その18 孤独求敗の逸話
私達は、ペルシアの華の本部に来ている。
ちょうど世界各国の支部長も、護衛隊選出の件で来ていたので、早速世界会議を始めた。
席の後ろには、房代さんや玄太、それに国持所長も来てもらっている。
前の会議では、鳩屋元首相が公表しようとしていたことを、世界中の支部長が知っていたにもかかわらず、自国から護衛隊を出すことばかり考えて、誰も動かなかったことを攻めあっていた。
その姿を見て、ふとVちゃまの言葉を思い出しました。
大きな組織は「誰かがやっているはず」という考えが起きる可能性があるから、誰かに指示して責任を与えるのは天道一族の仕事だとVちゃまは言ってた。
たしかに、これは私の大失敗だ。
今も、各国が責任の擦り付け合いをしているなか、中国代表のマーが発言した。
「みなさん落ち着いてください。幸い鳩屋元首相は頭がおかしいという説がある人です。
ココは彼が妄想癖のある頭の病気であるとすることで、上手く切り抜けましょう。
そのためには、イロイロ各国の根回しが必要です。
日本は海外からの圧力に弱いですから、各国の学者や医師の権威に、鳩屋元首相が脳障害の疑いありと発表してもらいましょう。
その検査と脳障害の診断は、アメリカで行ってもらうのが最適と考えます。いかがでしょうか?。」
そこで教主の天道秋彦叔父様が立ち上がりました。
「いまの中国支部の意見で急いで工作を進めたいと思います。異論のある方はいますか?。いなければ、急いで中国支部を中心に行動をお願いします。この件に関しては各国は中国支部の要請にできるだけ応えるようにしてください。!」
そうして、この世界会議は幕を閉じた。
アメリカ支部の代表のクリントンさんは、本当に悔しそうに顔をしかめている。
これでクリントンさんは世界議長から遠ざかり、中国のマーさんが一番世界議長の座に近くなったのだから悔しいのはしょうがないだろうけど。
この後、私の警護隊も中国の精鋭部隊が行うことに決定した。
―――
今は、家に帰る途中の車中です。
まわりには10台以上の中国チームの護衛車が並走している。
なんかモヤモヤする。
でもこのモヤモヤの理由が分からない。
さっき通信機でVちゃまを呼んで見たんだけど、今忙しいのか返事がなかった。
私は落ち着かないので、イケメンスイッチをいじってる。
面を揃えては崩し、また面をそろえて・・・それを繰り返していた。
面をそろえてもスイッチが出てこないので、いつもならばやらない6面揃えとかもやっちゃうぞ。
6面からでる6本のスイッチを同時に押すと、世界中のイケメンが大爆発をするといわれているけど、それを試したのは過去の記録ではノアさんだけなので、真実は不明です。
1999年に幼かった私がうっかり6面を揃えてしまった時は、お父ちゃまとお母ちゃま、それにお爺ちゃまにまで凄く怒られてしまい、それいらい複数面をそろえることはしていないのですよ。
でも見てください!
