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その22 十代最強

餡ちゃんは端末を持って腕を組む。

大黒雅人チームは端末を夏子さんに渡した。


なんかテンションが高まるのを感じるよ。

でも・・・


一分経過


三分経過


長い沈黙はこっちまで気まずい。

ご指名があった武義と如水が出てこないんですけど・・・・

せめて返事くらいすればいいのに。


この沈黙に耐えられなくなって餡ちゃんは叫んだ。

「あの二人は、僕のチームから外してください。いまから僕のチームは僕一人だ!。」


その発言にまた学校中で「おおお」という声が響く。

餡ちゃん、男らしい!

私にVっちという先約がいなかったら惚れそうだよ。

いや、餡ちゃんは女の子だけど。


すると、真田学園の生徒とおぼしき、オタク風のデブが走ってきた。

「まってください。その竹内館のチームとは僕のチームが戦います。」

おお、デブが割って入ってきた。


その後ろからさらに2のデブと1人のガリガリが走ってくる。

デブ3人とガリガリ1人が餡ちゃんの横に並ぶ。


餡ちゃんはデブに駆け寄っていった。

「太一君、ここは僕が戦う。太一君は無理をしちゃ駄目だ。相手はあの大黒雅人なんだ。」


すると太一といわれたデブは足と声を震わせながら夏子さんに端末を渡す。


「こ、このルールでは五人に満たないチームには2人まで助っ人が入れらる事になっていますよね。

だから餡ちゃんは僕らのチームの助っ人として入ってよ。

そうすれば、もし負けても敗北は僕らのチームがしたことになるから、助っ人に入った餡ちゃんは敗北した事にならない。

だから何度でも次のチャンスを狙える。

僕らは餡ちゃんの踏み台になる為にみんな五人未満の人数でチーム参加したんだ。

これが僕ら真田学園の戦い方って事ですよ。」


それを聞いて金子は急いで夏子さんから特製端末を返してもらってルールを確認した。

この特製端末はタブレット型で、大会情報とアクセスできるからルールも端末から確認できるんだ。


そして金子が驚いたように言った。

「ほんとや。勝負するチームが敗北しても、確かにこのルールだと助っ人に入った人のチームは敗北にならない。こりゃ見事なルールの盲点ですわ。」


雅人は目を細めて、こっちに「説明して?」っていう感じの情け無い顔をしている。


だから私は大声で教えてあげた。

「真田学園は頭脳で竹内館に対抗するつもりなんだって。ルールの盲点をついた作戦を立ててきたから、雅人は何度も餡ちゃんと戦うことになりそうだって話だよ。」


すると雅人はクワっと劇画調の顔をして叫んだ。

「おもしれえ、つまり何度もお前をぶっ潰して良いってことだな。俺は逃げも隠れもしないぜ。何度でもかかってきやがれ。」


そこで夏子さんは手を上げて宣言した。

「では続けて真田学園043番チームと竹内館001番チームの試合を始めまーす。」


時代錯誤な竹内館のチームにはなぜか強い風が吹いていて、雅人の学ランや後ろのスケバンの長いスカートがバサバサ風にはためいている。


真田学園の太一チームはバットを握り締めて、不安そうに内股で構える。

夏子さんは叫んだ

「ハジメ!」


でも両チーム動かない。

まずは雅人は歩いて進み、太一に問いかけた。

「おい、お前ら怪我するぞ、覚悟できてるのか?」


震える太一はバットを構えながら、餡ちゃんの前に立ち答えたよ。

「僕らが餡っちゃんの力になれる事なんか、これが最初で最後だと思う。だから一生に一度くらいは、男らしくがんばってやるんだ。」


そう言いながら、はやくも雅人の迫力の前にぼろぼろ泣き出している。


雅人は学ランに手を突っ込みながら歩きつつ、にやりと笑った。

「おまえら、思ったよりも男じゃねえか。負けると分かっていても女を守るなんて、誰にでもできる事じゃないぜ。気に入った。戦いが終わったら昼飯おごるぜ。」


そう言うと、雅人は右手を上げる。

その合図に反応して、雅人のチームの四人が太一たちにマンツーマンでついた。


餡ちゃんは慌てて太一たちのフォローに入ろうとしたけど、すぐに餡ちゃんに雅人が走りこむ。

「おい、お前の相手は俺だぜ!。」


雅人の攻撃を受け流して餡ちゃんはさけんだ。

「太一君、正平君、まさる君、聡君!君達は早く逃げて。こいつらは強すぎるから。」


すると、態勢を立てなおした雅人が、蹴りを出しながら餡ちゃんに叫んだ。

「ふざけるな!自分の限界を超えて戦ってくれている男達に逃げろじゃねえだろ。」


雅人の蹴りを防御した餡ちゃんはバックステップで体勢を立て直す。

「でも、彼らは文科系なんだ・・・」


その言葉を聞いて、雅人は激怒して帽子を地面に叩きつけた。

「『でも』じゃねえええ!自分の為に死んでくれる男に恥をかかせるな!」


いや、死なないでしょ。


でも見ると、太一はもう鼻血を出して倒れていた。

それも震えながら太一は立ち上がると、割れたメガネの位置を直しながら餡ちゃんに微笑みかけた。

「僕らは大丈夫だから、餡ちゃんは存分に戦ってよ。僕らもなんとか時間を稼ぐから・・・。」

そこまで言って、太一は腹を蹴られてまた転げた。


餡ちゃんは苦しそうにぐっとこぶしを握り締めると、一滴涙を流して叫んだ。

「みんな、少しだけ我慢して。みんなが戦ってくれている間に、僕が絶対に雅人を倒すから。」


雅人は学ランの上着を脱ぎ捨てるとつぶやいた。

「それで良い。女のクセに男らしいじゃねえか。」


そして二人はユックリ構える。


そこで、雅人はムキムキと体の筋肉が膨らみ、身長も10cmくらい大きくなった。


あ、あれ見たことある!

