その19 雅人の苦悩
はい、歌田芽衣です。
いつかは小悪魔系かセクシー系になりたい14歳だよ。
でもVっちからは昨日の通信で「悪魔系もセクシー系も禁止」って言われちゃったよ。
なんでえええ?。Vっちがロリコンだから私に永遠の14歳を望んでいるのかな。
だったら房代さんにメロメロするな!
いいよ、絶対Vっちが土下座して「おっぱい見せてください」って言いたくなるようなセクシー系になって、小悪魔的にもてあそんだやるんだ。
そんな私は、今は房代さんのお弁当運びを手伝うために、友美っちと一緒に駐車場に来てるんだ。
こう見えて、私達は結構力持ちだから、お弁当も軽々もてるよ。
私達はやっぱり房代さんのご飯が一番好きなんだよね。
お弁当楽しみだな。
そこに車で房代さんたちがお弁当を持ってきてくれた。
金子はいつも運転してきても、お弁当運ぶのを手伝ってくれないんだ。
それが戦闘員というものなんだって。
でも今日の金子はいつもと違う行動をした。
車から降りるなり、金子は友美っちにジャンピング土下座してきたんだよ。
ど、どうした金子?
すると金子は地面におでこを擦りつけながら言った。
「友美さま、じぶんがお弁当を取りに行っている間にテロリストが襲ってきたと聞きました。本当に申し話訳ございません。なんとお詫びしていいか・・・・このうえは責任を取って辞職を・・・うぶ!。」
そこで友美っちは金子の頭を踏みつけた。
おお、さすがお姫様はやることがクールだな。
そんで友美っちは金子に言ってやったんだ。
「あなたにお弁当の移送を命じたのは私ですから土下座や謝罪は不要です。それに残っていた金子の警護隊のメンバーは生徒の避難とテロリストの制圧に力を発揮しています。ウザイ謝罪はいりません。職務に励みなさい。」
そういって金子の頭から足をどけた。
今、金子の頭を踏まなくても良かったんじゃ・・・・。
金子は一度頭を上げると、また深々と頭を下げた。
「あ、ありがとうございます!これからも友美様の信頼を裏切らないように命を賭してお仕えいたします。」
それを聞いて友美っちは、すこし心配そうに見ている房代さんのところに歩いていってしまった。
私はすぐに金子に言ったよ。
「ツンデレだ・・・友美っちはツンデレだよ。金子、あれは友美っちが金子以外に自分の警備隊を任せる気はないから責任とって辞めるのは許さないって意味だと思うよ。」
すると、金子は嬉しそうに細い目をキラキラさせた。
「マ、マジっすか!やっぱり芽衣ちゃんからみてもそう思った?いやあ、今までお傍に仕えていて、こんなに報われた気分になったのは初めてやわ。」
そう言いながら嬉しそうに立ち上がる。
あんた頭踏まれたのにそんなに喜ぶなんて、知らない人が見たらドMみたいだよ。
まあ、本人が嬉しいならいいか。
私も、車に積んだお弁当を持つとテクテク友美っちたちと歩きだした。
テクテク歩いている・・・・・
急に竹内館の連中が私達を囲んできた。
なんだ、こいつら?ヤルきか!
すると、お弁当を運ぶ私と友美っちを無視して、『殺』って書いたマスクをしたスケバン風の奴が房代さんの前に歩み寄った。
「乳母さん、お願いがあるのですが聞いてもらえますか?。」
私も友美っちも何が起きたのか分からず、頭に「?」が飛んでいる。
そんななか、房代さんは優しく答えたよ。
「あら、たしか殺子さんですよね。なんでしょう、私で出来ることでしたらお手伝いいたしますよ。」
「よかった・・・・。じつは雅人さんが、今日のテロ事件でめちゃくちゃ落ち込んじゃってるんです。でも自分達じゃなんて言って良いか分からなくて・・・。」
「なんで落ち込んでしまっているんですか?」
「実は雅人さんはテロが起きたときにすぐに飛び出して行ったんですが、あのターミネーターみたいな奴に吹っ飛ばされて、修道女に銃で撃たれて逃げてしまったんです。
それがかなり雅人さん的にショックだったみたいで。
しかもそのあと天道冬美やお姫様とお花隊が学園長を守ってテロリストを倒しちゃったじゃないですか。
立ち直れないくらいダメージ受けててなんていって良いか分からなくて・・・。」
房代さんはその話を聞いて優しくうなずくと答えたよ。
「あなた達は本当に仲間想いな人たちなのですね。」
「そんな事ないっすよ。ダチが心配なのは当たり前っす。」
「ふふ、私でよろしければお力になります。」
「あ、あざっす!」
そういうと、『殺』マスクのスケバンは房代さんの荷物を代わりに持つと、房代さんを体育館裏に「こちらへ」って案内した。
房代さん・・・・いつのまにこの連中と仲良くなったんだろう?