私は2面でも3面でも1秒以内にそろえられます。6面だって2秒以内でできるんし。
でも多面を揃える事は、封じられた私の無駄な才能です。
多面揃えで出てくるスイッチで何が起きるかは不明なので、過去数百年だれもやっていない未知の領域だから。
今私達が乗ってる車には、私と秋彦叔父様、夏子さん、房代さんが乗っている。
前を走る車に、芽衣、冬美お姉ちゃま、玄太、国持所長が乗って居る感じ。
私がイケメンスイッチをいじってるのを見ながら秋彦叔父様は聞いてきた。
「荒川君とは連絡がつかないのか?。」
「ええ、時々通信機を離れて修行しているときがあるみたいで、そういう時は気づかないから出てくれないんです。」
「そうか、できるなら世界会議でも荒川君に参加してもらって意見を言って欲しかったのだが、予定を伝えて無かったこちらも悪いからな。内容だけ転送しておいて後から意見を聞かせてもらおうとしよう。」
秋彦叔父様がそう言ってる横で、夏子さんが携帯端末で議事録などを転送しているようだった。
「ところで友美、荒川君は中でどんな状況で修行をしているんだい?人類最強の相手を倒すというのがイケメンスイッチから出てくる条件というのも良くわからないが。」
「そうですね、なんでも死んだお爺ちゃまが中に呼ばれてきていて、お爺ちゃまの真荒神流を身につけて倒さないといけないらしいです。これはイケメンスイッチの世界のルールとして制定されてしまったので、倒すまで出てこれないそうです。」
「荒川武玄さんを倒す?それは2~3年でどうにか出来そうもない難問だな。」
「お爺様って、そんなに凄かったんですか?。」
「ああ、たしかにあの人は人類最強だったかもしれない。でたらめな強さの人だったよ。刀だけ持って飛び出して、戦闘ヘリを撃墜するような人だったからね。
あの人は強すぎるんでよく『負けてみてえなあ、俺と同じ世界を見れる奴は居ねえのかよ』が口癖だったんだ。そこでついたあだ名が『孤独求敗』だ」
「でたらめですね。でもVさんは私がJKになる前に帰ってくるって言ってました。ですからきっと1年くらいで出てきます。絶対に。」
「ふ、そうだな。荒川君ならあるいはそのくらいで武玄さんを倒すかもしれない。武玄さんよりも相手の弱点を見抜くのは上手いし、戦いの段取りも良い。勝てばいいというのであれば、奇策でどうにかするかもしれない。・・・そうだな荒川君ならできるかもな。」
私は、思わずニコリとして頷いた。
そうですともVさんはイロイロと手を打って、きっと出てきてくれる。
秋彦叔父様、分かってますねー。
そこで夏子さんが外を見て私を手招きしてきた。
「おかしいんですよお?なんか護衛の車が多いんです。」
秋彦叔父様と私も窓から外を見た。
確かに車が多い。20台は居る。
そこでまた夏子さんが前を指差します。
「あれえ、冬美ちゃんと芽衣ちゃんの車が凄く先にいっちゃってますよ。おかしいですねえ。」
隣の房代さんが、険しい顔で鞄から拳銃を出す。
秋彦叔父様も拳銃を出した。
次の瞬間
横の車の窓から対戦車砲並みの銃身が出ていた。
これはヤバイです!
すぐに夏子さんは私を抱きしめて身をかぶせてきた。
「夏子さん、私はいいから・・・・。」
ゾゴオン!
横の車の大きな銃身から私達の車に発砲された。
凄まじい衝撃音と空気のゆれを感じた。
私達の車の運転手は撃ち抜かれ、頭が吹き飛ぶ。
運転手を失った車はそのまま道路の横に突っ込み急停車した。
私達は、前の座席に叩きつけられる。
衝撃で夏子さんは気を失った。
私をかばって・・・
秋彦叔父様と房代さんはなんとか意識はあるようだ。
でも体が痛いようで、震えながら立ちあがろうとしています。
そして秋彦叔父様は銃を構えながら言いました。
「友美逃げろ!ココは大人がどうにかする。お前はイケメンスイッチを持って逃げるんだ。」
私は一瞬迷ってしまった。
もちろん、逃げるのが正しいのは分かっている。
でも、房代さんを置いていくのは辛い。
ズガガガガガ
私が一瞬迷ってると、車の窓ガラスがマシンガンで砕かれた。
どうやら、どのみち逃げるのは無理だったみたい。
外からは、まるで大きな金属が歩くような足音が沢山近づいてくる。
間違えない、アーマーノイドが近づいてきている。
私達は身を低くしているしか出来なかった。
すると車の外から声がした。
「みなさん、出てきてください。無駄な抵抗は早死にを招きますよ。」
私達はゆっくり立ち上がり、ドアを開けて車の外に出る。
そこで、大量のアーマーノイドと共にたっていたのは、中国支部長のマーだった。
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荒川武玄マメ知識:孤独求敗と呼ばれていたけど、じつは身内には時々負けている。




