その30 あるエスパー少女の回想 ミグニ
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走って外に向かうエスパー部隊と友美たちを、早川莉奈とチャンは後ろから眺めていた。
チャンは莉奈を覗き込む。
「若いは元気あっていいね。莉奈さんは走らないのか?。」
莉奈はライフルを肩に担ぎながら、可愛い娘でも見るような優しい目で友美達の背中を眺めている。
「一緒に走ったら、あの子達を見れないじゃない。私はあの子達を見てないといけないの。荒川武威がもどってきたら、見たことを伝えないといけないから。」
チャンはニコニコした。
「初めて池袋の私のところに来たときは、莉奈さんもっと潰れていた。でも今わ幸せそう。こんな危険の中なのに。」
すると莉奈はちょっと驚いた顔をすると、すぐにいつもの微笑をして答えるのだった。
「そうかもしれないわね。絶望と孤独の中にいたはずの私が、いつのまにか荒川武威にあんな可愛い妹達を押し付けられちゃったから、人生が少し楽しいのかも。」
そう言って、二人は歩いて外に向かうのだった。
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私達は、地上出口で立ち往生中。
外には、まだ何万というアーマーノードがいるし、東アジア平和会議の会場前には、汗元首相が巨大ロボの汗タムで警備している。
うーん、どうしようかな。
すると、Vちゃまから通信が入ってきた。
『友美!電池のもちを気にして非常時に通信をしてこないとはどういうことだ!。電池のモチよりも今を生きることが優先だ。しっかり通信して来い!。』
「はーい、すいませんでした。でも、もうこれからはVちゃまが指揮してくれるから大丈夫ですよね。」
『まったく、返事だけは良いな・・・。まあいいや。まずはさっきチャンから聞いたが汗タムの機能の一つにESPを防ぐ薬品を常時霧状に散布するというのがあるらしい。だから、直接攻撃しかない。そこで・・・玄太君にはいまから酷いお願いをしないといけない。』
「なんだいV君。まさか・・・自爆?。」
『それに近いお願いなんだ。玄太君には俺がいたら俺がやるはずの仕事をお願いしたい。つまり汗タムを正面から倒す仕事だ。その隙にほかのメンバーは会場に突入するんだ。』
玄太はニコニコしながらVちゃまに言った。
「まかせて、命に代えても汗タムは倒す。」
そこでお姉ちゃまが通信に割り込んできた。
「Vさん、会場までには何万ものアーマーノイドがいます。これはどうやって倒しましょう?。」
『ああ、それだったら4班の初音ミグニに頼めば良い。ミグニの電磁音声は精密機械であるほど電磁ノイズで狂わす事が出来る。敵の半分でもそれでつぶせれば隙間が沢山出来るから会場まで走りこめると思う。ミグニの歌で平然としている奴らは、たいした機械ではないから3班だけで倒せるはずだ。3班が得意にしている空中戦は、人型のロボっであるやつらにとっては鬼門のはずだ。』
おお、Vちゃまはさすがに作戦がスマートです。
そこで4班班長の初音ミグニはメガネを外しながら頷く。
って、ミグニ!今サラっとメガネ外した?
私の驚きを無視してミグニは通信機のスイチを入れる。
「Vさん、できたら私の歌を聴いていてください。あなただけの歌姫になりますから。」
『頼む。ミグニの歌でアーマーノイドをみっぐみぐにしてやってくれ。』
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一年前
4班ロの5号は、研究所を脱走したあと秋葉原に逃げ込んだ。
そこで4班ロの5号は衝撃的なものを見る事になる。
ヴォーカロイド・・・その青く長い髪をしたCGはそう呼ばれていた。
ただ、人が指示したおりに歌い、人が指示したとおりに踊るだけの存在。
そのCGの少女は初音ミグと呼ばれて、まるで実在の人のように扱われ語られていた。
初音ミグの歌が聞こえてきた
私は歌うよ
それが私のプログラムだからじゃない
私の歌を好きだという
貴方あなたのために歌いたいから
4班ロの5号は涙が止まらなかった。
こんな、人に指示をうけないと何も出来ないプログラムが、こんなに生き生きと自分のプログラムを否定した歌を歌っている。
誰かのために、あたかも自分の意思で歌っているような事を言っている。
そして沢山の人に愛されている。
『生意気だ、ただのプログラムのクセに』
涙が止まらない
『生意気だ、兵器であることに逆らえない私よりも人間らしいなんて』
ボロボロ涙が流れる。
ほかの4班の仲間に慰められながら、4班ロの5号はつぶやくのだった。
「私も初音ミグみたいになりたい、初音ミグに・・・」
そしてその時から、初音ミグニと名乗った。当然姿も似せた。
その時から、ミグニには夢が出来た。
いつか本心から『プログラムされているからじゃない、自分の意思で誰かの為に歌いたい』という夢を。
研究所襲撃後、ミグニは荒川武威の兵となり、メガネをかけてもらった時に言ってみた。
「私は、ヴォーカロイドになりたいです。」
荒川武威は少し考えてから答えた。
「君は面白いな。どんな夢でも追うべき夢があるなら手を貸そう。君がいつかヴォーカロイドを越えたヴォーカロイドになれるくらいにね。」
そして初音ミグニはサイキックヴォイスを荒川武威と共に開発したのだ。
人が聞けば魂を震わせ、電子線ではコンピューターを破壊するサイキックヴォイスを。
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初音ミグニも、マコ子のように、私の目の前でなんとメガネを折って捨てた!。
どうなってるの??
するとミグニは嬉しそうに主張した。
「私は今から、恩ある人の為に歌う。私がそうプログラムされたからじゃない。恩ある人に喜んでもらいから歌うの!私の心が望むまま、私は全力で歌う!」
う・・・なんだろうこの気持ち、涙がこみ上げてくる。
私がVちゃまに抱きしめられときみたいな、この気持ち・・・。
そう、これは私が人形から人になったと時と同じだ。
するとエスパー部隊の娘たちが全員、メガネを外して折りだした。
隊長の佐藤柏もメガネを取ると折りながら顔つきが変わる。
「友美様。私達はVさんによって兵器から人にされてしまいました。兵器なんかよりもずっとちゃんと戦います。さっきはマコ子のために尊厳を守れと命令してくれてありがとうございます。私たちはプログラムなんか無くっても、友美様とと共に戦えます。」
「み・・・みんな・・・・」
私は、プログラムを破る大変さを知っている。
だって私なんて、まだプログラムを破れないでいるんだもの。
涙がこぼれまる。
みんな・・・すごいよ・・・。
すると玄太が泣きながら、バキバキとラオウのような体に変化し始めながら。
大黒流奥技、大黒憤怒態という技らしい。
玄太は泣きながら叫んだ。
「今なら勝てる!この熱い気持ちで負けるわけがない!汗タムは僕が倒す!みんな、イケメンスッチを・・・V君を頼んだぞ!。」
そうして私達は最後の戦いに突入するのでした。




