その16 不細工な12人
敵はぞろぞろと車から飛び出してきた。
全員が驚くほど不細工な男。
気持ち悪いヒョロっとした男。
太って肌がボソボソの男。
並びの悪い歯が歯茎ごと飛び出している男。
全員の特徴を観察しようと思ったが、三人目で目をそらしてしまった・・・。
こいつらの特徴を上げるのが哀れに思えてくるほどの不細工たち。
全員に共通の特徴は、奇妙な厚手のポンチョを着ていることだ。
しかし、こいつらはどうやって俺たちを追ってきたんだろう。
もしかすると、爆滅団とは関係ないかもしれないけど、不細工すぎるから念のため斬るか。
うん、これだけ不細工なら斬っちゃってもしょうがないよね。
うん、しょうがない
マイクロバスで来ているんだから、10人以上は居るだろうが、6人目まで出てきたところで、俺は刀を抜いて一番前の奴を斬った。
一番前のヤツはメガネをかけたヒョロっとしたオタク顔のヤツだ。
ガツン
斬れなかった・・・・
このポンチョ、かなり防御力が高い。
そして少し安心したよ。
こんな防御力のある服を着ている一般人はいない。
よかった一般人じゃなくて。
斬りつけられた不細工は、驚いて尻餅をつくと甲高い声で叫んだ。
「みな気をつけるでござるよ。イケメンマスターは乱暴モノですぞ」
その後ろに居た奴が慌てて先頭の不細工を支える。
「師匠LOVE氏、大丈夫だったぴょん?ビックリしたぴょん。」
なんだこいつら、不細工なだけじゃなくて喋り方までキモイ。
俺も秋葉原とかはウロウロする種類の人間だが、もしかしてこういう奴らと同類だと思われていたのかな。
うーん、なんか見たくない現実を見た気がする。
すぐに第二撃を入れないといけないタイミングだったのだが、連中の奇妙な会話に唖然としてしまい、俺は敵が全員出てくるまで見届けてしまった。
全部で12人いた。
見れば見るほど見事な不細工集団だ。
先頭で俺に斬りつけられた師匠LOVE氏と呼ばれた奴が、友美を見つけて奇声を上げた。
「みなの衆、美少女がいたでござるぞ!」
すると、後ろに居た連中も全員で「オオオー」と声を上げる、バラバラと「萌え」「萌え~」とつぶやきだす。
こ、こいつらキモい。
さっさと倒してしまおうと、俺は呼吸を整え全身全霊で少し後ろにいる太った奴を踏み込んで刀で突いた。
狙った箇所は心臓。
こういう時は、前衛よりも少し後ろの奴のほうが防御体勢を取りきれていないことが多い。。
強い抵抗を一瞬感じたが、全身全霊の突きはどうにかポンチョを貫き、太った男に突き刺さった。
よし、深く刺さった感触がした。
しかし、致命傷ではない・・・か。
おそらく、このポンチョは銃弾も通さないだろう。
「ぐわああ、防護服が貫かれた・・・・」
太った男はその場で膝を突き、傷を抑えてうずくまる。
次の瞬間、俺のわき腹に痛みが走った。
グズ
すぐにわき腹を見ると、槍が刺さっている。
やはり12人も敵がいると、横から喰らってしまうな。
おれは、急いで槍を刺して来た奴の指を切りつけた。
ピュ!
あっけなくそいつの指が斬れて飛ぶ。
定石では、ここで槍を抜いたら出血してしまうのでいけないと言われているが、俺は迷わず抜いて、槍を掴んでそいつを蹴り飛ばした。
出血を恐れて足を止めれば、むしろ早死にしてしまう。
俺は前転の要領で身を低くして転がった。
すると俺の上を大量の槍が空を突く。
ギリギリで避けれたというところか。
タイミングも良いし、なによりこいつら息が合っている。
立ち上がると、俺は急いで刀を鞘に納める。
逃げないといけない。
こいつらは、思った以上に連携が取れていいてヤバイ。
すると、友美は素早くイケメンスイッチの青の面をそろえてスイッチを出し、俺に差し出した。
スイッチには「意識できる範囲」と書かれている。
内心、「無駄だろうな」と思いながらイケメンスイッチを受け取ると、敵に向けてスイッチを押す構えをして言った。
「このスイッチは100m以内なら狙えるぞ、爆発したい奴はかかって来い!。」
どう見ても、こいつらは俺よりブサメンだ。
当然迷わず突っ込んでくるのではと思った。
しかし、驚いた事に、敵は全員たじろいだのだ。
おいおい冗談だろ・・・・
冗談だよな?
とはいえ俺はこいつらにイケメンスイッチは効かないと思っているからスイッチを入れるわけには行かない。
わき腹の傷のせいで少し手が震える。
時期優先は不利か。
一か八か賭けに出てみた。
「今すぐお前達を爆発させてやる!」
といいながら、指をブルブル震わせる演技をしながら、スイッチを押すそぶりを見せた。
すると、敵は
「これで勝ったと思うなよ!」
そうさけぶと、我先にとマイクロバスに乗り込み、凄い勢いで急発進して去っていった。
ええええぇぇぇぇぇ
お前ら、俺のほうが不細工だと思ったのか?
そ、それはどうなのさー。
マジか?お前達相当な不細工だったのに、俺のイケメンスイッチから逃げるのか?
すこし屈辱的だったが、一応助かった。
あいつらから見たら、俺のほうがブサメンだと思うのだろうか?
人の心理というのは希望的にはたらくものなのかもしれない。
うん、絶対あいつらの勘違いだよ。うん。
思わず呆然としてしまった。
友美はすぐに俺からイケメンスイッチを受け取ると、俺を抱えるように支えてくれた。
「Vさん、しっかりしてください。」
かなり痛かったが、致命傷ではない。
俺は上着を脱ぐと、脱いだシャツでわき腹を強く縛り、出血を抑えた。
「まあ心配するな。急所ははずれてるから大丈夫だ。」
おれはそう言いながら、バス停のベンチに座ると、急に意識が遠のくのを感じた。
傷によるものではない。
これはタダの眠気だ・・・・とおもう。
座ってグッたりした俺を、友美が凄い形相でゆすりながら名前を呼んでいる。
「Vさん、どうしたんですか!力抜かないでください!Vさん、何か言って!!!」
おれが急に目をつぶるようにユックリとベンチに倒れたので、友美が半狂乱に俺に抱きつく。
美少女はハグだけど、痛いです友美さん。
消え行く意識の中、俺は「友美の表情こわ!」と思いながら目をつぶった。




