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革命軍、その支柱との戦い

「おおおおおお!」


 アレスが大剣を背負い、真っ直ぐに突っ込んでくる。一見すきだらけに見えるその動きは、息子のカンディスの回り込みと娘のイオシスの火炎魔法で、磐石なフォーメーションをなしている。アレスに対抗しようとすれば即座に横槍を食らうだろう。

 突撃型に無理に付き合う必要もない。慎一はそう判断し、後ろに思い切り下がる。ついでにライフルをアレスに、ショットガンをカンディスにむけて撃ち、牽制しておく。


「そこ!」


 そこに予想通り、イオシスの追撃が入る。バレーボール大の火の玉が三つ向かってくる。速度はあるものの誘導はされていないようで、弾道は実に素直であった。

 下がる方向を真後ろから斜め後ろに変える。回避行動としては大きすぎにも見えたが、火球が先ほどまで慎一がいた場所で爆発したことから、適切であったようだ。


 下がったことで、三人をしっかり視界に収めることができる。彼らは次の行動に入ろうとしていた。ので、散弾で嫌がらせをしておく。当たり方のせいでかすり傷がせいぜいであろうが、行動の妨害には当たりやすい拡散弾は逆に合っていた。

顔をかする弾丸に動きは鈍り、躊躇が生まれる。カンディスだけは範囲から逃れるかたちでよけていたので影響はなかったが、後衛のイオシスのは魔法を中断させられ後退しようとしていた。

 彼女を追うようにして、今度は慎一が突っ込んでくる。機先を制されたことで動揺した三人だが、それでも慎一を止めるべく、イオシスに攻撃させないように動く。アレスが娘を守るべくその体で立ちふさがり、大剣の横っ面を振りぬいた。その後背には一瞬ではあったがイオシスが後退をやめたのが見えた。


 このまま無理に行ったところでアレスには力負けする可能性もあるし、少なくとも速度は落とさなければならない。さもなくばさっきと同じく跳躍して飛び越すのだが、そのときは直下に控えた魔法使いから炎魔法を至近から食らう事態になるだけだ。


 というわけで慎一は止まることにした。敵の目の前で完全停止するという暴挙にアレスも驚くが、剣の勢いは止めず力をこめて振りぬく。右手のライフルを盾にし自分から吹き飛ぶ方向に飛ぶことによって、威力を極限まで落とす。尋常でない力は慎一の右腕と胴体にかかり、トラックにぶつかったのではないかと錯覚しそうな圧力で、横に飛んでいった。


「ゴホッ!」


 だが苦悶の声を上げたのは、攻撃を当てたはずのアレスだ。対照的に慎一は地面を滑って難なく停止する。痺れなどもなく、戦闘にまったく支障はなかった。


「父さん!?」


 カンディスが見れば、父のわき腹が赤く染まっていた。先ほどの一瞬の攻防、慎一は飛ばされる直前にフリーの左手のショットガン、これを密着状態からねじ込みまんまと負傷させたのだ。


「心配、するな!」


 そう告げるアレスの声は力はあるもののまるで振り絞っているようで、よく見れば額に汗が浮かんでいるのが分かる。ゼロ距離からのショットガンは彼の皮膚をたやすく貫き、一部は内臓にまで達していた。当然魔法によって強化は施していたのだが、慎一の銃はそれがあっても深手を与えられるだけの威力を持っていた。現にアレスはわき腹の激痛にさいなまれ、立っていられるのが不思議なぐらいである。


(まずは一人、殺さないまでも傷は与えた)


 だからといって慎一も攻撃の手を休めるわけには行かない。周囲では一定の距離を保ちながら騎士団も農民兵の掃討戦に入っており、この流れで決着をつけたいところである。そもそもアレスたちの殺害が仕事である以上、残る二人に銃口が向けられるのは想定どおりだった。


「くっ」


 カンディスを狙ったライフル弾はまたしてもギリギリでかわされる。動揺からラフ撃ちでもいけると踏んだのだが、予想が外れたことで相手の精神面が思っていた以上であると認識する。

