その51 ココで現れるとか惚れちゃいそう。
イケメン爆滅団め、まさかここまでイカれた連中だったとは。
俺たち3人は、どうにか6階にある結婚式場に逃げ込んだ。
途中、血に腕に抱きつかれたり手足を掴まれたが、芽衣のESPが思いのほか効果的に働いて吹き飛ばしてくれた。
結婚式場は、まがりなりにも神社と教会の合体場所だ。
少しは安全地帯であってくれればいいのだけれど。
友美と芽衣は恐怖で身を震わせて、チャペルの十字架に寄り添っている。
よく考えたら、途中で窓を突き破って外に逃げればよかったんだよな。失敗した。
だが、結婚式場に入ってしまったため窓はもうない。
俺も冷静ではなかったという事か。
今俺は、この状況でもっとも自分が効率的に動くための思考パターンを模索している。
人間は単純で納得のいく思考パターンを持つものが強い。
だからこういう時は、まず自分の中に思考パターンを持つことが大事だ。
複雑だったり、納得いかない思考パターンは迷いを生んで自滅を生む。
だから、強引でも単純な行動原理が必要だ。
そして数分考えて俺は決めた
「よし、もしも連中がこの中に入ってこれなければ俺はあいつらを幽霊としてあつかう。しかしもしも連中がこの中に軽々入ってきたら、幽霊じゃないものとして扱う。」
友美は少し震える声で俺に言った。
「幽霊じゃなかったら何なんですか?幽霊じゃないものとして扱うってどうやるんですか?。」
俺はおびえる友美と芽衣を見ていった。
「もしも幽霊ならば、専門家の到着をまてばいい。幽霊でなければウィルスや薬物、科学的なトリックの線で考える。科学的なものならば観察でそこそこ本質をみつけて対策が打てるはずだ。」
芽衣は半泣きで言う
「ぜったい幽霊だよ、あれがオカルトじゃなかったら何なんなの・・・。」
まあ俺だってオカルトにしか見えなかった。
だが、今までだって殺したやつに恨まれていても不思議はない事態は沢山ある。
でも今までまったく幽霊に襲われたことはない。
今回に限って襲われるというのは理屈が合わないと思うのだ。
結婚式場に逃げ込んだのは、幽霊に効きそうというのもあるが、一番の理由はここに死体がない事を知っていたからだ。
だから結婚式場に入るとき、俺は二人に靴を脱がせた。
もしも死体がなんらかのトリックの元だとしたら血を持ち込みたくなかったからだ。
そして、ここに逃げ込んで10分くらいたつが、まったく敵の表れる気配はない。
これは教会だからか?血を持ち込まなかったからか?・・・・まだ判断はつかない。
あ、でもまてよ・・・
俺はとんでもない勘違いをしていたかもしれない
「芽衣、さっき影につかまれたときESPで助けてくれたよな。そのとき実体を捻じ曲げる感触はしたか?。」
すると、少し考えて芽衣は答える。
「そういえば少ししたかな。でもネンドを捻じ曲げるような淡い感触だったよ。」
そこで友美が恐る恐る聞いてくる。
「Vさん、幽霊ではないかもしれないんですか?。」
おれは自信を持って答えた。
「あれは幽霊じゃないな。あれは間違いなく生きている人間の仕業だ。おそらくあの血には細工がある。それはやつらは鬼神の法と名づけたのだろう。これは死んだ人間を利用するものであって、幽霊ではないと考える。」
友美はおびえた目でさらに聞く。
「だから、なんでそう言いきれるんですか?。」
俺だって半分は勘だが、友美と芽衣を安心させるために、わざと自信満々のような振りをして説明してみた。
「幽霊として戦えるなら連中が死んでからすぐに襲ってこなかったのは不自然だ。すぐ襲ってくるほうが無敵の部隊になれただろうに。・・・それができなかったのは血が巻き散らかされた場所でしか有効ではないから、俺たちが血の海の真ん中に行くのを待って居たんだとおもう。さしずめ血肉を利用するのが得意なエスパーの仕業かもしれない。それに夏子の電話の後すぐに、夏子たちと一緒に行動していた房代さんから電話がかかってきたのも気になる。トリックに気づいて教えてくれようとしたんじゃないかな」
友美はすこしキツイ表情して聞き返してきた。
「房代さんから電話?もしかしてあの『着信アリ』の着信音は房代さんですか?」
「あ、うんそうだよ。」
友美は急に立ち上がると、ジロジロ俺を見ながら俺の周りを歩き始めた。
「Vさん、房代さんとはよく電話してるんですか?電話しーてーるーんーでーすーかー?。」
この友美怖いよ。
俺はオカルトよりも友美が怖い。
俺が友美から目をそらせて冷や汗をかいていると、芽衣はいつもの困った顔で友美に突っ込みを入れてくれた。
「友美っち、今は友美っちのほうがホラーっぽいよ。」
なんていうかさ、
さっきまで怯えていたくせに、嫉妬っていうものは、そこまですべてを吹き飛ばすほどの強い感情なの?
