ケース2 人外事情
こんちゃ、俺魁人。
あー第2話だってよ。今回はアレがアレしてアレになって………
あーーー!!メンドくせぇ!! 詳しくは本編読め!!
数十分後、人外一人 (?)と異能者一人は町の中心にほど近い豪邸に来ていた。シシオドシがカコン、といい音を立てる。しっかり剪定された日本庭園、池で泳いでいる鯉。まごうことなき豪邸である
「デカ……」
「あ、やべ……炊飯器のスイッチ入れてなかったかも………」
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客間。
「我が家なう。連れて来てしまった。どーしよ……まぁスイッチ入れてあったからよかったが」
「これがジャパニーズ畳……家全体がいい香り…」
畳に寝っころがってごろごろしている吸血鬼ミナ。どうしたものか。別にやましいことをするわけでもないので、というかする気もないが、正直面倒くさい。出来るだけ早いとこ退去してほしいものだ
「んで? 具体的にお前は何を求めてこの日本に来た? 答えろ。そして大事なことだが、手洗いうがいはしておけ」
「いーじゃん別に、手洗いぐらい。こっち来た理由は旅行だよ。スシーとテンプーラとスキャキーとか食べたいと思ってきました。
吸血鬼って言うけどはっきり言って人間とそんなに変わんないんだよね。最近は吸血鬼も進化してるっていうの? 人が都合よく解釈を捻じ曲げていってる影響かな。吸血というか血は吸わないと体裁を保てないけど」
外人外らしいカタコトの日本語。普段の会話はものすごく流暢なのに、不思議である
本棚の漫画を勝手に取り出し、机の上の煎餅を勝手に喰い始めるミナ。礼節を叩きこんでやる必要がありそうだ。俺は間違ったものを家に入れてしまったのかもしれない。
というより、人外を駆逐する機関の人間の家に人外を入れる時点でアレなのだが
「俺のうちの家具が汚れるだろうがとっとと洗ってこい。まぁ最近のは日光浴びたりしても平気なのが多いし、体の中に犬とか飼ってたり、吸血鬼とか言いながら好物がミスドだったりするからな。
地方の神様が伝聞されていくうち姿が変わったりするパターンみたいな感じか?」
「うん、多分そんな感じ。それにしても時代の流れって凄いよねー、昔じゃ完全な動く死体でゾンビとそんなに変わらなかったのに。バ○オ・ハザードとどこで差が付いたんだろ」
「差がついた、って言い方はちと違うような気がするな。ブラム・ストーカーの方がバ○オより先だろう? 仕方ない、人間のご都合主義という名の妄想はとどまるところを知らないからな。
んで、貴様はどこまで人間と変わらないんだ? それによっては対応を変えなくちゃならん」
「ほとんど変わんない。日焼け止め塗ってれば日差しも何とか耐えられるし、たま~に血吸わないとへにょへにょになるくらいかな。その分怪力はないし、使える魔術も弱いし。
あ、ニンニク抜きカルボナーラ程度なら食べられるよ」
「それ、もはやカルボナーラとして成立してねぇな」
伝言ゲームをやったことがあるだろうか? 一列に並び、最初の人が言った言葉を後ろの人へ後ろの人へと伝えていくゲーム。たった10人の列でも、最初の言葉と最後の言葉の意味が大きく食い違うことは多々ある
神話や妖怪の逸話などもまた然り、伝えられるうちどんどん人外がおぞましい姿になったり、美しい美女や美男子になったり、そこにまた人の創造が混じったり。そうすることで人外は人間の影響を受け、姿を変え今まで存在してきたのだろう
人外や神などは人間の信仰心などに影響を受けやすく、気が付けばそういう風に体が変化し、適応していたというのが最近の人外環境事情だ
現代人外恐るべし。というかご都合主義乙と言いたくなる。今から数百年後、人外が絡む物語はどう変化するのだろうか。もう人間は絶滅して吸血鬼による群雄割拠の時代、みたいな物語でもできそうだ
「ふむ。さてどうすっか……よし、明日になったら出かけるぞ。あ、日付は変わってるから今日か。まぁどうでもいいな」
「何しに?」
「入国手続き。貴様ら化け物専用の、な。今日はもう眠れ。ほとんど人間ならば夜にも眠れるのだろう。というか俺が眠いから寝るんだけど。あ、風呂沸かさなきゃ」
「うん、どっちでもいけるよ。あたし一番風呂ね」
「図々しいなテメェは。まぁいい、それだけ聞ければ十分だ。こっちへ来い。客間を貸してやる。布団の敷き方も教えておいてやる」
「おそw…」
襲わないでよ、と言い終わる前に釘を刺される
「間違っても貴様で欲情はせんから安心しろ。俺は快適な広いエアコン付の部屋で寝るしな。自意識過剰乙プギャー」
「……あぁぁぁぁぁ腹立つぅぅぅ!!」
無表情のまま、特大の釘を打ち込まれた。五寸釘ってレベルじゃないほどの。今夜は満月が綺麗だ。赤い月が町を照らしていた
