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ケース9 黒禍とか思ったけどそうでもなかったかもしれない

『「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」』







しゃらん



『「「「……………え?」」」』


『……』ドウゾ




おぞましく蠢く巨大な手のひらには、魁人がいつも背中に背負っている杓杖が2本乗っていた



「え?」


「これって…」


『確かアンタが背負ってた杖よね?』


「え? 俺の杓杖?    え?」





カッ


『やれ、先走りが過ぎると何べん言えば解るのだこの木偶の坊』


『……』フエェ…


「……だれ?」




心なしか悲しそうな表情をした怨念入道の隣から人外陰が出てきた。




『我は鵺、この洞窟の長的な立ち位置に居るもの』







 あれから数分後。入口に近いせいか明りなしでもそこはそれなりに明るかった。ウズメは先ほどひねったところを魁人に応急処置してもらっている



「…っと、捻ったとこは手ぬぐいで固定しといた、帰ったら木とかで固定して冷やせ。あ、黒天狗の連絡入れなおしといてくれ」


「了解です。ありがとうございます魁人さん……鵺ってサルの頭に虎の手足、尻尾は蛇の人外でしたよね? それにしてはいろいろと足りないような……」


『例えば?』


「…その……頭とか…」



 ウズメの言うとおり、今魁人たちの目の前にいる人外は虎の手足に尻尾は蛇だが、肝心の頭の部分が欠落している。つまり、首なしの鵺だ



『あぁ、忘れておった。おい木偶の坊、我のはどこへやった』


『……』ペッ


『無碍に吐き出すなと何度言えば解るのだこの木偶の坊』



 巨大な人外がその巨大な口からサルの頭を吐き出す。それを見事にキャッチし、頭を接着する鵺。



『愛と勇気が友達、精気百倍鵺参上!』


「止めろ、マジで止めろ。チビッ子の夢壊すってレベルじゃねーぞ。ミナが見せ場なくしてすっかりしょげちゃってるじゃねぇか」


「どーせ私はエアヒロインですよ~…スポットライト当たるまでずっと無碍な扱いされる運命なんですよ~…」


「割と近いうちスポットライト当たるから心配すんな」ヨシヨシ


『我が言うのもなんだが、メタいぞ』






そして鵺はぽつぽつと語り始めた。




『我らはかつて悪徳陰陽師集団に殺され、供養もされなかった人外の成れの果て。死体はこの洞窟に放り込まれておった。


 われらの無念は連なり寄り合い、ひとつの巨大な怨念としてこの洞窟に住み憑いた。その結果がこれよ』


『』ヤッホー


『その怨念を危険視した陰陽師集団がこの洞窟を封印した。だがそれによって我らの怨念は膨れ上がるばかりであった。そこに現れたのが主の先祖よ』



鵺がその辺から拾った枝で魁人を指さす。



「俺の先祖?」


『そう。彼は我らと戦い、怨念を沈めた。我らの魂は怨念から開放はされたものの、染み付いた邪な気までは払いきれなかった』


「賞味期限切れかけのニンニク食べて片付けたけど、口臭が強烈に残ってしまったって感じか」


「なんですかその例え。意味わかりませんし、それとあんまりニンニクの話とかしないでください」


「そういえば吸血鬼だったなお前」


「おい」


『夫婦漫才をするな爆発しろ。話を続けるぞ? 染み付いた邪な気は放っておくとまた怨念となり我らを蝕む。その気を沈める仕事をかってでてくれたのが主の一族、黒天狗一族よ』


「私の一族?」


『そう。もともとこの地の守り手として根付いておった黒天狗一族、陰陽師の頼みを快く引き受けてくれた。それ以来、黒天狗一族によって我らは祀られてきた』


「そこに外人外がズケズケと入り込んできたって訳だ。テメーだよヴィーヴル」



 ゴミでも見るような目でヴィーヴルを見つめる魁人。本人は先ほどのタンカ切ったことが恥ずかしかったのか、顔を手で覆い俯いている



『な、なによぅ……そんなこと知らなかったんだし、しょうがないでしょ…』


『知らぬは罪ではない。無知でいることこそ罪よ』



嬉しくない鵺のフォローのあと魁人は気になっていたことを鵺に問う



「ふむ、怨念の塊がそいつならなぜあなたはここに一固体として存在できている?」


『理知なき力はただの破滅よ。混ざり合った怨念どうしすら互いに反発しあい、自己崩壊も引き起こしかねん。そういうわけで一番古参の我がここに眠る念の総意として、こやつの体から放り出された』


