その3 さーみんな、ついて来れるかな?
読者置き去りの暴走展開いきます。
第三者視点です。
V(荒川武威)は今、なんとも普通の石のお城という感じの部屋の中にいた。
だが天井が高い。
全てがデカイ。
まるで、小人になってしまったような錯覚を起す場所だった。
目の前に大きな扉がある。
「ここは・・・イケメンスイッチの中だよな?。」
Vは困惑しつつも、冷静に周りの情報から推理しようとしてみたが、どうにも判断が出来ないでいた。
あの瞬間、Vも自分がイケメンスイッチに吸い込まれたような気はした。
だが、このいかにもお城のような部屋の中にいるのが判断を難しくしている。
すると、扉の遠く奥から女性の声が響いてくる。
「荒川武威、こちらへ来る事を許す。少々わらわと話をせぬか。」
Vは躊躇したが、今はほかに選択肢がないのだと判断し、慎重に扉に近づく。
高さ80メートルはありそうな巨大な扉だが、Vが押すと意外にどうにか開くことが出来た。
恐る恐る中を覗き込むV。
すると、扉の奥は巨大な玉座があった。
そこに巨大な女性が、けだるそうに玉座に肘を着いて座ってるの見えた。
「許す、こちらへまいれ荒川武威。」
Vはコレは逃げられないと観念し、部屋に入った。
部屋に入るなりドアはズンと閉まる。
巨大な女性は、布を肩から巻いたまるでインドの女性のようなような服を着ており、頭や首や手には大きな宝石の飾りをしている。
色の白い日本人のようにも見えるが、どこかエキゾチックな青い目をしている。
そして、腕が何本もある。
1,2,3・・・・6本。
六本の腕。
その女性はその腕の一本で、けだるくて手招きして言う。
「許す、もっと近こうまいれ。」
Vは困ったが、逆らう場所ではないと判断し、おとなしく歩き出した。
突然の異空間だが、いまさまで散々非常識を見てきたVには、どうにか受け入れられる範囲だったらしく、おもったよりも落ち着いている。
歩いてみて驚いた。
周りのすべてが巨大だから、もっと近いと錯覚していたが、扉からその女性の前までは200メートルはあるほど遠かった。
近くまで歩いてきてみると、女性は最初の目測の予想よりもかなり巨大だ。
おそらくVを片手で握ることが出来るほどだ。
立ち上がったら50~80メートルはあるかもしれない。
Vが近づくと、Vがたっている床の5メートル四方くらいがフワりと浮かび上がる。
「うお!なんだこりゃ。」
床はVを乗せて垂直に浮き上がり、女性の顔くらいの高さまであがるととまった。
Vはどうして良いか分からない気持ちになったが、素早くこの非常識を見たままに受け入れるよう努力してみる。
現実を否定すると碌な事はない。
戦場で『すばやく最悪な状況を受け入れる』訓練をしてたお陰でなんとか現状についていけた。
巨大な女性はじっとVを見ていた。
本能が恐怖を叫ぶ。
しかし、このまま見つめ合っていても何も解決しないだろう。
思い切ってVは声を出してみた。
「あの・・・ココはどこでしょうか?急にこの部屋が現れてビックリしているもので。あと、あなたが何者かも教えてもらえるとうれしいのですが。」
すると女性はけだるくゆっくり頷くと、よく通る声で答えてくれた。
「うむ、ココはイケメンスイッチのなかである。わらわはこのスイッチに閉じ込められしラ・スア最強の女王シャンバラなり。」
女性は聞かれたことにだけ答えて、また黙り込む。
Vはさらに申し訳なさそうに聞いた。
「何度も質問してすいません、もしよければラ・スアの事やシャンバラさんについても教えてもらえるでしょうか?あとなんでイケメンスイッチに閉じ込められているかも。」
巨大な女性は、頬杖をしながら気だるくなずくと語りだした。
「よかろう、お主の問いに答えよう。ラ・スアとは5次元にある我が祖国の名なり。我らは戦うことに何の疑問も抱かず宇宙を征服し続けておった。おそらく5次元の最強種族である。されど我らの前に奇妙なやつが現れ、わらわをスイッチに封じたのだ。そして、わらわはイケメンスイッチとなった。おぬし達の時間の単位では71352年前の事なり。そして、わらわは地球に落とされしものなり。」
そこまで言って、またシャンバラは黙ってしまった。
しかしこの沈黙はVにはありがたかった。
少ない情報だが、Vを混乱させるには充分だったからだ。
Vはさらに何か聞こうと思ったが、けだるく自分を見つめるシャンバラの威圧感は凄まじく、うまく頭が回らない。
するとシャンバラはVに向けて言った。
「それだけか?もっと問うが良い。もしくはお主の話をせよ。」
Vは思わず『え?聞いていいの?怖くて聞いちゃいけないのかと思ったよ』
と考えたが、それならばと思うと、イロイロ質問が沸いてきた。
「あの、俺は帰りたくなったら外の世界に帰れるのでしょうか?。」
「わらわが許さぬ限り帰れぬ。もしも、わらわが帰らせる必要があると考えたら帰してもよかろう。わらわを楽しませたならば帰してやっても良いぞ。」
「そうですか・・・。では外の状況を知ることは出来るでしょうか?心配でしょうがないのですが・・・。」
