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その32 いやいや友美ちゃん

房代さんから、いくつか重要な話を聞けた。

その話と、金子の資料とあわせると、俺の中で意外な仮説が出来た。

あとはこの仮説を証明するだけだ。

そうすれば、おそらく最小の被害で話が解決するはずだ。


しかし

どうも俺のやり方に、金子は不安がっているのが伝わってくる。

先代のイケメンマスターならば、悪い奴はイケメンスイッチで即粉々にするのに、俺はいつまで経っても調べるばかりで動こうとしない。

だが、もうしばらく我慢して貰わないといけない。

俺は行き当たりばったりが嫌いだからな。


房代さんとの電話を終えた俺が部屋に戻ると、友美は俺の前に走りよってくるなり

「何を話したんですか?一時間半も話をするのって話しすぎじゃないですか?。」

と詰め寄ってきた。

その言葉に困っている俺の周りを、グルグル回るようにガンつけてくる。

怖い、この娘、怖いです。

なんか、浮気を問いただされている気分。


俺は目を泳がせながら話を誤魔化すために、聞かれたことを無視して話し始める。

「そ、そういえば友美ちゃんは、随分と芽衣と仲良くなったみたいだけど、俺にとっては意外だったな。友美ちゃんは全ての人を遠ざけているのかと思ってたよ。」

そう言いながら、俺は芽衣の隣に座った。


友美は俺の隣に座ると、落ち着いた表情になり俺を見上げて言った。

「Vさんのおかげです。私はVさんと会うまでは誰も信じちゃいけないと思っていたんです。でもVさんは私を大事にしてくれて、とっても嬉しかったです。Vさんに大事にしてもらうたびに、私は一人ではない事を感じられました。タブンそのおかげで誰かを助けようとか思えるようになったんだと思います。」


俺は、かるく友美の頭をなでる。

「まったく、可愛いこと言ってくれるじゃないか。そんな事をいわれちゃうと、これから辛いことをお願いしにくくなるな。」

友美は軽く首をかしげると

「芽衣を助けるために私がやる事ですよね。何をすればいいんですか?。」


俺は、一呼吸おいた。

「半年前に友美は、先代イケメンマスターの弟の秋彦さんと教主の座を巡って権力争いをしたんだってね。」

そういうと、友美の顔が急に険しくなる

「はい、私が教主になるように推してくれた人達を次々に失脚させて、自分が教主になったんです。嫌な人です。」

俺は、軽く頷く。


「そうか、でもな・・・今回は天道秋彦さんに頭を下げてお願いをしないといけないことがあるんだ。会う段取りをつけて一緒に頭下げてくれないかい?。」


友美は目を見開くと、次に凄い剣幕で怒り出した。

「嫌ですよ、あの人とは会いたくありません。お父様にもいつも文句ばっかり言っていたし、私の協力者を失脚させる敵です。それに会うとお父様やお母様の話をしたり、お姉ちゃまの話もするんです。いや!聞きたくないんです!。」


思ったよりも拒絶が強い。

だが俺は友美の頭をなでながら諭した。

「でもな、どうしても必要なんだ。金子の資料を見る限り最も効果的に国持兵団研究所を抑えられるのは、おそらく天道秋彦さんだ。一緒に頼みに行こう。」


でも友美は両手で耳を押さえて拒絶し始めた。

「いやいやいや。あの人は嫌です。」

友美の目には、うっすら涙が溜まっている。


房代さんの話では、天道秋彦は病院の友美に「兄さんは死んでもしょうがなかったんだ。あきらめろ」と言って、友美に嫌われているという話しだった。

しかし想像以上の嫌いっぷりだ。

おそらく友美自身も気づいていないが、秋彦が父母の死の象徴のように記憶に残ってしまっているのだろう。


トラウマというのは、こういう風に関係ないものを巻き込んで「代替」に感情を向けることで、本当の傷から自分を守る事がある。

正直、天道秋彦は友美にとって「傷の代替」にされてしまってるのだろう。俺は困った。


だがそこで、芽衣が話しに割り込んできた。

「もう良いよ、友美っちが苦しむところは見たくないよ。私は友美っちを騙していたの。そんな私のために友美っちが苦しんで欲しくないよ!私に友達の価値はないんだよ!。」


友美は驚いて、芽衣を見る。

「そんな事無いよ。ごめんね、心配させちゃって。大丈夫、私頑張るから。芽衣は心配しないで。」


だが芽衣は首を振り

「ごめんなさい、本当は私は研究所に殺処分されそうだったんじゃないの。研究所に反乱をしてたの。でも今は危ないから『ペルシアの華』を利用して守ってもらおうとしてたの。」

そういうと、芽衣はぽろぽろ泣き出した。


友美は複雑な表情をして、芽衣を見つめてる。

俺は、そんな芽衣に言った。

「そんな事はわかってる。言ったろ、助かりたい人間が嘘をつくのは予想済みだって。

長井臣人率いる反乱者エスパーが敵を求めて外に出たのを、研究所が止めようとしているんだろ。君達は本当はイケメンマスターを倒すために育てられたのに、イケメンマスターが死んでしまったので、存在意義を失って反乱したってところなんじゃないのかい。」


俺の言葉に友美と芽衣は驚いた顔でこちらを見る。

そして芽衣は

「し、知っていたんですか。どうして・・・・。」

俺は芽衣の頭をなでる。

「そのうち教えてあげるよ。」

そういって、微笑んだ。


おかっぱ少女の頭撫でるの、ちょっと楽しい。

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