ケース10 あいにく本日休業中
お休みタイムです
「主は明日から連休ね」
「ハァ?」
ある日唐突に呼び出された支部長室で、魁人は不可解なことを爺から言われた。早く戻って残務整理や引継ぎの資料を作りたいところだが、支部長からの呼び出しなので無碍にはできない。正直七面倒くさいとしか思っていない魁人である
「いやさ、もう就職してから何日も休みとってないじゃろ? 法定休日まで働きに来るし始末じゃし」
「テメェらがふがいねぇから仕方ねぇだろうが」
魁人はそう言うがここは仮にも人外専門機関。人ならざる者を統括しているのだから、職員も必然的にかなり能力が高くなければいけない。そんな能力の高い、有能な職員たちでさえ回りにくくなるほど現場は忙しかったのだ。
だが最近は人外の活動も落ち着きを見せ、対人外用の術や道具などの魔道具が開発されるようになり、多少能力が低くても道具でカバーできるようにやっとなったのだ。
「しょうがないじゃろ、主以外普通なんじゃし。ともあれ、じゃ。ようやく組織も軌道に乗ってきたし、功労者である主にはちょっと遅めの夏休みを与える」
「はぁ……まぁいい、何日休めるんだ?」
「1ヶ月ほどじゃの」
「一かげつぅぅぅぅぅーーーーーーーーー?!」
こうして魁人の壮絶な有給消化生活が訪れたのであった…
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「なんで私まで休めるの?」
魁人のデスクの上の甘い煎餅をポリポリかじりながらミナは魁人に問う。今日の仕事はほぼ終わりだ。魁人もインスタントのほうじ茶を飲んでリラックスしている
「今までのお前の仕事ぶりを偉いサンたち交えて話し合うんだと。偉いサンはカタブツが多いから時間がかかるもんだ」
「そういうもの?」
「そういうもんだ (まぁ俺の監視下に置いておいたほうがなにかといいだろうしな)」
コトリと飲み終えた空コップを置き、背伸びをする魁人。
「さて、帰るか。荷物まとめ…」
「纏めてます!」
「フン、帰るときになったら元気取り戻しやがって。コンビニよるぞ」
「何買うの? まさかコ ry」
「言わせるかこのエロ。ビールとミックスナッツだよ」
「あれ? 成人してましたっけ?」
「今日で成人だ」
「おめでとうございます! あ、ケーキ買いましょうよ!」
「材料は家にあるから大丈夫だ」
「手作り?!」
そんなこんなで二人は今日も仲がいい。有給消化の日々はまだ始まったばかりだ
休暇数日目。ありあわせの昼食を済ませた二人。
「んじゃ俺寝るわ」
「へ? だってまだお昼だよ?」
「やることないし別にいいだろ」
「どう見てもグダグダね本当にありがとうございました」
「黙れ」
トタトタトタ スーーーー トン
魁人が襖を閉めて縁側へ向かったのを確認してミナはにたりと笑った
「…………」ニタリ
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「こういうときは日当たりのいい縁側で座布団枕にして寝るが一番だ。扇風機と蚊取り線香セットして…」
数分後、魁人は心地よい夢の世界へ旅立った
「」zzzz
そぉ~~~~っと襖を開けてやってきたのは吸血鬼ミナ。やることもなく、ヒマでヒマでしょうがない人外。ということで普段スキの全くない魁人にイタズラしにきたのである
「フヒヒwwおはようございますwwwご覧のとおり寝起きドッキリですwww 普段いいように扱われてるのでイタズラしちゃいましょ~~ww フヒヒwwwwまずは何をしようかな…」コゴエ
モソモソ……
「よ~し、最初はスタンダートに顔に落書きしま~すwww油性マジックでwwwwwwヒッヒヒヒヒヒヒry」コゴエ
「んむぅ…」zzz
ミナが油性マジックを近づけると、魁人が軽く身じろぎをする。バレたかと思ったが、どうやら軽い寝返りしただけのようだ。その純真無垢な表情にミナは母性を刺激される
「(キュン) ハッ?! 私はなにを…っと、いけないいけない……まずは瞼に目と…『肉』っと…」
カキカキ
「……ふぅ、こんなものかしら、流石私」
書き終わったようである。あくまで小声で自画自賛
「」zzz←額に肉と瞼に黒目
「…ッ! ……ッ!!」←必死に笑いをこらえている
ピンポーン
誰か来たようだ。魁人の方はというと、起きそうにない雰囲気だ。ミナが出るほかない。イタズラは続けたいので静かに玄関へと赴く
「?! (……とりあえず私が出るか)」
「ハイハーイ、どちらさま…」ガララ
引き戸を引いたところに立っていたのは天狗娘、ウズメである。心なしか随分と露出が多い。道行く人が思わず振り向くような美人でありながら、刺激の強い恰好。ミナは魁人からもらったシブい甚平。女の戦い、差は歴然であった
「やっほー魁人さん…っててめぇか、チッ、クソが…」
「んだコラやんのか? ォオ? 今テメーに構ってる余裕ねーんだよ帰れドカス」
「私は魁人さんに用事があんだよコラ早く魁人さん呼べってんだよアバズレ」
「それはできねーな、今あいつはお昼寝中で私はそれを観察しなくちゃならねぇんだよ」
「なおさらそこを通らせて、これあげるから」
ウズメが懐から取り出したのは天狗一族手作りの甘味、ヤツデ饅頭。
「……くれぐれも静かにね?」ソーット
「了解」ソーット
「」ジーーーーーーー
「」ジーーーーーーー
二人の美少女の見つめる視線の先には端正な顔した男がいる。一部分を除いては端正だ
「」zzz←額に肉と瞼に黒目
「「……ッ! ……ッ!」」←必死にry
「わ、私も少しいい?」コゴエ
「い、いいわよ…ッく…」プススー
ウズメに自分が先ほど使った油性マジックペンを渡すミナ。どうなってもしらねーぞー
カキカキ
「」zzz←額に肉+瞼に黒目+肉にふりがな←new!