「よかろう」
シャンバラはそう言うと、指をぱちんと鳴らした。
するとテレビのような物が空中に現れ、そこに外の状況が映りだされる。
テレビには、血みどろの自国党本部の廊下が映し出された。
その中で友美が泣きながらイケメンスイッチを抱きしめて、頭がおかしくなったのかと思うほどの絶叫を繰り返している。
『うわあああああああ!』
絶叫する友美。
Vの胸が痛む。
Vは今すぐにでも友美のもとに帰りたいと思う。
しかし、今はあえてその気持ちをグットこらえた。
ここで下手なことは出来ない。
どうやら、ここはこのシャンバラの世界だ。下手に逆らって殺されては元も子もない。
まずは、冷静にシャンバラに帰す気にさせることが先決だ。
そのためなら、思い切って一ヶ月くらいを使う覚悟をしようと考えた。
シャンバラの気だるい姿から判断して、この女性は気が長い上に時間の流れ方もユックリだ。
今日中に問題を片付けようとするのは、厳しいというのがVの判断だった。
立てこもりのゲリラ相手でも、万全の備えの相手に2~3日で片付けようとすれば失敗するものだ。
Vは、ほかのチームが立てこもり事件の解決を急ぎすぎたために、かえって数ヶ月にわたる長期化に悪化させたことによる後始末を何度か行ったことがある。
解決後の事後検証で、はじめから一ヶ月くらいかけて説得するつもりならば、結果的にもっと早く終わっただろうと結論が出るのは良くあることだ。
そんな経験があるVだからこその判断だ。
Vはシャンバラに聞いた。
「なぜ、俺をスイッチの中に呼んだのですか?。楽しむためだけですか?」
「うむ、お主の事ははじめから呼ぶ気でおったのだが、今思い出したので呼んだものなり。前に呼んだお主の祖父である荒川武玄に頼まれておったのを思い出してな。」
驚いたVはつい大きな声を出してしまった。
「え?じいちゃんもココに来たんですか?」
「うむ、アレは地球人最強だったやもしれぬ。」
「そうでしたか・・・・じいちゃんもココに・・・。あ、それでじいちゃんに何を頼まれたのですか?」
シャンバラはゆっくりとVを指差し言った。
「お主の祖父である荒川武玄が完成させた『真荒神流』をお主に託し、荒川武玄を超える武道家にするという頼みでなり。ゆえに運命を操り、おぬしを我のスイッチマスターにさせたのだ。そうであるな・・・それが叶ったら外に出してやらなくもないぞ。」
今のさりげないシャンバラに言葉にVは驚愕した。
つまりシャンバラはさらりと渋谷の出来事、友美との出会い、スイッチをめぐる戦いは偶然ではなかったと言ったのだ。
そしてもうひとつ恐ろしいことを言っている。
Vが、武玄以上の強さを得るまで帰れないというのは厳しい。
一ヶ月で帰る予定だったが、これでは10年かけても厳しいかもしれない。
そこではっとしてVはシャンバラに聞いた。
「そうだ教えてください。じいちゃんの最期について。俺はそれがとても気になっていたんです。シャンバラさんなら知ってるんではないでしょうか?」
するとシャンバラは意外な答えを返した。
「最期?荒川武玄なれば今も修行中である。」
「え?ええええええええええ!スイッチマスターは死なないと交代できないんじゃないんですか?!。」
「荒川武玄はスイッチの力に触れ、何かを悟ったらしくてのう。そして作られたのが真荒神流である。今も真荒神流の完成のために、わらわの力にて異界に飛ばしてやっておる。」
Vは本気でめまいを覚えた。
人間、本当に脳が拒絶するようなことが起きると、めまいを起こすものだと知った。
「じゃあ今はイケメンマスターは二人いるって事ですよね。一人だけじゃなくても大丈夫なんですか?イケメンマスターは二人でも可能なんですか?。ありえることなんですか?」
するとシャンバラは不思議そうな顔をして言う。
「なぜ一人と決め付ける?何人スイッチマスターにするかは、わらわの決め事なり。わらわの好きにするのが何の問題がある?。そもそも、わらわの力は強大で地球程度であれば一万個であれ百万個であれ一瞬で消し去る力がある。わらわのスイッチの力は地球人一人で扱いきれるものではない。気に入れば何人スイッチマスターでもかまわん。ただ地球人程度にこき使われるのがシャクであるゆえ一人しかマスターにしてこなかっただけである。最低一人はマスターにするように、このイケメンスイッチを作ったやつが決めてあるらしく、それには逆らえぬでな。しょうがなく一人だけマスターにしておった。」
「ま、まじっすか・・・。イケメンスイッチのルールって結構アバウトなんですね。しかし、じいちゃんは相変わらず家族を無視して無茶苦茶な人生を歩んでるな。いつか文句のひとつも言ってやりたいですね。」
シャンバラはそこで初めて少しだけ微笑み言う。
「ではココに呼んでやろうか?。『孤独無敗』の荒川武玄を。」
お読みくださり、ありがとうございます。
ここから内容が暴れますので、柔軟な気持ちで読んでいただけると嬉しいです。




