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宇宙を救え!高校生!!  作者: 葦藻浮
第1章 高校生起動する
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第12話 最初の難関

 ファン! ファン! ファン!


 突然、警戒を告げるアラームが鳴り響くと、コントロールセンターの総てが赤一色に染まった。

 方舟はグラグラと大きく、不安定に揺れる。


「キャー!」

 莉子が床に崩れるように座り込むと、両手で頭を抱えた。


「地震か!」

 倒れないように、大きな足でしっかりとふんばって、上半身で波乗りのようにバランスを取ると浩二は短く叫んだ。


「闇の生命体の攻撃が始まったようです」

 ハルは急いで自分の座っていた椅子へと戻ると、目の前にバーチャルパネルを展開し、両手を使って高速で操作を始めた。


「それって、ミサイルか何かで火星が攻撃を受けたってこと?」

 僕は、酷くなる揺れに、とうとう立っていられなくなり四つん這いになった。


「イイエ。直接攻撃はまだです。しかし、火星周辺の暗黒エネルギーの濃度が急激に上昇しています。方舟は光のエネルギーで作られているので、暗黒エネルギー濃度が上がると不安定になるのです。磁石のS極とN極が反発しあうのようなものです」


 ギューン! ギューン! ギューン!


 更に一段大きな音で警報が鳴ると、コントロールセンターの壁一面に巨大なジャガイモに似た歪な形の衛星が映し出された。


「これは・・・・」

 僕は揺れに耐えながら、目を細めてモニターを見つめた。


「火星の衛星フォボスよ」

 少し落ち着きを取り戻した莉子が答える。


「緊急事態が発生しました。衛星フォボスが軌道を離れ、火星に急速落下中です」

 ハルはバネルを操作する手を止めること無く警告を発した。


 その言葉を聞くと、全員が凍りついた様に動けなくなった。


 ジャガイモの形に似たフォボスの直径は、最も長い部分で約25キロメートル。2080年に地球に落下した、直径150メールの隕石とは比較にならないほど巨大なのだ。


「ハル、火星に落下するまでの時間は、後どのくらい有る?」

 僕は我に返ると、僕はバランスを取りながらゆっくり立ち上がりハルに尋ねた。


「現在フォボスは、暗黒エネルギーを推進力として高速で火星に落下中・・・・・・火星表面への到達推定時間は、今から約45分と32秒です」


「えっ! たったそれだけ・・・・。流石にその時間内にミサイルでフォボスを爆破するのは無理・・・・だよね?」

 僕は憮然とした表情で莉子を振り返ると、莉子も肩をすくめて見せた。


「打つ手はなし・・・・と言うことなのか・・・・」

 僕は、両手をギュッと強く握り締めると、血が滲むほど強く唇を噛んだ。


 命を懸けてでも、みんなを助けると決心したというのに。誰も助けられず、何も始まらないままに一歩も踏み出すこと無く終わってしまうのか・・・・・。

ああ、せめてもう少し早く決断していれば・・・・きっとこんな事にならずに済んだのに・・・そう思うと悔しくて仕方なかった。



「マスター。諦めるのはまだ早いです」

 凛としたハルの声が、暗く沈んだ空気を蹴散らす。


「まだ早いって・・・・何か手があるの!」

 僕は思わず身を乗りだすと、熱いまなざしでハルを見つめた。


「ハイ。この方舟のエンジンを始動できれば、方舟に搭載されている兵器『ニュートリノ砲』を使うことができます」

「ニュートリノ砲・・・・それを使えばあのフォボスを破壊することが出来るというの?」

「ハイ。ニュートリノ砲であれば、フォボスは勿論、太陽でさえ消滅することが可能です」

「ヒュー! そんなすげえ武器、ほんとに有るんだ! まるでSF映画みたいじゃん」

 隼人は目を丸めて感嘆の声をあげた。


「わかった! 時間が無い、ハル、早速始動の準備に入ってくれ」

 他に選択の余地はなく、一刻の猶予も無かった。

「ハイ。マスター、これよりエンジン始動モードに移行します。どうぞ皆さん、席に座ってください」

 ハルに促され、一番近くにいた僕がまず席に着くと、その隣に莉子、ひとつ飛ばして隼人、更にひとつ飛ばして浩二が座った。


 全員が席に着いたのを確認してから、新たに現れたパネルにハルが手をかざすと、ハルの周囲の空間から小さな光の粒が出現した。粒は見る見るうちに数を増やし、やがてハルを包み込むような大きな光の球体となった。


まるでハルを守る光のバリヤーのようだ。


「セイフティレベル最大。有機生命体の保護を最優先」

 ハルが指示を出すと、僕達の座っていた椅子がみるみる変形を始めた。


「うわっ! ちょっ、なに!」

 隼人が驚きの声を上げる。

 背もたれは後方に倒れ、座面は前方に移動。両腕が肘掛けの中に沈み込むと、上から椅子全体を包み込むように透明なカバーが覆った。


「なにこれ! 超クールなマッサージチェアみたいじゃん」

 そんなことをこのタイミングで連想できる、隼人のテンションにはとてもついて行けない・・・・・・。


「リミッター解除。モード、オールブルー」

 赤一色だったコントロールセンターが、ハルのその声で、一瞬にして深い海の底にいるような濃いブルーへと変わった。


「皆さん。これからニュートリノエンジンの始動に入ります。始動には皆さんの力が必要です」

 不思議なことに、ハルの声は直接頭のなかに響いてきた。


「それには一体どうすればいいの?」

 同時に、四人の声が混ざって頭のなかで聞こえた。

 考えた事を、喋らずにダイレクトに相手の頭の中へ送り込める仕組みのようだ。


 これは・・・余計なことを考えるのはやめよう・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 みんな同じ考えに至ったのか、暫く無言が続いた後で。