「ようするにロボットに命令下すパソコンみたいなもんか」


「だからなんですかそのたとえ。わからないですよね?」


『『神解説ktkr www』』



なんだこいつら。ちなみにktkrとはキタコレの略語である



「……案外俗っぽいやつらだな。てかでっかいのがシャベッタァァァ」


「てことは最初ものすごい勢いで迫ってきたのは私たちを殺そうとしたわけじゃなくて…」


『寂しかったからってこと…?』


『』テレテレ



 照れている顔が不憫なまでに気持ち悪い。んで



「ともかく、わざわざ杓杖持ってきてくれてありがとうございます。またいずれ来させていただきます(ジジイ一人で)」


『よいよい。我も久しぶりに退屈しないで済んだわ。いつでも遊びに来い。ではな』



 鵺に見送られながら魁人たちは洞窟を後にした。ウズメは魁人の背中の上でご満悦の表情だ。ミナがハンカチ噛んでギリギリ言わしているが気にしないでおこう




「今日はありがとうございました。助けていただいて…」


「お礼を言われるようなことはしてない。とりあえず黒天狗に報告に行くぞ。娘が帰ってくる時間が遅いとか勘違いされても困るからな」


「勘違いされてもいいじゃないですか」


「お前は俺に何を求めてるんだウズメ」


「ヤダ、ナニだなんて…///」


「性春真っ盛りかよ自重しろ。あともうチョイ離れろ暑苦しい」


「当ててるんですよ♪」


「あぁあぁそうかい」ファ~ァ


「魁人さんの鬼♪」




 その後、ヴィーヴルは暴れる様子もなく、大人しく本部にしょっ引かれていった。最後に『と、友達になってほしいの……』と言ってきたのは驚いた。快く人外娘たちは応じていたが、直後俺の方をジトーっとみてきたのはなぜだろうか。




 一応言っとくと、ヴィーヴルはちょっとの間拘置されるだけで済んだらしい。鵺がヴィーヴルを庇う手紙を黒天狗を介して送っていたらしいのだ。身かけによらず律儀な人外だった。






その後、爺さんの部屋に魁人は居た。怨念入道についての報告書を提出しに来たのである。報告・連絡・相談、ホウレンソウである



「というわけだ。とりあえず、この組織の認知度を上げることから始めたほうがいいんじゃないか? 一々忠告なんぞやっておれん」


「そうは言うてものぅ……本家と違ってこっちは接触すら困難な生き物じゃからの……あっちの支部やこっちの支部も苦労しておるようじゃ」


「まぁ会いたくていつでも会えるもんじゃないけどさ…」


「結局堂々巡り、じゃの」


「「ハァ…」」


「さて、今日はもうあがってよいぞ。下がれ」


「どっちだよ。じゃあな」







「あ、報告終わったんですか?」


「んあぁ…うん、まぁな。とりあえず帰るぞ。今日はもうゆっくり寝たい…」


「その前にご飯はどうするんです?」


「……そうだ、俺腹減ってたんだ」


「大丈夫ですか? 主に頭」


「じゃかぁしゃあボケェ。帰って飯作んのもめんどくせぇ、今日は社員食堂で食って帰るぞ」


「阿修羅のおばちゃんのご飯、美味しいですよね~」






リザルト


滅霊、および逮捕


ヴィーヴル×1


説得、および和解


ヴィーヴル×1

鵺×1

怨念入道×1



時計『今回ノ報酬ダヨ! 大丈夫? 無茶シナイデネ……』



雌焔龍の火鱗×4

常温で発火する危険な雌焔龍の鱗。冷暗所で保管しよう


雌焔龍の火爪×2

引っ掻くと同時に可燃性の液体が飛び出す雌焔龍の爪。取り扱い注意


雌焔龍の緋珠×1

雌焔龍が稀に落とす至高の宝。中を覗けば炎が燃え盛っているような輝き




怨念宿せし謎の破片×3

巨大な怨念の塊から零れ出た小さな厄災の欠片。うかつに触れるとエラいことになる


怨念蠢く謎の皮膚片×1

本体から離れた後も蠢き続ける謎の皮膚片。うかつに触れるとたちまち触れたところから腐食する


怨念渦巻く謎の珠×1

小さな珠の中に、この世のすべての厄災を詰め込んだかと思うほどおぞましい気が渦巻いている。うかつに触れると自分も取り込まれる…かも?



時計『無茶シナイデッテ言ッタノニ……心配ダカラ、コレモアゲル。カ、勘違イシナイデヨネ!』



回復錠剤×5を貰った!


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