前に雅人の兄の、大黒玄太が中国でやっていた奴だ。


なんだっけあれ・・・・えっと・・・ラオウスペシャルだ、多分。

雅人もできるんだ、ラオウスペシャル(本当は大黒流奥技・大黒憤怒態)。

ラオウとまでは行かないけど、ケンシロウ級になった雅人は叫んだ


「いまだ、やれ!。」


そこで、雅人のチームの四人が一斉に餡ちゃんに太一と正平とまさるを投げつけてきた。


餡ちゃんは慌てて、三人を受け止めようとする。

その瞬間


踏み込んできたケンシロウ雅人が、デブ三人ごと餡ちゃんを体当たりで吹き飛ばした。


「その隙が命取りだ!」

「うぐうう!。」


それで一瞬中に浮いてしまった餡ちゃん。

その一瞬で、雅人は餡ちゃんにアッパーをぶちかました。


さらに数メートル浮き上がる餡ちゃん。

落ちてくる餡ちゃんは、どうすることも出来ずにケンシロウ雅人の回し蹴りを食らって吹っ飛ばされた。


夏子さんはそこで割って入った。

「やめ!」


そしてすぐに餡ちゃんが気絶しているのを確認すると、宣言した。

「竹内館001番チーム。通称バンカラ番長チームの勝利!。」


殺気の私達の戦いとは違い、今度は学校中が静まり返ったよ。

そこで、雅人はしゅるると小さく元の大きさにしぼむと餡ちゃんをコツリと蹴った。


「おい起きろよ。こんなチンケな手に負けやがって。こんな勝ち方じゃ俺も不本意だが勝負は勝負だ。今からは俺が10代最強を名乗らせてもらうぞ。」


そこに、おもわず友美っちが飛び出した。

「蹴るな!倒れてる餡になにするの!。」


友美っちは餡ちゃんを抱き起こした。

すると、餡ちゃんは目を開いて意識を取り戻す。

動けない体で太一が餡ちゃんに「ごめん、ふがいなくてごめん」て言っていた。


餡ちゃんは倒れた太一たちを見た。

「みんな・・・・僕が・・・・僕の方こそ、ふがいなくてゴメン・・。」

餡ちゃんの目からポロポロ涙がこぼれる。


すると冬姉が餡ちゃんを見下ろしていったんだ。

「餡、君はもっと反省すべきだ。このデブオタクたちが最後の敗因だったかもしれない。

だがあいつらは限界を超えた戦いをしていた。立派な戦士達だった。

お前がやつらを戦士として扱わなかった前半のロスが敗北を生んだ。

哀れみは優しさじゃない。

戦士には尊重こそが優しさだ。

死んでくれるやつがいたら、その死を無駄にしないように戦うのが優しさだ。

お前の甘さがこいつらの死を無駄にした。」


冬姉の言葉に、餡ちゃんは「ごめん、ごめん」としか言えず、ボロボロ涙を流した。


すると校舎の上から餡ちゃんに叫ぶ声がした。

「餡ちゃん、気にしちゃ駄目だ。」

「ウチは餡ちゃんしか戦えないから、こんな餡ちゃんだけが大変な作戦しかできなかったんだ。」

「本当にゴメン。でも餡ちゃんが何度でも挑戦して、勝ってよ。」

「餡ちゃんなら何度もチャンスがあれば・・・餡ちゃんなら必ず勝てるよ。」


その叫びに呼応するように、学校中から「そうだよ」「僕らとがんばろうよ」という声が聞こえてきた。

真田学園・・・ただのオタクの巣窟かと思っていたけど、熱い連中じゃないかチクショウ。


雅人は、帽子を深くかぶると少し上を向きながら言った。

「け、なんだよ、良い仲間が沢山いるじゃねえか。だったら奴らのためにも何度でも来い。

俺としてもお前は兄ちゃんに追いつくための良い練習台だから何度でも叩き潰してやるからよ。」

そう言いながら、私達に背を向けて去っていった。


餡ちゃんは「ありがとう」って言いながら、友美っちの膝に介抱されながら、腕で顔を隠してボロボロ泣いていた。


~~~~~~

この様子を屋上から一部始終見ていた者たちがいた。

