その18 武義の手にある闇
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学園長の兼松矛美は学園長室に数人の教師を呼び激怒していた。
「おまえたち!外で戦うといった私の言葉に何故従わなかった!
コレだから武道家はアテにならないんだ。何のために一流とか言われて良い気になっているお前達を呼んだのか理解していない訳ではあるまい!
グダグダ『まだ装備の用意が間に合わない』だとか『通信機の調子がおかしい』とか『邪魔にならないようにするのも戦場に必要』だとかくだらない言い訳をしおって!。
まったく本来武道家は戦のための存在なのに、今の武道家は実戦ではクソの役にもたちはしない。
またこのような事態は起きるだろうが、今度同じようなことをしたらクビだ!わかったか!。」
全員が、何も言えずに黙って直立不動していた。
そして矛美は甥の荒川武義(Vの兄)と荒川如水(餡の兄)の前に立つ。
「しかもお前達二人は恥ずかしくないのか?
いつもは武威を蔑むような事ばかり言うくせに、今回のていたらくは何だ!
武威の育てた娘達と莉奈しか役に立たなかったのを見て何も感じないのか?
まったく、お前達はこの場に居ない武威にすら負けているよ。
言い訳や愚痴の前に自分の力で自分を証明してみろ。
まったく、、、、まだ15歳の冬美が必死に武威の代理を務めようとして戦っていたのに・・・・私は叔母としてお前達が恥ずかしい。
罰としてお前達二人には学校一武道会への参加を命じる。
生徒にボコボコにやられて言い訳も出来ないほど自分を思い知るといい!」
そういって二人を蹴ると矛美は手で追い払うようなしぐさをした。
「全員反省しろ。まったく、武威さえいてくれたら・・・。」
全員、学園長室を出るとテンションが下がった状態で、職員室の席にもどる。
チャラチャラした軟派風イケメンの荒川如水は、インテリ風イケメンのメガネ男の武義に愚痴った。
「叔母ちゃんは、なにかって言うと武威をほめるけど、ココに居なかった奴と比較される覚えは無いよな。
あの修羅場の近くにすら居なかった武威のほうが文句を言われるべきだ。それに学校一武道会とかダルイよな。」
武義は席に座りながら答えた。
「武威が一人居た程度でどうにかなるとは思えない状況だったからな。
銃を持ったやつに飛び込む叔母ちゃんこそ学園長の自覚が無いと思うよ。
武威はここに居ないから高く評価されているだけだ。思い込みだな。」
その会話は早川莉奈にも聞こえた。
莉奈は立ち上がり、いきなり椅子に座っている如水の股間をハイヒールで踏みつけてきた。
「いてえ、何するんだよ、この足をどけろ。」
「ちょっと、聞いていれば何なの?兄やイトコでも荒川武威の事を悪く言う奴は私が許さないわ!。」
後ろで夏子も「私も許さないぞ(はーと)」とか言っているが、莉奈は夏子を無視して言葉を続ける。
「あんた達は近くで荒川武威を見ていたくせに、本気でそんなこと言っているの?
あの人は叔母が飛び出したら、絶対に自分も飛び出して叔母の背中を守るくらいはする男よ。
あの人は自分を守るよりも他人を守ることを考える男なんだから。
貴方達みたいな小さい男たちが荒川武威よりも偉ぶってるなんて、荒神流はバカの集団なんじゃないの?」
そう言うと、さらに強く踏みつけてから莉奈は足をどけて自分の席にもどった。
如水は半分キレながら言い返そうとしたが、席にもどってライフルの分解を始めた莉奈に何もいえなかった。
今回の莉奈の活躍はあきらかに武道家教師よりも戦果を上げている。
しょうがないので、如水はまた武義に向き、莉奈に聞こえないような小声で愚痴る。
「くそ、スナイパーみたいに離れたところで戦う奴に、体を張る武道家が文句を言われる筋合いは無いよな、武義。」
黙ってうなずきながら武義は、胸がジリジリ焦げるような気持ちになっていた。
また武威が異常に評価されている。
前にペルシアの華の本部に呼ばれたときの武威への信頼も異常だった。
自分としてはいつも、できるだけ良い人のように振舞っているのに結局は高く評価されるのはいつも武威だ。
自分のほうが弟よりもイケメンだし、頭も優秀、武道の技法だって道場で武威に負けたことなど一度も無い。
だが評価されるのはいつも武威だ。
それに、評価のされ方が気に入らなかった
自分は、顔の綺麗さや、成績のデーターなどの見えるものが評価されるのに対して、武威は、その人間そのものが評価される。
うわべを評価される自分と、見えないものを評価される弟。
『何が違うんだ。なぜ全てで勝っているはずの自分が劣等感を感じないといけないのだ?。』
ジリジリ
ジリジリ
この気持ちを感じると、もう他人に微笑む余裕はなくなっている自分が居た。
なにか如水が自分に話しかけているが耳に入らない。
瞳孔が開くのを自分でも感じる。
武義はイケメンなので女性のほうから言い寄ってくる事が多い。
だが、その女たちが一度武威と親しげに話すと、遊びに行くときに「弟さんも呼んでよ」といわれることは少なくなかった。
そんな女は全部捨ててやった。
武威は不細工だ。なのになぜあの女たちは武威を呼びたがったのか?
武義にはまったく理解できなかった。
しかも、尊敬した祖父である武玄から聞いた最後の言葉は
『ち、しょうがねえな。どうも武威を俺の後継者にするしかねえみてえだな。おめえじゃ器が小せえから頼りにならねえよ。』
だった。
「くそ・・・くそ・・・・弟のクセに・・・。」
武義はそっと自分の机の引き出しを開けて中を見た。
そこには、くすんだ色のルービックキューブが入っていた。
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