発見した。
文明史をひっくり返すほど大発見だが、世界はこの遺跡の事を知らない。
なぜなら、発見した科学者がすでにこの世にいないからだ。
古代の技術としては信じられない密閉度のため、いまだにぽっかりと地下施設の空洞が保管されていた。
測定では70000年前とでているのに、地下にこの巨大な空間は驚異的だ。
兼松財閥が組織した発掘チームは、この遺跡発掘中である。
天井の高さは80メートルはあり、すべての装飾品が大きい。
装飾品の中でも廊下の両脇に並べられている巨像郡は圧巻だ。
大体のものが50mはある神々を模した像の様に見える。
材質も石ではない。信じられないことに合金で作られている。
簡易的な年代測定器で調べて見ると、一番古いものは100000年前は前とでる。
壁のレリーフも精細で、すでに洗練されたアートに昇華しているようだ。
その中を、財閥の裏の支配者といわれる兼松矛実と、ペルシアの華の天道夏子が数十人の調査班を引き連れて歩いていた。
夏子は矛美に言った。
「すごいですねえ、これだけの物が世界に知られないというのは、実にもったいないです。」
まるで、二枚目の映画俳優のような顔立ちの兼松矛美は、落ち着いた雰囲気でうなずく。
「ええ、ですが世界は本当に重要なものは、民衆に知らされないように出来ているものです。たとえばイケメンスイッチとか・・・もですよね。」
「えへへ、それもそうですね。」
二人が些細な話をしている間に、遺跡内の問題の場所についた。
夏子は、部屋の前の象形文字を指差して聞いた。
「ここは、部屋の名前が書いてあるのですか?なんて書いてるんでしょう?。」
すると、女将校のような燐とした兼松矛美は小さく答える。
「神への捧げものをする部屋・・・と書いてあるらしいです。ここで3人の優秀な科学者と作業員4人が死にました。」
夏子は、ひょこりとその部屋の中を覗く。
「なるほど、ここが資料に書いてあった『文字を読んだら、人が捩れて死ぬ』部屋ですね。」
「ええ、この部屋に入り文字を読んでしまった瞬間、7人とも・・・。」
「それは随分危険な部屋ですね。」
そう言いながら、夏子はひょこりと部屋に入ってしまった。
すると、慌てて矛美は部屋の外から夏子に言う。
「危ないですよ!特にいま布がかけてあるところは見ないでください。そこの文字を読んでしまった者が捩れ死にましたから、今は隠してあるんです。甥が言うには、人が死ぬ仕掛けはこの部屋にあるのではなく、文字のほうにあるので扱いに気をつけろという事でした。ですのでそちらに送った資料に写真は添付しなかったのです。」
夏子が入ると、部屋の中は乾いた血でドス黒くなっていた。
正面を見ると、目の前の壁が一部布で隠されている。
「なるほどお。では撮影と調査はこちらで行います。」
そういうと夏子は調査隊に指示をだす。
調査隊は部屋をビニールシートで中が見えないように囲むと、撮影用の機材を搬入しだした。
矛美は夏子に言う。
「今回は学園計画でご縁があったそちらにお願いしましたが、モノがモノだけに秘密は絶対漏れないようにお願いいたします。」
「おまかせください。それにしても文字の方に危険があるという発想はすごいですね。私達でしたら、絶対に気づきませんよお。それを言った甥っ子さんも科学者さんなのですか?それともオカルト関係の人ですか?。」
「いいえ、甥は武道家なんですよ。その方面では少しは有名らしくて、もしかしたらそちらでも知っている人がいるかもしれません。」
「へえ、私もそっち方面は詳しいんですよ。よろしかったらお名前を教えてください。」
「ええ、甥からは自分が来たことは誰にも言うなって言われていたので、ほかの人には内緒ですよ。甥の名は荒川武威。その方面ではロンリーVと呼ばれているそうです。」
そこで夏子が、異常に驚いた顔で目を見開いた。
その形相があまりにアニメッチックで大げさなので、矛美もびくっりと驚く。
「な、夏子さん?そんなに驚くことなんですか?。」
夏子は急に早口で話し出した。
「そ、それはいつ連絡が来たのですか?電話ですか?それとも代理の人が来たとか?。」
急な夏子の変貌に困惑しつつ、矛実はこたえた。
「2週間前くらいにひょっこり本人が遊びに来たんです。・・・・あの、もしかしてコレはかなり秘密にしないといけないことだったのでしょうか?。」
夏子は、それを聞き、両手をバタバタさせて数秒慌てた後、次は一転して静かに腕を組んで考え出す。
そして矛美を見た。
「2週間前ってことは、中国爆発の一週間後か・・・・。そのことは、絶対誰にも言ってはいけないかもしれません。もしかすると想像以上に大きな問題かもしれませんよ。こちらでその真意をVさんに確認しますので、それまではたとえ家族にも言わないようにしてください。」
「わ、わかりました。」
すると後ろで調査隊の一人が急に叫んだ。
「おい、撮影データを今見るな!」
その声に矛実と夏子は振り返る。
撮影データをタブレット端末で見ていた男はデータを見ながらつぶやく。
「u p u p u i」
その瞬間、つぶやいた男は悲鳴を上げながら雑巾でも絞るように体が捩れる。
「うぎゃああああ、助けて・・・・」
ボキボキボキ。
体中の骨が折れる音がした。同時に男の口と肛門から、圧迫された内臓と血が飛びだし、周りを血の海にする。
そして捩れて赤い一本の棒になって絶命した男は、そのままそこにパタリと倒れるのだった。
夏子は、いま男がつぶやいた言葉を復唱してみた。
「u p u p u i?。」
調査隊の男が目の前で捩れて死に、みなが動揺する中、夏子と矛美だけは冷静だった。
矛美は夏子も冷静なのを確認するという。
「あの文字は、見てしまうと口に出さずにはいられないらしいのです。そしてつぶやいてしまったら死にます。不思議な文字で、国も教養も関係ないようです。見たら全員が『うぷぷい』とつぶやき、ああなってしまいました。」
そう言いながら、矛美は目をつぶりながら、手探りでタブレットをひろうと、手刀を振り下ろしタブレット端末をへし折って壊した。
そして夏子を振り返り言ったのだ。
「甥が言うには、これはいイケメンスイッチと同種の力だとか。私には理解が出来ませんが『うぷぷい』というこの言葉は世界を滅ぼす力があるそうです。」
夏子は恐怖した顔で言った。
「見ただけで国も学歴も関係なく殺されてしまうのでしたら、マスメディアやインターネットが普及した今なら、それは確かに世界を滅ぼす殺戮兵器です。そしてその秘密をVさんが知っていた・・・・。何かが、何が起きようとしています。私達の予想もしていなかった何かが・・・」
読んでくださりありがといございます。
次回から主人公は歌田芽衣です。




