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黒幕・サクリ

さーてスパートだー!



『ミナ・ハーカーは敗れたか。まぁ致し方あるまい』



 黒衣に身を包んだ男が暗闇から現れた。見ずともわかる、嫌な雰囲気。この男と同じ空間に居たくないと思わせる嫌悪感が心に這い回る




「貴様は察するに首謀者か」


『その通り。この地上に溢れる余計なものを刈り取り、不浄のない美しい地上にするために動いている。我輩の名はサクリ、吸血鬼大公サクリ・ラルベルグ・ハーカーだ』


「なーる、アイツの親族ってことか。まぁわかりやすい悪だなー」


『ッ……フン、役に立たぬモノなど親族を語る権利もない。あれは我らとは関係のない、ただの吸血鬼だ』


「役に立たなきゃすぐ捨てる、か。お前友達居ねーだろ。ボッチwwwww ワロえねーwwwww」


『黙れッ!! 家畜の癖に何をほざく!!』


「その家畜とやらにバカにされてキレてるお前マジ滑稽wwwマジプゲラwwwwww」


流血断頭台ブラッド・パニッシャー!!』



 地面からサメの背ビレのような刃が魁人へ向けて放たれる。それを紙一重でかわす魁人。紙一重ではあるが、ふわりと、余裕をもっている。



「ま、アイツの弟分だけあってあんまりたいしたことないな」


『私の初撃を避けるか……さて、どうかな?』



ズズン!!



「?!」


『ッハッハッハッハ!! 何も我輩だけで侵略はしようとは思うまいさ。頼れる友人がいてこそ戦いは成り立つ、そうだろう?』



ニィ、と下種いた笑顔を浮かべるサクリの後ろには、巨大な異形の影二つ。魁人は大いにため息をつくしかなかった




「仲間というか捨て駒だろ、お前からしたら……さすがにこれは俺も骨が折れるじゃ済まないな、骨が砕かれる勢いってのか?」


『喰らい尽くせ! 千呪邪龍・アジ・ダハーカ! 壊し尽くせ! 冥界巨人ゲリュオネウス!』


『『『オォォオオオォォォォオオォォ!!』』』


『『『ギシャァァァァァァアアァァ!!』』』


「さすがにムリだぞコレ……まーやるだけやるけど、なっ!!」








~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 ゲリュオネウスの巨大な武器とアジ・ダハーカの尾を避けながら魁人はぼやく。ここまで大きさが違うと正直どうしようもない。こういうのは集団で戦ってやっとこさ平等というレベルだ。



「(こりゃいよいよヤバいな…)」



 ミナと戦っていたときには決して思わなかった弱音が、最悪の事態の想定となって魁人の脳裏をよぎる



『オオォォオオォォオオ!!』


「ゲフッ?!」



 ゲリュオネウスが魁人に向かって思い切り槍を振り下ろす。槍などの武器は回避はできる、だがその余剰エネルギーで生まれた攻撃まではかわせない。弾け飛んだ大きな地面の欠片が魁人を襲う



「あ、詰んだかなコレ」



 ゴカァァァァァアアン!!







『やれ、主はまだこんなところでくたばるものではあるまい? 陰陽の子よ』







~~~~~~~~~~~




「ン…」



 真っ暗だ。夜の闇とは違う、違和感のある暗さ。なんというか、おぞましいものが蠢いているような。その暗闇がふと上へと移動する。見覚えのある巨大な姿がそこにあった



「お前らは……」


『来てやったぞ、我が同胞ハラカラよ』



 鵺と怨念入道が魁人を見下ろしていた。先ほどの暗闇は怨念入道の手だったのだ。見ると、瓦礫が怨念入道の皮膚に触れたがために腐食して溶けていっている



「お前ら、あの洞窟に縛り付けられてたんじゃないのかよ?」


『我が祖国、日ノ本が外人外にツブされかかっているのに、あの洞窟で指をくわえているわけにもいくまい?』


『』ウンウン


『それにな、我らだけではないぞ?』


「え?」



 突如、辺りに強烈な酒と血の匂いが漂う。ズズズ、と大きな何かが這いずる音



『『『『『『『『あれがそうか。早々に終わらせよう』』』』』』』』



 それぞれ違う声が同じことを8回言っている。日本神話屈指の有名人外。八岐大蛇である



『『『『『『『『地獄よりも深き所へッ! 私が突き落してくれるわッッ!!』』』』』』』』


「……マジかよ……」


『人外戦記・マジカ☆マジダ』


「やかましいぞ鵺。鬱展開なんて何一ついらねぇんだよ」


『前々から思ってたけど、鵺って意外とミーハーなのよね』



 翼の羽ばたく音が魁人の隣に舞い降りる。美しい女性の上半身、猛々しい鷲の下半身を持つ人外。



「お前はヴィーヴル?」


『久しぶりね』



 前に戦い、そして分かり合えた人外、ヴィーヴルが八岐大蛇の背中から降り立つ



『一応アナタには借りがあるからね、私そういうのヤだからさ』


「なんで八岐大蛇と一緒なんだよ」


『釈放されたあと日本全国旅してたのよ。たまたま出会って意気投合したってわけ。あぁそうそう、来年辺り彼と結婚するわ』


「衝撃発言はいりましたー」


『ここは助けてあげるわ、だから私たちの結婚式のスピーチ任せたわよ?』



 ヴィーヴルの体が一瞬にして燃え上がる。刹那、そこには体中が紅蓮の炎で包まれた大きな龍がいた。将来の夫とともに、千の呪いを操る龍に果敢に挑んでいく



『オォォオオォォオォオォ!!』