福神七傑と荒川武威。


全員ボロボロ泣いていた。


武威は玄太の背中をバシバシ叩く。

「玄太君、年取ると涙もろくなっていけないね。雅人の奴、いい男になったじゃにゃにゃか。」

「V君、餡ちゃんこそ素晴らしい青春をおくっているじゃやいきゃ。胸が熱くなっちゃあわよ。」

鼻水も出て、ちょっと上手くしゃべれない二人。


その後ろでほかの福神七傑も

「くそ、目から汗が出てきやがった」

「おれも、一緒に戦いたいぜ」

「こんな高校だったら、俺も高校中退しなかっただろうに。」

「いい男達じゃないの。あたしが高校生だったら放って置かないね。」

などと言いながら泣いている。


そこに、学園長の兼松矛美が歩いてきた。

「何だ?いいオッサンやお姉さんが達が泣きじゃくっている姿は異様だぞ。」


武威は、ハンカチで鼻をかみながら答えた。


「叔母ちゃんは熱い気持ちがアレしないのかよ。

あいつら素敵すぎるぜ。しかも見た?

雅人のやつが、なんか急に今までよりも大きな男になってるよ。

あいつはテロ事件で何も出来なくて落ち込んでいたのに、その挫折感をバネに自分で自分の限界を超えたんだぞ。

しかもとうとう玄太君しか体現でき無かった『大黒流奥技・大黒憤怒態』まで習得ししたんだ。

若者が自分の限界を超える姿に感動するだろ普通。

もちろん今回の敗北で餡も必ず大きくなる。叔母ちゃんにはそんな予感がしないのかよ。」


その場の全員が、泣きながらウンウンうなずく。


その様子にあきれながらも矛美は屋上の柵に手を掛けた。

「たしかに、それはあるかもな。しかし、あの子達が素晴らしいからこそ武義と如水には腹が立つ。あいつら、雅人が怖くて逃げやがった。叔母として恥ずかしいよ。」


武威は涙を拭きながらまじめな顔をした。

「だから厄介なんだ。あの人は自分の体面さえ保てれば何を犠牲にしても恐れない。

叔母ちゃん、この騒動の俺の真意をこれから叔母ちゃんにも話そうと思う。

でもこの話を聞いてしまったら、叔母ちゃんはすべてを失い、美羅も含めて修羅の道に落ちる可能性も高くなるから、おれとしては話すかどうかまだ悩んでいるんだ。」


すると、まるでイケメンのような顔立ちの矛美は、挑戦的に微笑んだ。


「気にするな。そうそう、天道秋彦殿もうっすら気づいていたぞ。

今回の事はお前が友美を餌にするくらいの大事なんだろ。きっと世界の存亡に関るような大事な事に違いないと言っていたぞ。

だったら私は戦うさ。そういう話だったら遠慮なく言え。もううっすら覚悟もできているんだよ。

あの『うぷぷい』遺跡を見つけたとき、なにか絶望に近い予感を感じた。

アレに関係あるんだろ。話せ、そして私も戦いに参加させろ。」


その言葉を聴いて玄太は驚いた顔で言った。

「さすが矛美さんだ。躊躇なしか。」


数日後、武威は約束どおり自分の考えと展望、それに自分のエゴを包み隠さず矛美に話すことになる。

~~~~~~


お読みくださりアリガトウございます。


次回以降予告


ついに開始された学校一武道会。

まず、竹内館チームが狙いを定めたのは、セント兼松学園チームだった。

その戦いを指示したVの真意は?。

その煽りを受けて真田学園にも問題がおきる。

そこに伝説のあるヒーローが助っ人に現れた。

仮面をつけたそのヒーローは高らかに自らを名乗る。

「おほほほ、セント兼松学園のピンチには必ずワタクシが現れますのよ。ワタクシの名はアンミラーP!愛と正義の美少女仮面ですわ。おほほほほ。」


その正体は誰も知らない(事になっている)

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