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時刻は午後2時ごろ、二人は町の中心から少しずれたところにある大きめの神社に来ていた。日差しが強くなってきているので吸血鬼は日焼け止めを塗り、帽子とサングラスを装備している。昼行性吸血鬼の必須アイテムだ
昼行性吸血鬼というのもかなり矛盾しているが
「ここだ」
「古びた建物……なんていうの?」
「神社だ。神を祀っている施設、外国で言う教会や神殿みたいなもんだ。こっちへ来い」
神社の敷地内の隅っこのほうに小さな建物のようなものがある。社、というらしい。普通ならここも神様の寝床のようなものらしいが、ここはどうやら違うらしかった。
薄暗がりな上、目立たないところにあるので言われるまで気がつかなかった。人が二人、入れるか入れないかという大きさ。
「あ!! あーぁあ、賽銭箱にカビ生えてるじゃねェか……あとで用務員さんに伝えとかにゃ……まぁ入れ」
「なに? ここで私をひん剥いて…」
「タイムカードどこいったっけ……あぁ、あったあった」
モソモソと奇妙な服の袖の中を探る神浄。ちょっとしたボケもスルー。まぁ突っ込んだところで不毛なことこの上ないのだろうが
「……ちょっとは突っ込んでくれてもいいんじゃない?」
「突っ込むとか……ねーわ」
「そっち?!」
ボケ返された。面倒くさがりの割にはノリがいい。魁人が紐を揺らして鈴を鳴らす。と、社の中が薄ぼんやりと光りだした
『おかえりー♪』
「きゃぁぁぁ?! しゃべったぁぁぁぁぁぁ?!」
社の中の祭壇に飾ってあった小さな狐の置物が急に喋った。薄暗がりの中、若干目の部分が赤色に光っている。どこぞの隣の人外でもあったが、こういう狐の置物は置いてある場所補正もあるせいか、少し怖い
「やかましいぞバカ。ただいま、送ってくれ。これ土産だ。上物だぞ?」
『まいどー♪ いつもどーもね♪ タイムカードちゃんと入れてねー♪』
油揚げを祭壇の上の皿の上に置く神浄。次の瞬間ミナと神浄はどこかに飛ばされていた。
次の瞬間目の前に広がっていたのは、大げさな旅館のようなところでした。がやがやとやかましい。人間の言葉や、人間では理解できない謎の音、挙句の果てに爆発音や悲鳴すら聞こえる
「おい、神無月! 今度妖怪と戦うときは封鎖結界張るのを忘れるな、あのままだと一般人にばれる。おい、師走! このフォーンの入国ビザ調べろ、パックが偽装してるかもしれねぇ。
おい誰か、このショゴスに形を教えてやれ。床がベトベトになる」
来るやいなや他の職員らしき人たちに向かって注意を促す神浄。注意された職員たちも納得して動いているように見える。かなり信頼されているようだ
「……やり手なのね。同僚とか言ってたのはこういうことか」
「やり手かどうかは知らん。そういう判断を下すのはあくまで他人だからな。同僚についてはそういうことだ」
ミナは魁人に連れられて受付のようなところに来ていた。受付嬢はとても綺麗なお姉さんだ。何となく神秘的な雰囲気を放っている。おそらくこの人も人外なのだろう
「入国手続きをしに来た、こいつだ。カテゴリー・現代風吸血鬼……あと聞かれたとこに答えたり、書き物いろいろ書いたりしとけ。あとは案内してくれる。俺は仕事へ行ってくる」
『はいはい、カテゴリー吸血鬼ですね……渡航目的は?』
「観光です」
『ではこちらの書類に必要事項を記入してください』
ミナが入国手続きしてる間に魁人は自分の仕事をこなす。まずは早朝勤務者からの引き継ぎ資料のチェックからだ。魁人の机の隣に、魁人と同じ浄衣を着た男性がたっていた
「おう魁人、昨日は災難だったな。引継ぎだが、特に変わったことはない。昨日の悪霊の類に注意ってことくらいだな。未だ原因は不明だし、淀みはあまり改善されてない」
「了解、ご苦労さん。さぁーって、やりますか。……………あふぅ」
早朝勤務の人を見送った後、緊張感のない生あくびをしながら魁人は呟いた
そもそも人外というものは、人の想像から生まれた産物でしかなかった。いつしかそれが力を持ち、想像で造ったものが本当に存在するようになってしまった。
世界はグローバル化が進み、あらゆる伝説や神話が世界に知れ渡る。人ならざる者の彼らもまた、海を越えて世界を見ようとするものがいる
俺たちはそんな人外(現地人外から外国人外まで)を監視し、管理、時には駆逐もする異能者の集まり。人の身でありながら人ならざる者の力を持つ者たち、通称「陰陽師」たちが集う組織。
人外統括組織 UM。神話の裏側を闊歩するモノたちが巣食う場所。
ここは極東支部である
やっほー、ミナだよ! さて始まっちゃったね! ここからいろんな人外と絡んだり絡まれたりフヒヒwww
おっと! 今日はここまでだよ、また今度ね!!