その28 イケメンキャンセラー
ホテルまで来てから、助けたおかっぱの少女を確認してみた。
そして驚いた、生きていたのだ。
しかも、骨が折れてる様子も無い。
友美は俺たちを部屋の外に出す。
部屋の外で金子は俺の横で気楽にしている
「友美様は医療も詳しいから、まあ任せておいて良いでしょうな。」
なるほど、じゃあ大人しく待つか。
関係ないけど、俺はそこで妙な事に気づいた。
「あれ、そういえば金子は時々、妙に東京弁がうまくなるね。」
すると金子はさらりと 言った。
「東京産まれの東京育ちですから。」
「え?関西圏じゃないの?。」
「そですよ。それで友美様には『関西弁みたいな話し方』いうて、めっちゃ嫌われてしましましたけどな。」
俺は少し頭に?がポンポン現れてる状態で聞き返した。
「な、なんで関西風にしゃべるの?。」
すると金子は照れたような微笑を返してくる。
「キャラ作りですわ。まえに親衛隊に居たときに、先代のイケメンマスターに覚えてもらいたくて、キャラ作ったんですよ。偽関西弁とか恥ずかしくって、記憶に残りますやろ。」
なんか、イケメンでも人間関係で頑張らないといけなかった金子に、すこし親近感を覚えた。
「金子は優秀なんだから、そんな心配要らないとおもうぞ。」
すると金子は嬉しそうに微笑んだ。
「Vさんに言われると、めっちゃ嬉しいですわ。おおきに。」
ガンバ、金子。
「キャア!」
俺とか金子の会話を遮るように、部屋の中から友美の悲鳴が聞こえた。
俺は急いでドアを空けて飛び込む。
すると、信じられない光景があった。
友美が、喉を押さえて宙に浮いているのだ。
友美に向かって、おかっぱの少女は手を伸ばしている。
最近、ありえないことに連続に出会った俺は、この状況を柔軟にうけいれた。
超能力か?
そう考えれば、遊園地での空飛ぶ人間も説明が付く。
まずは超能力の妨害だ。
俺は咄嗟に、アキバで買ったレーザーポインターを出して、少女の目に当てた。
「うああああ!」
少女が慌てて目を押さえると、友美はドサリと床に落ちる。
背後で金子達が銃を抜いたのが分かった。
俺は悪いと思いつつ、まだ苦しむ友美に言った。
「友美ちゃん、スイッチ白面だ!」
友美は苦しくて混乱していただろうに、ぱっとスイッチを出して1秒ほどで白面を出して俺に差し出した。
混乱していても素早いな。友美さん、マジぱねーっす。
イケメンスイッチから「キャンセル」とかかれたスイッチが出てきた。
俺はそれを受け取り、すぐにスイッチを入れる。
「発動!イケメンキャンセラー!」
カチン (台詞は気分で叫んだだけ意味は無い。)
すると、俺とその場に居たイケメン護衛たちに、うっすら光の膜が出来る。
友美には膜は出来ない。
俺は友美を自分の後ろに隠す。
するとおかっぱの少女は、獣のような咆哮をあげながら俺に両手を突き出した。
「うわああああああ」
しかし、何も起きない。
少女は、急いでもう一度俺に両手を突き出す。
しかし、やはり何も起きない。
思ったとおりだ。
友美が宙に浮いているとき、咄嗟に遊園地で人を飛ばしたのがこの娘だと思った。
そして、この娘の力はイケメンスイッチ並みに神秘的で強力。
我ながら、とんでもない強引な理屈の賭けだったが「同種の力」と判断したのだ。
なれば、スイッチの力を無効化する白面の「キャンセル」のスイッチが有効ではと思ったのだ。
スイッチマスター自身にもキャンセルがかかるのは、すでに実験したときに知っていたので、今回は自分もスイッチの対象にしてみた。
結果、見事に予想通りだった。
すげえ、俺の勘すげえ。
俺最高!俺万歳!俺抱いて!
事前の実験でキャンセルの効果は3分と分かっている。
時間は無駄に出来ない。
俺は、怯えて獣のような咆哮を上げる少女に優しく語りかけた。
「いま君が攻撃したこの女の子が君を助けようと言ったんだよ。いきなり攻撃はないんじゃないのか?。君はいったい何者なんだい?。」
優しく語りかけたのは、急ぐからこそ焦らないためだ。
焦った気配は、相手も焦らせる。
それは結果的に、友好的な姿勢を引き出すのに時間をかけてしまうかもしれない。
だが2分30秒たっても敵対姿勢なら、金子達に任せないといけないとも思っていた。
しかし、少女は俺の言葉で手当てされている自分の体に気づいた。
少女は、急におとなしい目になり
「あ、あ・・・もしかしてあなた達は助けてくれただけ?その・・・研究所とか敵の人ではないの?。」
よく見ると少女の腕に包帯が解けかけている。
おそらく友美がその包帯を巻いているときに、目が覚めて友美に攻撃を仕掛けたのだろう。
俺は、少女の腕を軽く持ち上げると、その包帯をそっと巻きなおしながら言った。
「そう、助けたのはウチの友美ちゃんさ、俺たちじゃない。研究所というのも知らない。わかったらおとなしくしててね。」
少女の包帯を巻き終わると。彼女の肩に手をかけてベッドに寝かせ、布団をかけてあげた。
どうやら、もう大丈夫そうだ。
そう思ったあたりで、キャンセルの光の膜が消えた。
俺は、友美にイケメンスイッチを渡して言う
「白面で。」
友美は素早く白面をそろえて、再び俺にスイッチを渡した。
今すぐ使わないが、保険のためにスイッチだけは出しておかないとね。
友美は俺の後ろから、ひょこりと顔出すと少女に声をかけた
「怒ってる?」
すると少女は、またがばりと起きて、手をパタパタさせながら
「怒ってないよ。た、助けてくれたのにごめんなさい。私、ずっと追われていて訳分からなくなっていて、本当にごめんなさい。」
それを聞くと友美はぱっと俺の前に飛び出した。
「いいよ、敵に襲われている最中に気を失ったら、起きた直後の人が敵に見えるのはしょうがないよ。」
そういって、ベッドに座った。
「私は天道友美。あなたは?。」
おかっぱの少女は、複雑な表情をした後
「わたしは歌田芽衣。友美ちゃん、助けてくれてありがとう。おかげで殺されずにすんだ。」
友美はそこで、さらに
「殺されるって・・・その研究所の人に?なんで?どうして?。」
そう聞いたところで、俺は友美を制した。
「友美ちゃん、今日はもう良いだろ。明日にしな。」
「あ、うん、そうですね。」
そして俺は友美をつれて、部屋に戻った。




