その26 見渡す限り敵ばかり
私達は北京に向かい中。
国持兵団研究所が、急いで気念砲に移動ユニット用のブースタープログラムを追加する装置を作ってくれたおかげで、移動も楽ちん。
超低空で飛んでるように走るのですが、ブースターの補助のおかげで山だろうと川だろうと、お構いなしに進めるスグレモノ。
この如意棒や気念砲に機能を追加する取り外し式のユニットは、Vちゃまが最初から考案していたものらしく、すでに試作品が沢山あった為に今回は準備に間に合ったとか。
ただ、急に動かなくなる可能性もあるので、そのときはあきらめてくれと言われているけど。
でも、すでに13時間ほど使用しているけど、順調順調。
早川莉奈さんは『ごめんなさい、私は体力がもたないから休憩しながら行くわ。追いつくから先に行って』と言って、10時間くらい前に別行動になったけど、それはしょがないと思う。
たしかに、人造人間や強化人間でないと、この強行軍は無理かもしれないかな。
玄太はついて来ちゃったけど。
今私達は、人目も気にせず時速500kmは出しているけど、北京は遠かった・・・。
さらに3時間後
やっと北京の中央部近くまでつくと、私達は移動ユニットを小型に戻し、東アジア平和会議の会場に向った。
いちおう、観光客っぽい格好に変装はしている。
怪しくないように動いているけど、どうも周りの人達の様子がおかしいな。
全員帽子を深々とかぶって歩いている。
もう少しで東アジア平和会議会場というところまで来て、そこでお姉ちゃまが小声で通信機で全員に通達を出してきた。
『一旦退け!ここはみんな焦りすぎた。敵地での異常は罠って相場が決まってるのに失敗してしまったかもしれない。よく見たら私達以外に観光客風の人間がいないじゃないか。ここはあきらめて一旦退こう!。ただし自然に動くんだ。』
私はぎょっとして、さりげなく回りを確認した
たしかに焦って異常を見落としたかも。
私はにこやかに言ってみた。
「あ、みんな、そろそろホテルに帰ろう。疲れちゃった。」
エスパー部隊も自然に「そうだね、疲れちゃった」とか言いながらこの場から離れようと試みた。
そのとき、少し遠くから日本語で声が聞こえてきた。
「逃がすな!数時間前に異常な速度でこちらに向かっていた集団が報告されている。念のため一般人であろうとも捕らえろ。」
その声に反応するように、周りにいた人たちは全員帽子を投げ捨てる。
そこで私達は戦慄します。
この周りにいる何万という人たちが全員アーマーノイドだったのだ。
お姉ちゃまは、素早く背中のリュックに隠した気念砲を展開すると、周りに乱射を始めた。
「これは、ちょっぴりヤバイ状況だ。逃げるよりもいっそイケメンスイッチを奪取に行こう。こうなったら逃げるも攻めるも同じだ。」
エスパー部隊も気念砲と如意棒を展開し戦闘態勢になり、すぐに攻撃が始まる。
でも実は、私は軽い絶望感すら覚えていた。
まるで冗談みたいにアーマーノイドの銀色の頭が沢山見えているから。
どのくらの絶望感かというと、東京ドームを満員にするようなライブをしていたら観客が全員ゾンビで、ジリジリと全員がステージの自分を襲ってきたような。そんな絶望感ね。
するとエスパー部隊隊長の柏が通信で叫んだ。
『こうなってはしょうがない、一か八か会場に飛び込みましょう。できるだけVIPを人質にすればあるいは助かるかもしれません。できたら粉主席を盾にするくらいの気持ちで。』
その言葉に私は全員への指示で応える。
「エスパー部隊、全方位フォーメーション。東アジア平和会議に突入します。」
すると、訓練されたエスパー部隊は私を中心に円形陣になる。
外側の20人は防御。内側の人間が攻撃専門だ。
このフォーメーションは、エスパー部隊だからこそのフォーメーションだと思う。
普通は後ろに入った人は、十分な攻撃を出来ないから。
エスパー部隊の気念砲や如意棒剣が空中をすごい勢いで飛び回りながらアーマーノイドを倒していく。
でもこの量の敵は本当なら予想しておくべきでした。
美メン教団のような訳の分からない連中に200体も先行者を貸し出したということは、自国にはどれほど沢山の先行者があるかという事だよ。
しかも、こいつらには人の脳が入っているタイプも随分いるっぽい。
頭を破壊すると、血が出る奴とオイルが出る奴がいるから。
そうか、美メン教団に協力するフリをして、ロシアの脳移植技術も盗んでいたんだな。
人間の脳が入った奴は動きがいいから厄介だな。
しかもカンフーみたいな攻撃してくるし。
私達は円形陣でノロノロと会議会場に向っている。
急がないと避難されちゃう。いそがないと。
玄太はどうしたんだろう?
