その19 必殺・自爆ダイナミック!
あのキモオタ12人衆め、とうとうここまでやってきたか!
俺は走ってバスを追った。
いま俺が装備している武器は、拳銃1丁と投げナイフ。
マイクロバスは俺を見つけたみたいで、急停車し12人が飛び出してきた。
12人はすぐに槍を構える。
だが今回の俺は勝算を持っているぞ。
前回の戦いで奴らの装備は分かった。
初見でケリをつけなかったことを後悔させてやるさ。
確かの奴らのポンチョの防御力は高い。
だがおそらくポンチョの腕を出す隙間から、刀や銃で攻撃すれば軽く倒せるはずだ。
前回の戦いで奴らは、素晴らしい連携こそ見せたが銃器を使わない事は分かっている。
十分勝算はあるはずだ。
12人は走ってきて俺を囲むと、リーダらしき声が甲高い男『師匠LOVE』が叫んだ。
「イケメンマスターよ、我々にイケメンスイッチを渡すデござるよ。我ら『12人の妹好き』の連携技の恐ろしさはわかっているでござろう!」
俺は意地悪に返す
「もう、イケメンスイッチは怖くないのか?」
すると、『師匠LOVE』は一瞬声を詰まらせると
「う、うるさいい、お前は我らよりもイケメンだという・・・・そういう結論に達したでござるよ。だからお前のスイッチなど恐れないでござる。」
どうやら現実を受け入れたようだ。
しかし、それは昨夜受け入れとくべきだったな。
今お前は俺とおしゃべりをしてしまった。
おしゃべりの最中が一番確実に敵を殺せるタイミングだ。
だから悪いな。
『師匠LOVE』がしゃべり終わるか終わらないかのタイミングで、俺は素早く前転の要領で一番近くに居た奴の横に飛び出す。
太っていて咄嗟に反応できなさそうなヤツだ。
瞬間で銃をを抜き、そいつの脇の下へ・・・ちょうどポンチョと腕の隙間を滑らせるよう銃を差込み、0距離で撃った。
バン!
「ぶひぎゃああ」
撃たれた奴は、転げるように倒れあっけなく絶命した。
思ったとおり、隙間を狙えばいける。
『師匠LOVE』は絶叫した。
「まる豚氏が!!!!、よ、よくもイケメンマスター!許さんでござるぞ!!!!」
しかし俺は落ち着いていた。
前の戦いで、こいつらは一人ではそれほど強くない事はわかっている。
連携だけが怖い奴らだ。
だから一人ずつ確実に減らしていけば良い。
数が減るほど、確実に弱くなるのだから。
おれは、さらに別の奴の脇の下に潜り込むべく前転をしようとした。
そのときだった・・・
俺の戦いを見つけた房代さんが友美とともに走ってきて叫んだ
「イケメンマスター!そいつらを倒してイケメンスイッチを守ってください!。わたしのイケメンの彼氏を守るためにも!」
え?
おれはその言葉が耳に入った瞬間、集中力が切れた。
『彼氏??イケメンの彼氏???』
その気の迷いは、俺にとって致命的だった。
前転した瞬間、うかつにも手に持った銃を落としてしまったのだ。
「し、しまった!」
急いで銃を拾おうとして振り返った瞬間、敵の槍を右肩口に食らってしまう。
「ぐあああ!」
次の瞬間、流れるように右わき腹と、左モモにも槍が刺さる。
顔にも一本襲ってきたが、それだけは咄嗟に左腕で叩き払った。
くそ、敵ながら良い連携だ。
たまらず俺は膝を突く。
すぐに11本の槍は俺を囲む。
万事休すか。
すると、何お思ったのか攻撃の手を止めて、『師匠LOVE』は俺に近づいてくるといった。
「いひひひ、おぬしはあの熟女にほれていたでござるか?イケメンの彼氏さえいなければ、おぬしにもチャンスがあったかもしれないでござるのに。そうでござる、我らにイケメンスイッチを渡してみてはいかがかな。そのイケメンの彼氏を我らが爆破してヤルでござるよ。」
う、、、このささやきの魔力は、モテない人生を歩んだブサメンにしかわからない。
もちろん、この口車に乗るような俺ではない。だが一瞬、おれもそれを考えた・・・。いやウソウソ、考えてないですよ。
すると、いきなり
なんと友美が俺の横まで走ってきたのだ。
「な、なにやってるんだ、来るな!」
叫ぶ俺を無視して友美は、『12人の妹好き』の槍を押しのけるように、俺と奴らの槍の間に割り込んできた。
おいおい、強引だな。
俺も驚いたが、敵はもっと驚いたようで、素直に一歩さがって友美のためにスペースを作る。
ま、普通は女の子が乱入してきたら混乱して引いちゃうよな、とくにロリコンどもにとって美少女の乱入ほど混乱する事はあるまい。
あ、俺は勝手にこいつらはロリコンだと決め付けていたけど、ちがうかな?ま、いいか。
奴らは口々に「美少女ですが何か?」「近距離美少女でござる」「わお萌え!」とか言っている。
やっぱ思ったとおり、ロリコンでバカだな。
すると俺と敵の間で仁王立ちした友美は俺に振り返るなり、俺に抱きついてきて叫んだ。
「迷わないでください。私にとってはVさんが世界一のイケメンです。私が一生そばにいますから!。」
ち、なんだこの友美の唐突な行動は?
俺が房代さんイケメン彼氏を殺すとかいう言葉に、よからぬ気の迷いでも起こしたと思ったのか?