学校って不思議がいっぱいだよ。
私たちも一緒に体育館裏に行くと・・・
大黒雅人がびっくりするほど落ち込んで座っていたよ。
もう、遠目からでも分かるくらい頭を抱えてがっくり座っている。
そこまで落ち込むか・・・
その雅人の周りに、数十人の不良たちが蟹股で座ってたんだけど、房代さんの姿を見た瞬間、全員が立ち上がって直立不動をした。
その光景に私も友美っちも「うわ、なんだ?」って驚いたよ。
でも房代さんは冷静に全員向けてペコりと挨拶すると、そっと雅人の隣に座った。
「雅人さん、落ち込んでるそうですね。」
その声に驚いて雅人は素早く顔を上げた。
「あ、乳母さん、いえ。。。これは・・・・。」
雅代さんはニッコリすると、あわてる雅人を無視するように語りだした。
「私、前にVさんから聞いたのですが、Vさんは対麻薬組織部隊として初めて実戦参加したとき、怖くて建物の影から顔も出せなくて部隊の人たちから凄く馬鹿にされたそうです。」
「え!だってVさんは銃弾を避けて敵を倒すって伝説があるのに?その臆病話は嘘じゃないですか?。」
「私も臆病なVさんの話には驚きました。」
「あのVさんが・・・・信じられない。」
「それにお兄さんの玄太さんも、初めて戦ったときは私の後ろで足を震わせて動けなかったんですよ。」
「えええ!兄ちゃんは何十万もいる敵に突っ込んでいって戦った勇者じゃなかったのですか?。」
「ええ、玄太さんはとても勇敢で凄まじい戦い方をする人です。ですが、命のやり取りをするデビュー戦ではそんなものだったのです。」
「兄ちゃんも初めは何も出来なかったのか・・・・。」
「そこに行くと、敵に向かって飛び出した雅人さんは勇敢ですよ。Vさんも玄太さんも、初めは逃げ出す必要があるほど敵に近づけなかったのですから。」
「じゃあ、俺もまだ見込みがあるかもしれないのかな。」
「ええ、玄太さんをまっすぐ追う雅人さんなら、必ずこの敗北をバネに大きくなれます。
弱かったことから逃げず、言い訳しないで落ち込んでいる雅人さんは自分の弱さを認められる人です。
でしたらもっと強くなれます。きっと玄太さんも唸る強い人になれますよ。」
「そ、そうかな・・・・。俺も、兄ちゃんみたいなデカイ男になれるかな・・・」
「ええ、そうでなければVさんが雅人さんを鍛えるなんて言い出すはずがありません。雅人さんは鍛えれば強くなるとVさんが思っているんです。」
そこで、房代さんの通信機から、またVっちの声がした。
『雅人、まあ房さんの言うとおりだ。安心しろ、お前達は今のエスパー部隊の域まで強くなれる。エスパー部隊と同じである必要は無い、大事なのはお前達の力を最大限に引き出せるように動くことだ。』
「はいVさん!なんか元気が出てきました、また指導をお願いします!」
『そのつもりだ、まかせろ』
Vっちは、いいところでフォローに入るね。
そのとき、私の横ですごい邪悪なオーラを感じた。
驚いて横を見たら・・・・友美っちが凄い形相で首からさげたイケメンスイッチを持ってにらんでいた。
あ、そうか・・・・私達はこのVっちの野望を打ち砕くんだった。
友美っちはカチリと通信機のスイッチを入れると、地の底から響くような声で呼びかけた。
「ヴーイーちゃーまー。エスパー部隊をたーおーすーんーでーすーかー!。」
『はう!と、友美さん、いまの聞いていたんですか・・・。』
通信機越しのVっちの声が心なしか怯え気味な気がする。
不良たちが、驚いて友美っちを見た。
でも、もう友美っちは周りが見えなくなってるみたいで、大声で叫んじゃったよ。
「Vちゃま!私達を倒すってどういうこと!ちょっと、今すぐスイッチから出てきて正座で説明しなさい!Vちゃま、事と次第によっては絶対に許さないんだから!。」
『あう、友美さん、これは違うんじゃよこれは。えっとアレですよアレ・・・えっと・・・あれ、通信機の調子がおかしい、あれれ通信機の調子がおかしいかな。。。アレレ』
ブチ
Vっちの通信が切れちゃったよ。
友美っちは通信機に向かって最後に絶叫した。
「Vちゃま逃げるな!好きーーー!。」
なんじゃそりゃ!
みたら、不良まで一緒に「なっじゃそりゃ」って突っ込みポーズだよ。
でも、そんな私達を無視して雅人は自分のこぶしを見つめてつぶやいた。
「俺は、まだ見込みがある。やれる・・・。まずは玄太兄ちゃんの大黒憤怒態を習得してやる。追いつかなくちゃ。」
友美っちのズッコケ発言も耳に入らないくらい考え事か。
なんか、こいつは今、急激に成長しようとしている気がする。
そんな予感をさせる奴だから、不良仲間もついていってるのかな。
すると房代さんはすっと立ち上がり、振り返るように雅人に言った。
「男の子はうらやましいですね。私も男の子に生まれていたら、Vさんやあなたと同じ世界を見てみたかったです。」
その房代さんを見上げて、雅人はすこし顔を赤らめた。
雅人・・・あんた惚れたね。
お読みくださりありがとうございます。
田島房代マメ知識:雅人が可哀想に思えるくらい、雅人の事はなんとも思っていない。房代の頭の中には、天道姉妹とエスパー少女たちの事しかない。




