ケース5,5 人の業
翌日。魁人とミナは昨日の夜化け猫と戦った場所に来ていた。魁人の手には花束が抱えられ、ミナの手には猫缶等が入った袋が握られている。
「なんでまたここに来たんですか? 化け猫騒動は終わったはずじゃ……」
「……化け猫ってのはな。人間に捨てられた猫や、保健所や品種改良で不必要と判断され、処分された猫の怨念の塊なんだ」
魁人は悲しそうに告げた。普段あまり表情の変化が見られない魁人。彼の目に涙が浮かんでいた。言葉が出なくなってしまうミナ。
「……」
「勝手な話だよな。愛でるために飼って、飽きたら捨てる。増えちゃったから捨てる、必要なくなったから捨てる。そんな不条理のせいで、こいつらは無理やり生まれたんだ。救われなさすぎる。これも、人間の業なんだ。
悪霊を鎮めるにはその無念と向き合い、その無念を緩和してやることだ」
化け猫が倒れていた場所に献花する。袴が汚れるのも構わず地面に正座し、手を合わせ、そして霊魂を鎮める言葉を紡ぎ始めた。ミナもそれに倣う。言葉を紡ぎ終わった時、魁人はぼそりといった。
「すまなかった」
人外を統率、管理、時には駆逐する。そのたった3つの仕事がどれだけ重いことか。表の人間はそんなことも知らず、今日ものうのうと生きている
魁人は人外を駆逐した後、涙を流す。人の業で創られてしまった怨念が、次こそは救われるように祈りながら
「行きましょう。私も、背負います」
確固たる決意を持ってミナは魁人に言う。魁人は何も言わず頷いた。そしてミナの頭をワシャワシャとなでる
「わ、わ、なにをするの?!」
「強いな、ミナは」
シメ、ということで短いです。