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宇宙を救え!高校生!!  作者: 葦藻浮
第1章 高校生起動する
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第6話 敵、現る!

 ズリュ・・・・・ズリュ・・・・・・・・・・・・


 底の見えない、暗く深い闇の中で、何かが蠢く音だけが聞こえる。

 一体、二体、いや、もっと数多くの得体のしれない何かが、この深淵の闇の中にはいた。


 パチン!


 どこからか乾いた音が響くと、突然、闇の中に小さな明かりが灯る。


 ほんの一瞬だが、その小さな明かりに照らされて、闇の中の何かが姿を映し出された。


 それは、空中に浮遊する、無数の黒い玉の様な物たち? であった。

 玉、といっても硬質な感じではなく、まるで、黒い煙が凝縮して実体化したような、エッジのはっきりしない物たちだった。

 ひょっとすると物体ではなく、ただ空間に穴が開いているだけなのかもしれない。


 ギュルルルルルルルルルルルー・・・・・・


 灯った、小さな光を避ける様に、黒い玉たちは渦を巻くと、あっという間にどこかに消えてしまった。


 ほんの小さな、豆粒ほどの光であったが、暗闇に潜む者たちにとっては、とても眩しく感じられたのかもしれない。


「マスター。少々明るすぎるのでは」

 不意に暗闇から声が聞こえる。

 

「マテリアルを持たない闇の者どもが、皆逃げてしまいました」


 僅かな明かりの中、よく目を凝らして見ると、暗闇の中でひざまずき頭を垂れる、黒衣に身を包んだ一人の女の姿が見える。

 さらにその黒衣の女の前には、やはり黒衣に身を包んだ大柄な男が立っていた。


「うむ」


パチン!


 マスターと呼ばれた男が指を鳴らすと、豆粒ほどだった明かりは更に小さくなった。


「これで良いであろう。しかし、この人間の体には、ある程度の光は必要であるぞ」


「ハハッ!」

 黒衣の女は一層深く頭を下げる。


「して、今日はいったい何の報告であるか?」


 マスターと呼ばれた黒衣の男は、面倒くさそうに椅子に座ると、傍らに置いてあるグラスを手に取った。

 そして、中の黒い液体を一口飲むと、目の前にひざまずく女をギロッと睨み付ける。


「ハッ! 実は先ほど光の宇宙、赤経06h 45m 028.951728s、赤緯-126° 42′ 778.0171″、αAX05型太陽系付近の惑星より、光のエネルギー反応の急激な上昇を察知しました」


「αAX05型太陽系・・・・・・・・」

 その太陽系の名を聞いた黒衣の男は、一瞬体が固まったように見えた。


「光の生命体の残存勢力かと思われますが」


「うむ」


 パチン!


 黒衣の男が再び指を鳴らすと、彼らのいる暗黒の空間にポツ、ポツと光の点が現れ始めた。

 やがて光の点は、無数の光の集合体へと姿を変えると、見る見るうちに銀河や星団となって、暗黒の空間を埋め尽くしたのだ。

 今や彼らは、身一つで宇宙空間に浮いている様に見えた。

 

「あの星であるか」

 黒衣の男は、その中の一つ、赤く輝く惑星を指差した。


「ハッ! さようでございます」


 その言葉を聞くと、黒衣の男は、ふいに惑星を差していた指をカクリと折った。


ギュン!


 その瞬間に、総ての星々の光が後方に流れて、彼らはその惑星の間近へと急接近していた。


「うむ。幼い文明が栄えているの」

 黒衣の男は、目を大きく見開いて惑星を観察している。


「ハッ! 恐れながら、以前マスターの手によって滅ぼされた、地球という惑星の子孫たちと存じます」

 黒衣の女は、頭を垂れたままで答える。


 ピクッ・・・男の体が、一瞬痙攣したかのように見えた。


「うむ。そうであったか。光の遺伝子を継ぐ者どもは、皆しぶといようであるな」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 女は、ひざまずいたままで、何も答えなかった。


「芽は、育つ前に摘むのが一番であるな」

 男は、グラスを置くと両手を前に出して、指で円を作る。


 そして、その円に向かってフーッと息を吹きかけた。


 息は、男の口から吐き出されると真っ黒な煙となって、手で作った円の中へと吸い込まれて消えてしまったのだ。


 すると不思議な事に、次にその煙が現れたのは、赤く輝く惑星、つまり僕たちの暮らす火星の目の前の宇宙空間だったのだ。


 男の口から次々と吐き出される黒い煙は、瞬く間に火星の周辺の宇宙空間を埋め尽くして、星々の光を遮った。


 男の口から吐き出された黒い煙は、暗黒エネルギーそのものだったのだ。


「うむ。もう良いであろう」


 そう言って、男が息を吐くのを止めると、火星周辺に大量に送り込まれた暗黒エネルギーはグルグルと渦を巻き始める。

 やがて巨大な渦の塊となった暗黒エネルギーは、まるで台風のように、周囲の小惑星を飲み込みながらゆっくりと前進を始めたのだ。


 僕たちの暮らす火星を目指して。

 

 ガチャン!


 グラスを取ろうと伸ばした男の手は、なぜか上手く掴むことが出来ずに床へと落としてしまった。


「マスター! いかがされましたか?」


「うむ。心配には及ばぬ。この体、こうして時々コントロールが出来なくなる事がある」


「それでは、別の体に移られてはいかがでしょうか? 替えの体はまだいくらでもございますが」


「ふむ。じゃがこの体、有機生命体に関しての膨大な知識を有しておる。多少不便でも良い」

 男が手の平を広げて、再び握ると、床に落ちて割れたグラスは消え、代わりの新しいグラスがその手に握られていた。


「御意!」


 二人を照らしていた僅かな光は、その役割を終えたのを悟ったかのように徐々に小さくなっていくと、やがて消滅してしまった。


ズリュ・・・・・ズリュ・・・・・・・・・・


 何かが蠢く不気味な音だけが聞こえ始めると、再び、ただ一つの光さえも無い、完全な暗黒の世界へと戻っていた。



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