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第3話:神と神

 白の世界は相変わらず、美しい青が上空に広がっていた。しかし、地上に目を向けると、ある一角に砂埃がたちこめている。

 その中には5つの影があった。


「マジで、怖かった……。疲れた」


 だんだんと露わになってきた5人。そのうちの1人、オーゼウスは地面にへたり込んで冷や汗をかいていた。

 そんなオーゼウスの周りには黒くて奇妙なモノが転がっていた。先ほどまで彼ら5人を囲んでいた魔族たちであるが、4人の力で地面に縫い付けられたように動かなくなっていた。


「疲れたのは私たちの方ですよ。あんなに決めたのに、魔力無くなったこと忘れるなど、オーゼウス様は何なのですか?」


 へたり込むオーゼウスを睨みつつ、ミカエラは持っていた剣をしまった。魔族を倒した事はいいのだが、動きを止めてしまうと疲れがどっとミカエラを襲ってくる。

 そんなミカエラの様子を知ってか知らずか、オーゼウスは背筋を伸ばしてミカエラを見据えた。


「神だ」


 きりりと言い放つオーゼウスにミカエラはもう、何も言えなかった。

 そんなオーゼウスとミカエラの会話を聞いている残り3人も何も言えなくなってしまった。創造神として、尊敬に値するはずの方であるのに今はちっともそんなこと感じられない。


 天界にいる時のオーゼウスは魔力の保有量、魔力の使用の仕方が多様であったため、抜けている部分が十分にカバーできていた。

 今はその抜けている部分が前面に出てきてしまい、4人を悩ませているのだ。



「おやおや、オーゼウス、無様だな」



 じっとりとした嫌な空気が辺りに広がる。

 5人は声が聞こえた方をゆっくりと見ると、そこには黒い空気を纏った魔王が立っていた。




─第3話:(バカ)(ドS)




「サ、サタンスト……」

「お前が震えあがる姿、楽しませてもらった」


 不気味に微笑むサタンストの纏う空気が一層冷たくなる。

 4人はサタンストを睨みつけて、警戒している。魔王と呼ばれる、もう1つの世界の創造神のプレッシャーは先ほどの魔族の比ではない。


「こっちは全然楽しくなんてなかったぞ」


 ウリュエルがサタンストに言い放った。

 他の人間がいて、ウリュエルを見たならば、誰もが彼を恐れるだろう。それくらいの迫力がある顔であったが、サタンストにとっては何ともない。むしろ、彼にとってはそんな反応すら楽しく思えるのだ。


「笑えるなぁ。お前ら4人集まったところで俺に敵うと思うなよ」


 整ったガブリエルアの表情が歪む。悔しそうに歪められたその表情はサタンストにとって嬉しい事であった。


「ああ、勘違いするなよ? 魔力があったって俺には勝てない。誤解を生んだようで悪かったな」


 その場にサタンストの笑い声だけがあった。

 ガブリエルアはサタンストに飛びかかろうとしたがラファエールによって抑えられた。彼女も分かっていた。サタンストに敵うのはオーゼウスだた1人。魔力があれば、の話であるが。


「……腹立たしいな、サタンスト」


 魔族に怯えてへたり込んでいたはずのオーゼウスはゆらりと立ち上がり、サタンストを睨みつけていた。頼りない、震えていた彼はもういなかった。

 サタンストはオーゼウスと向き合い、ニヤリと笑った。


「俺は事実を述べただけだ」


 2人の間に火花が散る。

 魔力を持っていないはずのオーゼウスだが、纏う空気はまるで神の様で大きな力を感じる。4人はその様子を見て、やはりオーゼウスは神だったんだなと安心した。


「何も知らないくせに、よくそんな戯言を吐けるな」

「はっ、偉そうに。オーゼウス、俺はいつだってこの世界を魔族で溢れ返させる事が出来るんだぞ?」

「そんな事は、させない」


 オーゼウスが口の端をつりあげた。



「サタンスト、世界を賭けて、もう一度勝負だ」


















 白の世界と黒の世界。2つは決して交わることなく存在している。

 白の世界、創造神オーゼウス。黒の世界、創造神サタンスト。彼らは2度の賭けをしたという。1度目はオーゼウスが負けてしまった。


 白の世界は一時的にサタンストに奪われてしまった。それを取り戻すため、オーゼウスはもう一度賭けを申し込んだのだった。

 オーゼウスが勝てば、白の世界を。サタンストが勝てば、オーゼウスの全魔力を。


「私はあの時、初めてあなたを尊敬しましたよ」

「初めて、って……」


 水の入ったガラスのコップをオーゼウスに渡しながらミカエラは淡々と言った。

 ミカエラの少し失礼な物言いにオーゼウスは頬を膨らませながら、水を口に含んだ。


 賭けはオーゼウスの勝ちだった。


 白の世界はオーゼウスに返され、5人は無事に天界に戻って来る事が出来た。

 賭けの内容は、オーゼウスの側近4人とチェスで勝負してサタンストが1勝でもすれば、サタンストの勝ちというものだった。


 サタンストは余裕ぶっていたが、残念ながら、4連敗した。

 4人は普段からチェスを嗜んでおり、オーゼウスにチェスを教えたのも彼らだった。そんな彼らにサタンストが勝てるわけもなく、その賭けはオーゼウスの勝ちで終わった。


「確かに、あの時は格好よかったです。『この者たちはお前に敵わないのではなかったのか?』とおっしゃった時、俺はすごくすっきりしたんですよ。いやぁ、さすが主」

「そ、そうか……?」


 普段こんなに褒められることがなかったオーゼウスは照れくさくなって、そわそわする。


「あの時のサタンストの表情は忘れられないわ」


 サタンストは悔しそうな表情で、何も言わぬまま、白の世界を返し、5人を天界へ戻したのち、すぐさま自分の根城に戻ったのだ。


「そういえば、これからオーゼウス様何かあるのですか? 空けていろと言われましたので、そのようにしたのですが……」

「さすが、ミカエラ!」


 そのまま、嬉しそうに立ち上がり、どこかへ行ってしまおうとするオーゼウスをミカエラは慌てて引き止める。


「待ってください、どこに行くのです?」

「どこって――」


 ミカエラは何かを察した。そして、怒りが湧き上がってきた。


「下界に賭けをしに行くのだ」




「……い、いい加減にしてください!!!」




 オーゼウス、好きな事は賭け。趣味も賭けである。そして、世界の創造神だ。






〈完〉




ありがとうございました<(_ _)>


なんだか、なんだか……。

まあ、終わったので良しとしましょう。

3連休連続投稿企画、これにて終了です。

これからは今書いている2つの連載をちゃんと書きたいと思います。

時間を見つけられたら書きます……。


それでは、また別の作品でお会いできることを願っております。

2014/11 秋桜(あきざくら)(くう)

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