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ケース8 現れたるは黒禍

ちょい短いけどね




ビリビリビリビリ



魁人の見たこともないような焦った表情、そしてウズメの動揺。そして洞窟の奥から漂ってくるいやーな雰囲気



「くそったれが、もうか?!」


「だから何がどうなってるのかちゃんと説明してください!!」


「待って……この外人外がここに入ってちょうど今で1週間……!!」


「そういうことだウズメ、早くずらかるぞ! 悪いが式神使って黒天狗に連絡してくれ、快速便でだ!」



ウズメは頭につけていたカラスの羽を宙に浮かせ、式神を呼び出す。それを一目散洞窟の出口へ向けて飛ばした



「飛ばしました! 到着までおよそ2分43秒!」


「上々だ!」


「だーかーらー……」



そのときミナは感じ取った。地下空洞全体が少し小刻みに揺れている。心の底から恐ろしいことが、今から始まるかもしれないと



「だぁあクソ、おいヴィーヴル! 一回出してやるからてめぇも走れ! さすがにボクタイみたいに悠長に檻引っ張ってる暇はねぇ!!」



魁人が指を鳴らすと水の檻が一瞬にしてはじけた。あれほど苦労して出した水の檻を簡単に解いてしまう、それほど切羽詰っているのか



『なによ、なにかあった…の……』


「あ、もう来おった」




若干諦めたような口調で魁人が呟く。洞窟の奥、謎の影がこちらに向かってくる。よくよく目を凝らすと、それは人型だった。


巨大な洞窟のほぼ全てを覆いつくすほどの大きさ、全身がおぞましく蠢くドブ川を固形化したようなもので覆われており、かなり離れているはずなのに体の震えが止まらない。



かつてこの地に封印された、無念のうちに命を絶たれた人外の怨念の塊。怨念入道である



『おぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉおおぉ!!!!!』



一気に恐怖が蔓延する雄たけびを上げた怨念入道。やるべきことは一つ



『「「「逃げろぉぉぉぉーーーー!!」」」』



LOADING…  カリカリカリカリ




エネミー   怨念入道




「逃げろ! もう紅青龍出してる暇もないしあのデカさじゃ蒼朱雀もハナクソみたいなもんだ! ともかく結界張ってある外まで走れぇ!!」


「いやぁぁぁぁぁ!!」


「ひぃぃぃいい!!」




巨大な負の感情の塊は、周りの洞窟の壁を削りながらこちらに這い寄るように迫ってくる。邪魔な鍾乳洞をブチ砕きながら、時々おどろおどろしい声で鳴くたびに洞窟の天井から落石が発生、魁人達の邪魔をする



「クソッ、なんて大きい邪念だ…こんだけ離れてても脳内に響いてきやがる」


「耳栓持ってくればよかったです…」


「アホか、あれは俺たちの脳内に直接響く怨念の声、普通の耳栓じゃ意味ねぇ……一般人だったら聞いただけで発狂するか死んでるかしてるだろうな」


『勝手に上がりこんで棲もうとしてごめんなさいだから助けてぇぇぇぇぇ!!!』



ヴィーヴルですらこのザマである。





ズデン! ドジャァ



「ぅあっ!?」



 ウズメが落ちてきた岩に足をとられ、転倒する。これは俗に言う大ピンチだ。例えて言うなら時間制限つきのボスでもうあと1分もないような状態



「「ウズメ (ちゃん)!」」



 ストップしてウズメに駆け寄るミナと魁人。足をひねったのか、足首が若干晴れている。これではもう走ることはかなわないだろう



「…っつ……足挫いたみたい…」


『ッ……あぁーーもう! しょうがないわね!』



 次の瞬間ヴィーヴルは全身が炎に包まれた巨大な竜へと姿を変えた。その炎の光で洞窟の壁が照らし出される



『「うげ…」』


 

 洞窟の壁には大量の人外やそれ以外の骨や髑髏が露出していた。物言わぬ髑髏の群れは虚空を見つめている



『アタシが食い止めるから早く逃げなさい!』


「貴様はどうするんだ?!」



魁人が問う



『…さっきまで格好悪かったんだし、せめて最後くらい格好良くいさせなさいよ』


「ふざけないでください! 私たちには貴方を連れ帰ってちゃんと裁きを下すという使命があるんです! どうしても残るっていうんなら、私も残ります! 来て! 式神・陰蝙蝠カゲコウモリ!」



 ミナが口笛を吹くと洞窟中の影が少しずつ切り取られ、小さな蝙蝠の姿を成す。あっという間にその数は数え切れないほどになり、ミナの力の大きさを物語る。辺りの影に干渉、式神として操る術をミナは身に着けていた。




「お前いつの間にこんなモン覚えてたんだ」


「私だっていつも怖がってばかりじゃないんですもん……」


「………よくやったな、ミナ。上出来だ」



 魁人の口から褒め言葉が出た。3人は愕然とする。訝しんだのか魁人は怪訝そうな表情をする



「なにハトが散弾銃喰らったようなツラしてんだ。さて、今回の容疑者放り出して逃げるわけにもいかんし、俺も善戦しようかね」


「わ、私も……」



 魁人がニヤリと笑いながら袖の下から大量の爆導符をとりだす。ウズメが膝立ちになりながらも団扇を取り出す。ドs人間、嫉妬深い龍、臆病な吸血鬼、恋する天狗。なんとも異色な一時共闘メンバーである




『「「行くぞ!!」」』





『おぉおおぉぉぉっぉぉぉおおおぉおぉおおおおぉおぉ!!!!』



ビリビリビリビリビリ


『「「やっぱり怖いいぃぃい!!」」』


「さっきまでの格好いい展開でアツくなった心を返せ!!」


『あぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁっぁああ!!』



『「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」』



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