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その33 エアブレイカー

ーーーーーーーーーーーーーーー

闇の中、33人の少女達と、2人の少年が廃屋の中に集まっていた。

だが、少年の1人は宙に浮いて苦しんでいる。


その宙に浮いている少年を囲むように、数メートル離れたところから33人の少女達が手を突き出していた。

サイコキネシス

そうよばれる能力で、一人の若者を中に浮かせて自由を奪っているのだ。


その輪の中に、爬虫類のような顔立ちをしたもう一人の少年が近づいてくる。

年は17~18歳くらい。

歩いてきた少年に対して、宙に浮かされている少年は叫んだ。

「長井臣人!お前は意見が違うというだけで、仲間を粛清するのか!。正気じゃないぞ!。」


長井臣人と呼ばれた少年は、宙で叫ぶ少年の言葉など耳に入らないかのように手の掌を天に掲げる。

すると、その手の掌の中に白くにごった空気が集まった。


それを見て、宙に浮いた若者は絶叫する。

「やめろ、俺が悪かった、もう逆らわないから・・・・やめてくれええ!」


しかし長井臣人はやめない。

手の掌の上の球体はニューと伸び槍状になる。

そこで長井臣人は口を開いた。

「ひひひ、他の奴への見せしめだ、やめれませんね。裏切り者は死ね。」

そういうと、宙に作った白い槍を浮いている少年に投げつける。


「ぎゃああああああ」


白い槍は、宙に浮いた少年の肉をえぐるように胸を貫通すると、そのまま背後のコンクリートの壁まで貫通して行った。


宙に浮いた若者はガクリと息絶える。

それを見て長井臣人が合図すると、少女達が手を下ろした。

同時に、死んだ少年がどさりと床に落ちた。


長井臣人は、若者の死を確認した後、背後の少女に問う。


「おい、副長。あと集まっていないのは誰だ。」

副長と呼ばれた少女は緊張した声で答える。

「は、はい。あとはAクラスエスパーの『イの4号』だけです。ですが彼女は先日捕獲されたという目撃情報がありますので生きていないかと。」


長井臣人はヒヒヒと笑う。

「そうだった、俺が退避するために囮にしたんだったね。ではこれで全員だな。よし作戦会議を始めよう。イケメンスイッチの守護者、天道友美を殺すためのな。」

そう言いながら、そばにあったソファーにどかりとすわり、怪しく微笑んだ。


ーーーーーーーーー


さて、俺は金子や房代さんに頼んで調べてもらった事で、それなりに今後の方向性は決まった。

あとは、それで良いと言う確証が欲しいところだな。

その確証がそろえば、俺はこの戦いを通して友美と本当に仲間になれると思っている。


そのために俺達は、友美と共に埼玉にある秘密教団『ペルシアの華』の本部に来ていた。

今回の本部訪問に関して金子達は反対した。

そしてイケメンスイッチを使って国持兵団研究所を一気に殲滅するように俺に提案をしてきた。


しかし俺はノーと言ったのさ。

「友美と俺が一緒に活動するためにも、現教主と方向性の話し合いは必要な事だ。それに爆滅団と戦うにしてもペルシアの華と歩調を合わせる必要になる日は必ず来る。今なら芽衣のこともあるので一石二鳥で良い機会だと思う。それは理由にはならないかな?。」

そういって、金子達を納得させたのだ。


今は本部の客室。

友美も金子たちも、随分居心地が悪そうだ。

この施設の人たちを一方的に敵視している感じがする。

その空気の呑まれて、芽衣も緊張してきてるようだ。

ピリピリした雰囲気だ。


この重い空気、嫌だな・・・


俺と友美と芽衣が三人でしばらく待つと、眼鏡をかけたスラリとした女性が俺たちを呼びに来た。

年のころは25~27才くらいだろうか。髪を後ろで結んでシンプルな服装の女性だ。

しゃれっ気が無いという表現がしっくり来るかもしれない。

その表情は、どこか浮世離れした笑顔である。


その女性を見た友美は気まずそうに頭を下げる。

しかしその女性は、気まずそうな友美の空気を無視するように近づいてきて、手をとった。

「友美ちゃーん、元気にしてるみたいで安心しましたよー。本当に心配していたのですからねー。来てくれてお姉さん安心しちゃったぞ。」

間の抜けた声だった。


重い空気が一瞬で消え去った。

すげえ、

この女性、友美の放つ『イヤイヤ空気』をまったく気にしないで突っ込んで来たぞ。

あれだな、

この人はどんな重い空気の中でもマイペースに活動できるタイプだ。

空気を読まない特殊能力、「エアブレイカー」の持ち主に違いない。


諦めたような表情になった友美は、力なく笑うと女性に俺を紹介してくれた。

「夏子さん、このひとが新しいイケメンマスターの荒川武威さんです。叔父さまとお話があるという事です。あ、あとこっちの女の子が電話で説明した芽衣ちゃんです。」

芽衣はあたふたと頭を下げる。


友美は続けて俺に夏子を紹介しようとしたが、俺が先に口を開いた。

「いや、俺への紹介は不要だ。はじめまして夏子さん。友美から聞いてるよ、現教主の娘さんの天道夏子さんだね。俺のことはVと呼んでくれ。」


俺の言葉に、夏子は気の抜けた笑顔で俺に深々と頭を下げる。

「まあ、なんてイケメンマスターらしいイケメンマスターさんなんでしょう。こちらこそ初めまして。このたびはご足労いただき、まことにありがとうございました。教主室にご案内いたします。こちらへどうぞ。」


俺たち三人は、夏子に案内されて教主室に向かった。


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