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ケース6 快晴、河にて、ケンカ中







「ウケケケケ! この辺のキュウリは全部俺様のものだーー! ヒャッハー!」



 数日後、川べりでなんか叫んでる河童がいた。近所迷惑なのと、人外が世に知られるのはまずいので早々にご退去させてこいという爺に押し付けられた仕事だ



「おい、この辺のきゅうり畑は土地開発で遠くのほうへ引っ越したぞ」


「なぁーーーーーーにぃ?! 俺様やっちまったなぁ?!」


「河童は黙って! 川へ帰れ!」


「うわらば?!」ゲフゥ



なんだこの流れ。



「罵倒したくらいで吐血した…」



 血反吐吐き散らしてぴくぴくしている河童を見やりながらミナはあきれていた



「まぁ今回は未遂で終わったが、何かしでかしたら刻んでバラバラ河童の川流れしてやるからな」



 錫杖をキラリと輝かせながら俺は注意 (という名の恐喝)を促す。ちなみにこの錫杖は金属部分はペーパーナイフほどの切れ味だが、人外に対しては日本刀レベルまで切れ味が上がる加工がしてあり、人外専用の武器なのだ



「しーましぇん」ガクブル




~~~~~~~~~~~~~~~~




 ミナが仮入社して数日が経った。ミナもそれなりに仕事を覚え、書類仕事くらいは押し付けられるようになってきた。意欲があるのか、乾いたスポンジのごとく仕事を覚えていくミナ。


 上司としては嬉しいが、逆に上手くいきすぎて不安になるのは魁人が小心者だからだろうか




「思ったより早く終わったな……現在午後1時半、か。時間空いたしどうしようか…」


「あ、どこか影ないですか? 日差しが強くなってきてますし、日焼け止め塗っとかないと溶けちゃいそう」


「そのまま溶けちまえ」


「この鬼!(以下省略)」


「……木陰くらいしかないな」


『はい、これで、どう』


「あ、ありがとうございますってきゃぁぁぁぁぁーーーー?!」



 すぅ、という音(というか雰囲気的な、少なくとも音ではない)とともに姿を現したのは有名どころであるぬりかべである。全身灰色の大きな壁に申し訳程度の目、短い手足がついている。


いつも魁人は思う、こいつどうやって喋ってんだ?



「おぉ、ぬりかべ! 久しぶりだな!」


『うん、久し、ぶり。4年、ぶりくら、い』


「こ、これが鉄壁のステルスウォール……ジャパニーズヌリカベ…」


「鉄壁というか泥壁だけどな。キャラ薄いからって厨2病設定付け加えるな。あと早く日焼け止め塗ってしまえ」


「ふえぇ……ぬりかべさん、こいつがいじめるよぉ~」


『イジメ、よくな、い』


「可愛い子ぶんな、幼女じゃあるまいし。あ、体型以外はな。幼女と同じなのは寸胴体型だけだろ」


「おい、ぶち殺すぞ?」


「いいだろう歯ァ喰いしばれ」


『…………………夫婦、漫才?』


「「違う!!」」



どう見てもフラグです本当にありがとうございました








『最近、外人外、多い。度々、喧嘩、なる。どうにか、ならない?』


「んあぁ……俺らもなんとかしたいんだがなぁ……罰則とかは設けてあるが、お前らにとってはザル同然だもんなぁ…」


『黒天狗様も、手を焼いてるやつ、いる。そいつだけでも、なんとか』


「ほう? 詳しく聞かせてもらおう」



 河原の大きめの石に腰かける。ぬりかべが座ろうとしてバランスを崩して、後ろに倒れた。それを起こすのに数十分はかかったのは悶話休題






『大きい地下空洞、ある。そこに、外人外、無許可で、入ってきた。統治してた黒天狗様、怒った。相手、聞く耳なし。一触即、発状態』


「な、なんだかすごいことになってたんですね……」


「なるほど、地下空洞に閉じ込めといたはずのバ河童が外に出てきたのもその所為か。そいつが無理矢理結界破って入ったんだろうな。んでその穴からバ河童がでてきた、と」


「あのカッパ伏線だったんですか?!」


「メタるな。ともかく、まだ戦いにはなっていないんだな?」


『うん。だから、よかった』


「仕方ねぇ、今日は残業覚悟だな……怪獣王のDVDBOXは明日見るか。ミナ、ジジイに連絡入れといてくれ」


「了解です♪」





 ざわぁ…と、どことなく不吉な音を立てて揺れる木々。俺たちは先ほどの川を遡ったところの森に入っていた。薄暗く、今にも妖怪の類が襲い掛かってきそうな雰囲気である



「っ! あーもう! 蚊が鬱陶しい!」


「吸血鬼が吸血されてちゃ世話ねーな。おら、携帯ノーマットだ」


「最初から渡しといてくださいよ!!」