「伝えたいと思った事だけを共有出来ますから、安心してください」

 ハルのその言葉を待っていたかのように。


「よかったー」

 四人の安堵の声が、再び頭のなかでこだました。


「皆さんは、ただ始動しろと強く思って頂くだけで大丈夫です。出来る限り余計なことを考えずに強く思ってください」


「余計なことを考えないのは、隼人には難しいんじゃないかしら」

 ふふん、と笑ったような莉子の声が頭のなかに響いた。


「ひでーな莉子。こう見えても集中力だけはオレ、凄いんだぜ」

 確かに、ゲーム中に見せる隼人の集中力は半端ないのだ。


「分かった。じゃあみんな意識を集中しよう」

 僕のその言葉を合図に、一斉に集中し始める。


「エネルギー充填率30パーセント、40、50、60、70・・・・」

 ハルの読み上げる声にシンクロして、コントロールセンターの室内が濃いブルーから明るいブルーへと変化する。

「80、90、エネルギー充填100パーセント完了。引き続きエンジン始動に向けてのカウントダウンを開始します」


「20、19、18・・・・」


 ギューン! ギューン! ギューン!

不意に、大きな警報音が響いたその直後だった。


 ドーン!


 大気を切り裂く大きな爆音が聞こえると。まるで天地がひっくり返ったかのように方舟が大きく揺れたのである。


「キャー!」


 爆音の余韻に混じって、莉子の悲鳴が頭に響いた。

 だが、体を完璧にホールドしている椅子のおかけで、大きな揺れと爆音に驚きはしたものの、どこにも怪我は無かった。


「ハル。一体何が起きたんだ?」

 揺れと警報音は続いていたが、動揺が収まったところで僕はハルに尋ねた。


「闇の生命体のエネルギー砲によるスポット攻撃を受けました。エンジンの始動に伴い急上昇した光のエネルギーを察知されたのだと思います」


「そんなに近くまで敵がきているのか・・・・火星は大丈夫なのか?」

 コロニーに暮らす家族の事を心配してか、浩二はとても強張った表情だった。


「現在、太陽系周辺には闇の生命体の生体反応はありません。よって、今回のエネルギー砲によるスポット攻撃は遠隔操作による攻撃です」

 それを聞くと浩二は安心したのだろう、ほっとした表情に変わった。


「私たちは無傷みたいだけど、今の攻撃でコロニーにはどの程度の被害が出たのかしら」

「197番コロニーは、ドームの破壊によって壊滅的な被害がでました。コロニー内の住民約25パーセントが死亡。50パーセントに重軽傷者が出ている模様です」


 悲惨な現実を目の当たりにして、誰も言葉が出なかった。


「落胆している時間は有りません。皆さん、引き続き意識を集中してください。攻撃の第二波が来る前にエンジンを始動します。私たちがここからいなくなれば、火星が攻撃される心配は有りませんから」


 ハルの言葉に励まされて、改めて意識を集中する。


「カウントダウンを再開します。17、16・・・・・・・・・10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0! ニュートリノエンジン始動!」


 カウントダウンの最後は全員で数えた。


 部屋の中央にある球体の一点から現れた光が、ぐんぐん広がってやがて目を開けていられないほどの光へと成長すると、コントロールセンター内の総てが白い光の世界へと変わった。


 キューン・・・ 


 モーターの回転音に似た甲高い緻密な音が聞こえると、今まで続いていた揺れはピタリと治まって、代わりに僕たちが過去に体験したことの無い、上から下へ押しつぶされるような強烈な重力と耳の痛みを感じた。


「ぐわっ・・・・・・」

 苦しそうな隼人の声が聞こえる。


「エンジン出力50パーセント。火星上空の宇宙に向かって上昇中・・・・・」


 フォン! 


 柔らかな音が船内に響く。、

「現在の高度は1万キロメートル。フォボスの真上に到達しました」


 驚いたことに、ハルの説明が終わるまでのほんの数秒の間に、僕らは高度1万キロメートル上空まで達していたのだ。そして、耳の痛みが取れると同時に、体はフワッとが軽くなっていた。


「見て!」


 莉子の声に促されるように周囲を見回すと、コントロールセンター内の壁一面に、まるで壁が透明になったかのように、周囲の宇宙空間が映しだされていた。

 足もとには、火星とフォボス。上空にはもうひとつの火星の衛星ダイモスが、太陽の光を受けて鈍い光を放っていた。さらに、その背景に広がる広大な宇宙には、瞬きをしない数多の星々が煌々と輝いていたのだ。

 火星のコロニーの天井に映し出された人工の星空とは比べようも無いほど、深淵なる宇宙空間に存在する星々の輝きは美しかった。


「ぱねえ! ゲーム用のモニターに欲しいぜ!」

 隼人の感動のポイントが、モニターのクオリティだったのはとても残念だったが・・・。



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