 カンディスは回避で姿勢を崩しながらも、慎一に向かってくる。直線ではなくジグザグに、時にバック移動すら交えた不規則な動きは、なるほど狙いにくかった。ライフルは単発武器であり弾をばら撒ける面制圧能力はない。

 それならばと散弾銃で狙うが、今度は別のところから慎一のものではない散弾が飛んできた。

 正体はイオシスが放った即席の拡散型火炎魔法だった。ちらと見た彼女の顔はまさにしてやったりと言いたげであった。ステップでよけるがあいにく範囲が広く一発が目の前で爆発する。熱と爆発はたいしたことないが視界がふさがれる。速さに優れる相手には十分すぎる隙であった。


「ああああああ!」


 逆袈裟に振りぬかれた一撃は、慎一の中でも最速でありよけることはかなわない。とっさの判断で腕で体をかばい、そのうえから即席の魔法障壁を張る。

 それでもカンディスの剣は止まらず、慎一の左腕の肉を裂き骨に到達した。だが体を二分するはずだった剣はそこでとめられる。カンディスは覚えのある一瞬前に切ったばかりの感触に驚き、目の前の敵の正気を疑った。肉を割り骨に当たったことでわずかに勢いの衰えた剣、その瞬間を狙ってむき出しになった白骨の表面に新たに魔法障壁を何重にして張りなおしたのだ。


 痛みに顔を歪めながら慎一は冷静な判断はできた。両手の武器を解除、驚愕のあまり硬直したカンディスの鳩尾にこぶしを叩き込む。メリといやな音がして、カンディスは体が固まったのを感じた。剣を手放し後ろに倒れる。

 イオシスはもつれ合う二人に援護ができない。ここでこの剣士殺しておくべきだと考えた。左腕の傷を気にせず倒れこんだカンディスに馬乗りとなって右手にブレード発振器を召喚する。起き上がろうとするカンディスより早く、頭を両断した。あたりが瞬く間に血の海と化す。


「貴様あ!」


 息子を眼前で殺されたことに激昂したアレスが痛みも忘れて飛び込んでくる。鬼気迫るその表情は、なんとしても殺さんという意思が見て取れた。

 馬乗りの状態から、まして片腕に重傷を負った今、大きく回避するのは難しかった。なので慎一は自分の下に敷かれていた死体、ついさっき殺した頭上半分を失ったカンディスを即席の盾にした。

 それを見たアレスは地を蹴り無理やり突進の方向を変える。息子を殺され、その上その亡骸を道具のごとく利用されたとあって、彼の感情は溶岩となってあふれていた。しかし自分から息子を切るわけにも行かず、すんでのところで慎一とはすれ違いざまに交わし、慎一はそのときを狙ってあらかじめ変えておいた散弾銃を再びゼロ距離で放った。銃弾は目論見どおり腹部に着弾して、アレスの腹部の銃創をさらにグズグズにした。


「がっ」


 どうにも間の抜けた声とともにアレスの巨体が倒れる。死にこそしなかったものの腹の傷は完全に内臓を破壊し、いつ死んでもおかしくない状態だ。目の焦点が合っておらず、完全に意識を失っているのがうかがえる。


「せめて私が!」


 近接状態の攻防でまるで手が出せなかったイオシスが、最後の悪あがきといわんばかりに魔法の準備に入る。しかし前衛のいない後衛は崩しやすい。地面を蹴り一気に接近する。目標は突然のことに対応できないず、勢いそのまま肘うちで胸をしたたかに打ち付ける。


「きゃあ!?」


 イオシスは地面に後頭部を強く打ち付けてしまい、なんとか起き上がろうとするも果たせず、意識を失った。

 慎一がそれを確認すると、今まで遠巻きに見ていた騎士たちがイオシスとアレスを捕縛する。死体となったカンディスも回収するようで、いつの間にか荷車とズタ袋も用意されていた。三人はこの先、生き死ににかかわらずろくな目にあわないだろうことを知りながらも、慎一は何もせず騎士団に任せた。見れば革命軍の代表であったアルギスも縄で縛られており、反乱が失敗に終わったのだということが理解できた。

 こうしてアンジール革命軍の中核人物はこの戦いで、全員捕縛あるいは戦死という結果に終わった。




 

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