「だってそれだとお前の面白いとこが見れねェじゃないか」


「この鬼! 鬼畜! 鬼畜生!」



 ぬりかべとは少し前に別れた。あの図体で狭い木々の間を通り抜けるのは無理だろう。木々の間に挟まって動けなくなったときのぬりかべの切なそうな目はおそらく、一生忘れることはできないだろう



「まだ着かないんですかー? てかどこへ向かってるんですか?」



 ミナが泣き言を言いながら魁人の背中に問いかけたとき、急に魁人は歩を止めた。必然的に、ぶつかるミナ。ミナの鼻腔をいい匂いがくすぐる。ちょっとドキッっとしたミナ



「あぶっ! ……急に止まらないでくださいよ! なんですかもう…」


「……………居る」


「へ?」


「見られてる。ヴァジュラ出してろ」



 ミナが急いでヴァジュラを取り出した瞬間どこからか現れた何かが、凄まじい速さで魁人に迫り、攻撃した




ザウッ!!    ガッ!!




「ッ?!」


「やはり貴方か、黒天狗教官」


『ほう、ワシの初撃を受け止められるほどになったか、わが弟子よ』



 魁人が何者かの拳を手で受け止めていた。ぎりぎりと魁人が満身の力を込めて拳を受けてとめているに対して、その影は余裕の表情だ


 そこには真っ黒な天狗が居た。姿は皆さんが想像する天狗とそう変わらないが、そこに居るのはすべてが漆黒、そして羽が全部で3枚ある。黒い翼を翻し、距離を置く天狗



『バカ弟子が! 陰陽道に通ずるものであれば、人外の襲撃に備え一時たりとも気を抜くでないわ!!』


「このノリは……」


「はぁ……ミナ、手出しすんじゃねぇぞ」


「わかってます、てか出せませんよ…」



 コキコキと肩を鳴らし、構えを取る魁人。次の瞬間、凄まじい速さで組み手を始めた魁人と黒い天狗。ミナすら目で追うのが困難なほど早い



『行くぞ魁人ォ!!』


「はい、教官!!」


『黒天流体術はぁ!』ガッ


「六欲天すら凌駕する!」ヒュバッ ガギ!


『剛派拳裂!』ガガガガガガ


「百鬼繚乱!」ガガガガガガ


『「その目に、心に! 魂に刻め! 宵闇の羽が空に舞うぅ!!!!」』ドバァァァァーーーン!!




「く、黒く燃えてます……」ゴクリ




組み手が終わり、互いに礼をしてひと段落ついたところで自己紹介に入った



『ふぁっはっはっはっは!! 驚かせてすまんな、少女! ワシはこのカモメ森を統治しておる天狗、鴎森カモメモリ森長モリオサ・黒天狗じゃ!』


「出会い頭にあれやるのやめません? 無駄に疲れるんですよ」



 ムダに疲れる程度で済んでいる方がおかしい。先ほどの組手だが、一撃一撃決まるたび辺りに衝撃波が生まれ、二人を中心にして木の葉がざわめきっぱなしだった。



「(魁人が敬語になってる……きっと偉い人なんだ)」


『そうじゃな、かつて魁人に体術や戦い方、陰陽術式を教えたのはワシじゃからな。傲岸不遜の陰陽師でまかり通っている魁人が唯一頭の上がらぬ相手でもある』


「自分で言わないでください。まぁ否定はしませんが」


「え?」



 この黒天狗の反応、まるでミナの心を読んだかのような反応。実際、心を読んだのだ。天狗は神通力を操る。長い間山の中で修行するうち身につけた人ならざる力だ。



「教官、初対面の相手に神通力はマナー違反でしょう。最近規制しようって動きもありますから。土足で他人の心に押し入る無礼者めって」


『ヌハハハハ!! …………そうなの?』


「お前も気をつけろ、ちょっと気を抜くと心読まれるからな」


「(やっぱ怖えぇ……)」


「人外ばっかなんだ、常識なんざその辺に捨て置いとけ」



 黒天狗について森を歩きながら世間話をする3人。魁人の話によれば、こういう霊的な場所に人間が入り込むと非常に面倒なことになる。なので森の奥に進むには結界の抜け目を通れる管理者、つまりは天狗に同行してもらう必要があるのだ



『娘もヌシに会いたがっておった。せっかくここまで来たのだ、ワシの家に寄って行け』


「丁度訪ねようと思ってたところですよ。ぬりかべから依頼がありましてね」


『ぬぅ…あの件か。そろそろそちらに使いを出そうかと思っておったところじゃ、都合がよい』


「ええ。詳細は教官の家でということで」


『とまれ、ここからはぐぞ。ぬぅん……はぁっ!』



 黒天狗が腰につけていたヤツデの葉のような団扇を取り出し、一振りする。すると目も開けていられないほどの風が当たりに吹き荒び、次の瞬間に3人はその場から消えていた




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