見ると、玄太は棍棒を振り回すスペースが無いくらい敵に囲まれて苦戦している。
これだから考えなしは使えないんだよー。
Vさんならきっとエスパー部隊と上手く連携してこの軍隊と戦えたでしょうに。
そうだ、個人的な戦闘力は玄太が上でも、きっと総合的な勝利を得る能力はVさんが上なんだ。
あ、やっとなんか気持ちが楽になったよ。
Vさんの方が玄太より上です、うん絶対。
すっきりしたら、この玄太を上手く使い捨てて勝利に近づこうという気持ちになってきた。
だから私は叫んだ。
「玄太!イケメンスイッチを取り返せたら、私達全員で一日だけ玄太専用メイドカフェしてあげるから、会場への道を開いて!好きに撮影してもいいから!。」
すると、少しはなれたところで、豚みたいな咆哮が響きます。
「ぬおおおおお!おれのモテ期来たーーー!夢の美少女36人による俺専用メイドカフェだと!!しかも友美ちゃん達の自由撮影だと!!精神が加速するおお!」
その声の方向のアーマーノードが、冗談見たいに2~3体吹き飛んだ。
そこでさらに豚みたいな玄太の叫びが響きます。
「大黒流奥技!大黒憤怒態!!!!」
そこで私達は目を見張ってしまった。
玄太の丸いからだが、みるみる逆三角のマッスルボディーに変化していったのだから。
身長も少し伸びているように見えた。
あっというまにブタが、2.5メートルくらいの、異常な筋肉男になった。
そうか、これで玄太が異常に重かった理由が理解できた。
あの丸い体は脂肪ではなく、異常に柔らかい状態に膨らました筋肉だったんだ。
ならば、今までのパワーも納得がいくね。
顔もふざけたアキバ系から、仁王のような形相になってるし。
お姉ちゃま、もっていた武器を手から落としそうになるほど呆然としてつぶやくのでした。
「ハ、ハート様がラオウになった・・・・。」
玄太ラオウの顔には鼻毛が書いてあって、おでこに「にく」って書いてあるのがちょっと面白いけど今は気にしていられない。
玄太はマシンガンや刃物の攻撃をものともせずに次々にアーマーノイドを吹きとばしながら、私達の進行方向に歩いてくる。
アーマーノイドがまったく玄太を妨害できていないだと・・・。
なに?この冗談みたいな光景は。
ESP部隊の柏も呆れて言いました。
「人は煩悩をエネルギーにしているっていうのを痛感しますね。アレ。」
玄太は私達の前まで来ると叫びます。
「今から前方の敵を倒しまくる、ついてきてくれ。」
そして棍棒を振り回しながらガンガンアーマーノイドを吹き飛ばしていった。
なんだこの強さ?反則じゃないの?
煩悩、恐るべし。はじめからこういう作戦で玄太を利用すればよかったかも。
会場の入り口近くまで進めた。
もう少しで建物に突入できる。
そのとき、前方からスピーカーから発したような大きな声が響いた。
「股間キャノン砲、発射!」
次に、空気が震えるほどの発射音。
そこで、なんとあの玄太が吹き飛ばされて宙を舞ったのが見えた。
玄太の傍にいたと思われるアーマーノイドも、今の一撃に巻き込まれたのか10体ほど一緒に吹き飛んでいる。
50メートルほど吹き飛ばされた玄太は、白目をむいてアーマーノイドの中に落ちていった。
え?どうして?
何が起きたの?