~~~~~~~~~~~



その頃日本各地では、あらゆる人外が吸血鬼軍団に対して抵抗を見せていた



「ついに戦争が始まってしまったにゃー……」


『喰わせろぉ女ァ!』



 空を見上げていた少女に低級吸血鬼が襲い掛かる



「ぅにゃ!」


 少女の頭にピコン、と猫耳が現れる。彼女の爪が一瞬にして伸び、一閃が低級吸血鬼の皮膚を切り裂く。



『痛てぇぇぇ?!』


「猫をナメると痛い目にあうニャン」



 半妖となったあの時の少女。彼女にとり憑いていた化け猫は消失したが、人外化までは止められなかった。だが彼女はそれを受け入れ、それすら自分の一部として生きていくことにしたのである。これが彼女の決めた、自分の道



『くそったれェ! 原始人外の癖に! 高貴なる吸血鬼の俺に傷をぉ!』


「あ、頭上注意ニャン」


『ぇ ハン!!』



 上から巨大な何かが落ちてきて低級吸血鬼を肉塊へと変えた。落ちてきたのは巨大な顔だけの人外、釣瓶落としである。ただし、町を歩けば誰もが振り向くようなイケメン顔ではあるが。だが顔だけだ



「助かったニャン、釣瓶落とし」


『いえいえ、これがボクのやるべきことさ…』キリッ


「(顔面だけの分際なのにジャ○ーズ顔の人外がなんかほざいてやがるニャン…)」






~~~~~~~~~~~~~~~



『我だってやるしかないんだよー! うわぁぁぁ!』


『『『ヌグゥ?!』』』



 怨念入道に乗り込み、ゲリュオネウスと壮絶な肉弾戦を繰り広げる鵺。ゲリュオネウスの振るう武器は既に怨念入道によって溶かされている。


 怨念入道が強烈なパンチ一発を入れるとほぼ同時にゲリュオネウスが2~3発のパンチを打ち込む。



メゴッ!  ガス!ベキ!ドゴ!  ベゴッ! 



 壮絶な肉弾戦。怨念入道の砕けた拳から呪われた皮膚片が飛び散り、辺りの物質を腐食させ、ゲリュオネウスの足運びであらゆるものが踏みつぶされる。ゲリュオネウスの3つある上半身が一人、また一人と昏倒していく。



『『『『おぉぉぉおおおらぁあぁぁぁぁ!!!』』』』



 巨人二人の拳がお互いの頬をとらえる。クロスカウンターだ。壮絶な殴り合いはお互いがダウンする形で幕を引いた




『『『『『『『『小僧、一献付き合え』』』』』』』』



 八岐大蛇が吐きだす吐息は強烈な酒気を帯びている。そのあまりのアルコール度数の高さに、ヴィーヴルの体の炎で引火し炎を吐いているように見える



『『『!!』』』



 呪いの防壁で炎の吐息を防ぐアジ・ダハーカ。だが辺りに漂う強烈な酒の匂いが徐々にダハーカの意識と理性を削り取っていく



『『『うっぷ…おえ』』』



 やがて酒気にあてられアジ・ダハーカは意識を手放した。千の呪いを操る邪龍は下呂だったのである。



『戦わずして勝つ、そういうものもある。わしはただ未来の女房と酒飲んで遊んで暮らせればよい』


『さすが貴方、惚れ直しちゃうわ』


『よせよせ。本音じゃ』


『ヤダ、もぅ/////』



ごちそうさまです






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