その17 不細工の王
小鳥の声が聞こえてくるなか、朝の日差しのまぶしさで俺は目を覚ました。
まずは天井が見え、つぎに布団の感触を感じる。
すこしボーっとしてから、夜のバス停で意識を失った事を思い出す。
そしてうっすら した意識の中で呟いてみた。
「俺は・・・助かったのか。助けられたのか?」
なにか俺に覆いかぶさる重さを感じたので横を見ると、友美が寝ていた。
俺の掛け布団をぎゅっとつかんだまま、寄り添うようにして。
美少女と添い寝ってか?
うん、悪くないからのん気に二度寝しようかなどと思っていると、俺が寝ている部屋のフスマがすーとあいて人が入ってきた。
女性だった。
年は30才くらいだろうか。
肩にかからないくらいに切りそろえられた髪で、細く長い目と少し厚い唇。
口元のほくろが印象な色っぽい顔立ちだった。
ゆったっりとしたセーターとふわりとしたスカートを着ていて、落ち着い雰囲気を感じる。
「よかった、お目覚めですね」
女性は、両膝をそろえるように俺の横に座ると、俺の顔に手をかけて言った。
「怪我による熱は無いようですね。傷は痛みませんか。一応縫っておきましたが。」
おれは、頬に触れる女性の手の感触で完全に目が覚めた。
「ココは?俺はどうしてここに?あなたは?。」
その俺の問いかけに女性が答えるようと少し唇が動いたところで、急に友美がむくりと起きた。
「房代さん、このあとの説明はわたしからイケメンマスターにしますので、食事の用意をお願いします。」
房代と呼ばれた女性は、友美の唐突な動作に少し驚くが、すぐに微笑む。
「はい友美様。それでは食事が出来ましたらお呼びしますね。」
そういうと、俺と友美に軽く会釈して部屋を出て行った。
「友美ちゃん、ここは。今の人は?。」
友美は甲斐甲斐しく俺に布団を掛け直すと
「今の人がこのセーフハウスの管理人の田島房代さんです。それより!わたし心配でずっとVさんの横で看護したんですよ、感謝してくださいね。」
ちょこんと座った状態で、友美は俺を見下ろしている。
うん可愛い。
そして大体事態は把握した。
俺は、軽くうなずくと
「そうか・・・ありがとう。友美ちゃんも疲れていたのに、すまなかったね。」
すると友美は俺の横にころりと寝転がる
「何言ってるんですか、わたしとVさんの仲じゃないですか。Vさんに何かあったら私が面倒見ますから安心してくださいね。」
そう言いながら、まるで子供を寝かしつけるかのように、俺の布団をポンポンと叩きだしてニコニコした。
この娘は、ほんと何がしたいのだろう?こちらとしても対応に悩むような事を時々する。
今のこの行動もそうだ。
俺に二度寝しろという意味だろうか?
こういうところは、よく分からない娘である。
・・・・・・・・・・・・・・・
俺と友美は房代さんに呼ばれて居間に来ていた。
俺と友美は並んですわり、その前に房代さんが座っている。
味噌汁と魚で朝ごはんというのも久しぶりでなかなか良い。
そして美味い。
すこしニマニマしながら房代さんと会話しながら食事をしていた。
しかし会話しながらも、房代さんはチラチラ俺を見て、なにか観察しているのが分かる。
「あの、なんか俺警戒されてます?」
すると、房代さんは俺をマジマジと見ながら言った。
「あなたが・・・・イケメンマスター・・・ですよね。」
俺は少し照れながら。
「そうらしいです。」
房代さんは何か、困ったような笑顔をしながら。
「そうですよね。失礼いたしました。新しいイケメンマスターだと聞いていましたので、わたし、少し勝手にイロイロイメージしていたもので・・・」
俺は、すこしダメージを受けてうつ向き気味になった。
「で、ですよね・・・。イケメンマスターっていったら、イケメンが来ると思いますよね。」
そんな俺の言葉に、房代さんは困った笑顔で、手をパタパタさせて返事をしきた。
「す、すいません、そんなつもりで言ったのではないのですよ。Vさんがとても私がイメージするイケメンマスターにぴったりの素敵な方でしたので、少し驚いていたんですよ。」
房代さんは慌てて恐縮しているようだたが、俺も恐縮してしまう。
必死のお世辞、申し訳ないです。
すいません気を使わせてしまって。
そりゃイケメンマスターが俺だったら、そりゃガッカリするよな・・・。
そう思っていると、友美が箸をバンとテーブルの叩きつけながら怒った声で割って入ってきた。
「房代さん、Vさんがイケメンマスターでは気に入らないんですか?私はVさんが最高のイケメンマスターだと思っているのですが!!。」
房代さんはビックリした顔をして、次に慌てて頭を下げて謝りだした。
「も、申し訳ありません。けっしてそのようなつもりでは。本当に申し訳ございません。」
俺はあわてて、友美を制した。
「おいおい、怒るなよ。普通イケメンマスターがイケメンじゃなかったら『おや?』って思うだろう。」
すると友美は
「Vさんは、Vさんをかばう私よりも、房代さんをかばうんですか!さっきから房代さんとばっかりお話をして、私のことなんか見ようともしないじゃないですか。どういうことですか!私なんて眼中に無いってことですか!?」
俺は慌てた。友美の怒りの矛先が急激に俺に向いたので、当然あせる。
俺は、必死に友美をなだめた。
「と、友美さん。落ち着いて。友美さんは俺の隣にいるんだもの。見る回数だって当然減るでしょ。べ、べつに友美さんを無視していたんじゃないよ。それに俺もイケメンマスターて呼ばれ事に抵抗があったから、そうれを言っただけで、房代さんに味方して、友美さんに敵対したわけじゃないから・・・。」
友美は俺の言葉で黙ったが、口を尖らせてこっちをにらんでる。
まいったな。
モテない不細工な俺では、年頃の女の子の気持ちなんてわからないよ。
すこし沈黙が続いた後、友美は不機嫌そうに口を開いた。
「Vさんはイケメンマスターを理解するべきです。
いいですか、イケメンマスターという言葉には二つの理由があるんです。
一つはイケメンマスターは自分以上のイケメンを皆殺しに出来ます。いつでも世界一のイケメンになる権利を持っている・・・というのが理由の一つ。
もう一つの理由は、イケメンマスターは自分以上のイケメンの生殺与奪の権を持っていますので、全てのイケメンはイケメンマスターに従うしかないのです。つまりイケメンマスターは『イケメンたちの主』という意味でもあります。
これはですね、イケメンマスターは不細工ならば不細工なほど多くの男を従える事が出来る、強大な王になれるという意味でもあるんです。適度に不細工で無いとイケメンマスターの意味がなくなります。」
なるへそ!
俺は、この説明でイケメンマスターという言葉に納得が行った。
それなら確かに、イケメンスイッチの持ち主は、イケメンマスターである。
そして俺は思わずつぶやいた
「なるほど納得した。つまりイケメンマスターは不細工の王ということだね。」
友美は俺の言葉に返事をせずに、また凄いスピードで食事をはじめ、あっという間に食べ終わって部屋から出て行ってしまった。
もう、、、、友美さん、何が気に入らないの?。
おっちゃん、困って泣いちゃうぞ。