馬鹿にするな、少ししか思って無いって言うの。
しかしこれはヤバイ、友美を守るハンデ戦になってしまった。
だが、諦めかけた俺に戦う理由ができた。その意味では助けられたと言えるかも知れない。
俺は激痛の中、猛スピードで頭を回転させる。
すると、連中の顔色が変わってきているのに気づいた。
「イケメンマスター、美少女のハグとは許せん」
「この妹系美少女は穢れたデござる」
「美少女の胸が顔に当たってるぞ!うらやましい!」
とか言い出した。
こいつら、どこまで馬鹿なんだ・・・・
だが、馬鹿なりに危険だ。連中が構える槍に動き出す気配が出てきた。
ヤバイ、時間を稼がなくては。
俺は咄嗟に叫んだ
「わかった、イケメンスイッチは渡す。だが・・・だれに渡せばいいんだ?もちろんお前達の中で一番のイケメンに渡すほうがいいだろう?。」
俺たちを刺そうとしたブサメン達は、その瞬間動きを止めた。
そして微妙に気まずい雰囲気になっている。
この時間はチャンス!
俺は一か八かの賭けに出た。
「友美、オレンジ面だ!」
俺に抱きついていた友美は、一瞬でイケメンスイッチを出し、2秒ほどでオレンジ面を作った。
出てきたスイッチには「このあたり」と書いてある。
なにこのアバウトな感じのスイッチ・・・
だがこれで、タブンこの空き地一体が範囲のはず、タブン、タブン!
俺は、スイッチを受け取ると、連中の中で一番不細工そうな『師匠LOVE』に猛烈な縦回転をさせてスイッチを投げた。
「ほらよ、うけとりな」
もちろん『師匠LOVE』氏は咄嗟にスイッチに向けて手を伸ばす。
それは俺にとって作戦通りだった。
猛回転で回るスイッチを受け取ったらどうなるか?。
当然間違えて、スイッチに手が当たり意図せずしてスイッチを入れてしまう。
俺は心の中で叫んだ。
『喰らえ!必殺・自爆ダイナミック!(技の命名・俺)』
奴がスイッチを受け取る瞬間、友美の頭を抱えて地に伏せる。
一瞬遅れて空気に大爆発の振動が鳴り響いた。
空気の感じからすると、やつらの殆どが爆発したようだ。
俺の周りに血や肉片が叩き付けられるように振ってくるが、俺には全くぶつかってこない。
ほんと不思議なスイッチだ。
気持ち悪くなるような血と肉の匂いの中、敵の状況を確認すべく俺はゆっくり顔を上げた。
すると、奴らが立っていた場所は爆撃でも受けたように地面が軽くえぐれている。
一人だけその中で立っていた。
といっても上半身は吹き飛んでいて下半身だけで立っていたのだが。
10人の爆発に巻き込まれて上半身が吹き飛んだ『師匠LOVE』の死体だろう。
下半身だけになった『師匠LOVE』の死体は、俺が見ている前でバタリと地面に倒れた。
・・・・・・・・・・・・・
戦いには勝ったが、敵にこの場所も見つかったのなら移動しないといけない。
そこで俺と友美は思い切って秋葉原に行く事にした。
そこで新しい道具とかを揃えたかったためだ。
そして今回はバスや電車で移動する事にする。
この「12人の妹好き」は恐らくタクシーからの情報で追ってきたのではないかと思うからだ。
今思えばタクシーの運転手も不細工なおっさんだった。
もうタクシーは信用できない。
その日のうちの準備をして、夕方の最後のバスに乗り込むことにした。
出発直前、房代さんは彼氏を連れてきてくれた。
確かにイケメンだった・・・・
宝塚の男役のような中性的なイケメンで、すらっとしたイケメンだった。
当然だよな、こんな美人にはイケメンの彼氏だよな。
しかも、房代さんのイケメンの彼氏は俺の重たい荷物をバス停まで持ってくれた。
すげえ、細身に見えるのにたくましいな。
細マッチョってやつか?
何この人?
もうこの人はイケメン界のパーフェクト超人だな。
もう抱いて欲しいわ。
笑顔で見送ってくれる二人に、空元気で別れの挨拶をして、ローカルバスに乗る。
バスが動き出すと、二人が見えなくなるまで手を振った。
そして・・・・そこで一瞬にして元気を失う。
「はあ、そうだよな、ブサメンはこういうバッドエンドだよな・・・。」
がっかりしていると、友美はまるで可哀想な人を見る目で俺を見ながら、ぽんと肩を叩く。
「気を落とさないでください。バレンタインには私が本命チョコ上げますから。」
「今三月だよ」
「はい、来年のバレンタインには本命チョコ上げますから、元気出してください。Vさんには私がいるじゃん。」
おれは、胡散臭いものを見る目でジト見してしまった。
え?この娘、来年も俺と一緒にいるのは確定事項なの?
「友美ちゃん、まさか本気で俺と一生いる気なの?。」
すると友美はムキーと怒り出し
「あたりまえじゃないですか!Vさんはイケメンマスターになった以上、私無しでは生き残れませんよ!一生私を頼って一緒に居ないとダメなんです!」
そいうなり、プイっと向こうを向いてしまった。
なんか美少女ってお得だよな。
我がまま言ったり、怒ったりしても男の気が惹けるんだからさ。
そう思っても、うまく言えないが、まあ可愛い奴だとは思う俺であった。