すると、玄太を吹き飛ばしたあたりから、20mはありそうな巨大なロボットがたちあがったのです。
ユックリと起き上がるそのロボットは・・・
うわ、ダサ!すごくダサいデザイン。
ダンボールで小学生が作ったみたいなダサイデザインだよ。
そして、それを見てお姉ちゃまはボソリともらす。
「なってこった、アレは中国が発表した先行者の姿そっくりだ。こんなに巨大だったのか・・・」
そして巨大ロボットの胸のところが開くと、中から人が出てた。
汗元首相だった。
どうやら3人乗りで動かしているらしく、汗元首相の後ろには二人の若者が乗っている。
すると汗は嬉しそうに私達に叫ぶのでした。
「わはは、我ら親子の力を思い知らせてやる。うちの息子達はニートだからゲームのように操縦できるこの先行者では無敵だ。この『機動戦士 汗タム NEET』によってペルシアの華などひねりつぶしてやる。そして前面にたって戦う私を見ろ!」
汗元首相・・・で、汗元首相自身は何をするのだろう?操縦はしていないように見える。
そこで叫ぶだけ? ほんと使えない奴ですね、あいつは。
でも、玄太がパワー負けしたのはヤバイかも。
こんな化け物を私達は倒せるの?
大ピンチかも。
芽衣は背中の気念砲をバズーカーサイズに膨れさせて汗タムに発射した。
「これでも食らえ!」
その閃光は素早く腕でブロックされる。
すぐに汗タムの股間についたキャノンが私達に放たれた。
攻撃隊は、一旦攻撃をやめて、全員でキャノンをブロックするのを手伝う。
「ぐああああ!。」
しかし、思いのほかキャノンが強力だったらしくブロックしたエスパー達は襲撃で悲鳴を上げた。
あんなふざけたデザインのキャノンなのに!。
これは何発も食らっては危険そうだ。
すると、周り中のアーマーノイドも調子に乗って、こちらにマシンガンと迫撃砲を一斉に打ち込んでくる。
何万というアーマーノイドによる銃弾と迫撃砲。
本来攻撃に回っていた攻撃班も防護に専念せざる得ません。
もう、青い空が弾丸と迫撃弾で真っ黒に見えるほどの攻撃で、爆発と弾丸を防ぎ続けるエスパー達はみるみる衰弱していく。
そこで、再び汗タムの股間からキャノンが放たれた。
凄まじい衝撃が、ESPの防護壁越しに伝わってきた。
もう、助からない・・・・
しかも、あんな恥ずかしいキャノンに殺されるかもしれない。
そう思うと、私は絶望感で通信機のスイッチをいれてしまった。
最後に・・・Vちゃまと話をしたい。
私は、生まれたときにイケメンスイッチを守る為にマインドコントロールのプログラムが脳に埋め込まれてる。
こうやってVちゃまにすがるように傍に居たいのも、そのプログラムのせいらしいです。
前はこの気持ちがプログラムのせいだと聞いて絶望もしたけど、今はそんな事はどうでもいい気持ち。
Vちゃまの声が聞きたい。
「Vさん・・・Vさん・・・、私達が死ぬのも時間の問題です。Vさん、もしも私が死んでも・・・忘れないでくださいね・・。」
するとVちゃまはすぐに叫び返してきた。
『なに!どうしたんだ?何が起きているんだ!そんなにヤバイのか!だったら急いで降伏するんだ!死ぬ前に降伏して希望をつなげ。!!!。戦うことより生きるんだ!通信機と如意棒と気念砲を飲み込んで降伏して、次のチャンスにかけろ!』
それを聞いて、私とお姉ちゃまと芽衣は、ハッとして目を合わせました。
降伏?そんな手もあったか。
お姉ちゃまは黙って頷く。
芽衣もうなずき返してくる。
見える場所にいるエスパー部隊も全員頷くと、顎をはずして通信機と如意棒と気念砲を飲み込んだ。
私は、柏に頼んで私の声をESPで大音量に変えてもらい、汗元首相に叫ぶのでした。
「攻撃をやめてください!私達は降伏します。武装放棄して投降しますから!。」
捕まったら何をされるか分からないけど・・・。
私は生きてイケメンスイッチを取り戻す、その僅かな可能性を選んだ。
次回予告
ついに敵の手に落ちてしまった友美達。
少女部隊は、汗のニート息子の欲望の対象となろうとしていた。
友美達が捕まっている牢の外では、着々と東アジア平和会議の準備が進み、大沢幹事長は野望目前に自然と笑みがこぼれる。
この友美達とイケメンスイッチの危機にVははたして間に合うのか?
だが東アジア平和会議の開会スピーチで大沢幹事長は嬉しそうに、講演台で宣言するのだった。
「このイケメンスイッチをもった私が世界の平和を牽引します。今日から私がイケメンマスター大沢です。アジアの同胞達よ、私と共に歩みましょう。わが同胞達よ、私をリーダと認めるのです、わが同胞達よ!」
物語は衝撃の結末に向う。