俺は友美と目を合わせないように説明を続けた。
「それにもしもESPが相手なら、同じようにESPの能力を弾丸に変える気念砲は大きな武器になる。点ではなく面で狙うような撃ち方をすればうまく吹き飛ばせるはずだ。それで窓まで逃げたら如意棒をロープのようにして外に飛び出せば余裕で逃げられる。」
そこまで話をしたところで老人の声が聞こえた。
「なんと、今度のイケメンマスターはなかなか優秀じゃ。だが理屈が分かったところで逃げ切れるとは思わんことだな。」
俺たちは声が聞こえた部屋のドアのほうを見る。
すると、ドアがギーと開き顔中に金属のつぎはぎをした醜い老人が現れた。
おれは一目みてその男を思い出す。
「お前は・・・渋谷でイケメンスイッチを俺たちから奪ったジジイ。」
老人は、醜い顔で笑いながらさらに近づいてきた。
「そうだ、あのときのジジイよ。そして私がイケメン爆滅団の首領、矢島健次だ。お前たちは最初に首領と戦ったのにトドメを刺し損ねたせいで苦戦を強いられていたのよ。とんだ笑い話ではないか。」
俺は渋谷での戦いを思い出していた。
この老人は、友美が石で頭をつぶして殺したはずだった。
しかし、確かに俺は死体を直視せず、死亡を確認していなかった。
俺は、この爺さんを殺そうとした友美を非難したが、今はあのときの俺に言ってやりたい。
友美に『いいぞもっとやれ』と応援しておけと。
俺は、自分の甘さを自分で笑い矢島に言った。
「でもあんたがエスパーだったのは意外だったよ。俺と戦ったときはまったく非力だったからな。」
すると矢島は頷き答える。
「そうよ、あの時はまだ非力なジジイだった。死に掛けて蘇生した時に新たな力が目覚めたのじゃよ。自分の血液を動かすという能力にな。団員には毎日わしの血液を混ぜた食事を与えた。いまでは自分の血液と同じように動かせる。これだけの血液にお前達で勝てるかな?」
矢島の話を聞くと、友美は気念砲をランチャタイプに変形させて構えた。
「あなたが死ねば、問題ありません。」
おれは咄嗟に友美を止めようとした。
「やめろ友美・・・」
しかし友美は発射してしまった。
バヒュン!
ランチャータイプの気念砲のエネルギー弾を受けた矢島は爆発した。
ドガーン。
矢島の体は結婚式場の中に飛び散った。
飛び散った、血液が呼び水となり部屋の外の血液が流れ込んでくる。
そして、流れ込んできた血液がまた矢島の姿になった。
「馬鹿め、本体でノコノコ目の前に現れるわけがなかろう。血を部屋の中に呼び込んでくれてありがとうよ。」
どんどん血液が流れ込んできて、次々に部屋の中で醜い矢島の姿になる。
部屋の中に、どんどん矢島が増えてくる。
おれは叫ぶ
「芽衣!ESPで押し返せるか?。」
すぐに芽衣は両手を矢島に向けて突き出す。
少し押し返せた。
しかし、すぐに押し返せなくなる。
芽衣が力負けしているのだろう。
また数センチずつ程度ではあるが少しずつ、矢島はこちらに前進をはじめる。
俺はよい方法は無いかを考えながら、ジリジリと部屋の一番奥にある十字架に向かってさがるしかできなかった。
万事休すか。
イケメンスイッチのキャンセルを使っても「血液」という物理要素があるので、通常のESPのように無効化できる保証はない。
必死で次の一手を考える。
すると
一瞬目を疑った
天井を這うように誰かが結婚式場に入ってきたのだ。
忍者か?と思うほどの見事な天井移動である。
この忍者のような人も、床の血が危険だと気づき、天井を移動してきたのだろう。
だとすれば味方だ。
敵なら血を恐れる理由はないのだから。
芽衣はそっちもストップさせようとしたが、俺は言う。
「あの天井の人は通せ!。」
天井を進んできた人は、天井にへばりついていた鍵爪のようなものを仕舞うと、音もなく部屋の中に落ちてきれいに着地した。
身につけているのは、俺が房代さんに預けた予備の最新装備だ。
みるとチャンの娘と紹介されたリンダだった。
「房代さんに聞いてますよ、私の正体に気づいてこの装備をくれたんですよね。房代さんから連絡がつかないから心配だって電話きたから見に来たけど、助けに来て正解だったみたいですね。」
そう言うなり、顔に手をかけて自分の顔をはいだ。
特殊メイクだった。
リンダがメイクをはがすと、ウェーブのかかった髪の毛と、切れ長の目が特徴的な少女の顔が出てきた。
その顔を見て友美はつぶやく。
「お姉ちゃま・・・。」
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次回、第1部完結です。