「「パーフェクトぅ!」」
なにがだ
「ねね、ここまで来たんだし徹底的にやっちゃおうよ」コゴエ
懐からいろいろなものを取り出すウズメ。目が少年のように輝いている。見た目少女だが
「イイネ! ヤッチマイナー」コゴエ
「…………」zz
時計『数分後!』
「…………」
「…………」
「」zzz←額に肉+瞼に黒目+肉にふりがな+ガッツリ化粧小悪魔メイク←new!
そこには妖艶美人が寝転がっていた。というか魁人である。彼は男だ。若干長い髪と若干中性的な顔立ちのせいで、異常なまでにメイクが似合ってしまっていた。なぜか敗北感を覚える人外娘2人
「(なんでだろ…負けた感じがする…額に肉 (+ふりがなつき)なのに)」ズーン
「(私たちよりキレイかもしんない…瞼に黒目なのに)」ズーン
「こうやって見ると壮観だな、よくここまでできるもんだ。化粧は女の嗜みってか」
「そりゃ私たちだって女の子ですもん、ねー?」ネー?
「ねー?」ネー?
「そうだな、そうだったな、そういえば。忘れていたよ」
「これだから朴念仁は恐ろしい」
「相手の気持ちを察してこそさ、我々JAPは」ピッ
「「「HAHAHAHAHAHA!!」」」
「「ってギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
そこには右手に煎餅、左手に緑茶を持った魁人がなんともいいようのない表情で佇んでいた。いつの間にか机の上には、魁人が淹れたのかもう一つの緑茶とコップに注ぎいれられたトマトジュース、そしてお茶請けが置いてある
「五月蝿いぞ女子ども。まだ夕方とはいえ割れ響く鐘のごとく騒ぐと近所迷惑だろうが。よく来たなウズメ、粗茶だ。ミナはトマトジュースだったな」
「あ、ありがとうございます、お邪魔してます」
「いただきまーす♪」
「それ飲み終わったら説教な」
「「」」(´;ω;`)
こんな感じで二人の休日は過ぎていく。ちなみに寝ている魁人は式神で作ったデコイで本人は屋根の上で優雅に寝ていたようです。
またある日、二人は縁側で玉露とトマトジュースをすすっていた。お茶請けに羊羹が置いてある。トマトジュースに合うかどうかは不明だ
「ミナ、今日何日だっけ?」モグモグ
「え? 27日ですけど」チューチュー
「そういえば明後日だったな……せっかくだし手伝いついでに遊びに行くか」
「?」
夏祭り編
「ミナ! 夏祭りだぞ! 夏祭り! という訳で出かけるぞ」
「どこへ出かけるの?」
「とりあえずお前の浴衣作ってやる。まずはハベトロットとアラクネの服屋だな」
「どこ行くかって聞いてんでしょうが。てかどれくらいするの、浴衣の相場って」
「俺の浄衣新調ついでだ、奢ってやる。せっかくこっちに渡って来たんだ、それっぽい気分くらいは味合わせてやる」
「(デレ乙///)」
「じゃあ行くぞ」
「どこへって言ってんでしょうが!」
「行った時のお楽しみだ」
「………期待してますからね?」
「俺の愛馬が光って唸るぅ!」ドルルン ドドドドド
「どこかへ向かえと轟き叫ぶぅ!」
ヘルメット+甚平+プロテクターつけた男とヘルメット被った美少女はどこかへと出かける。これから二人にとって楽しいことが起こりそうだ