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蛍光灯  作者: N.T
1/5

最後の夏の始まり

「おい、早くしろよ!」

「ぐだぐだ言ってんなら見張り。ちゃんとしてろ」

 キーを叩く音がかすかに響く。一分後、モスキート音ぎりぎりの電子音が三秒鳴った。パソコンの画面に解除の文字が現れる。細い息をはいて、鍵がパソコンを片付ける。

「……運んでくれ」

「おい、(キー)。お前また力仕事だけ俺にさせるって……すまん、大丈夫か?休んどけ」

 鋼鉄の扉に寄りかかった鍵。火照る身体をそれで冷やす。ずるずると床にへたり込んだ。

「鍵?薬は」

「別に、いらない」

「どこだって。言ってくれよ」

「ない。何でも、ないし」

 頭を振る鍵。がたいのいい男は鍵の額に手を当てた。結構――いや、相当熱い。

「何がなんでもない、だよ。あと少しだからもうちっと辛抱してくれ」

 数分後、男は戻ってきた。力が入っていない鍵を軽々とその背に負い、部屋から出る。

「鍵、最後の仕事。あれを頼む」

 鍵はどこからか小さく薄い箱のようなものを取り出した。

「今回……いつものじゃないからな。気をつけねえと、C4だぜ」

 C4。プラスチック爆弾の一種で、破壊能力が著しく高い爆弾である。通常、小型爆弾として使用するものではない、が。

「トラックに乗り込んだら爆発させるから。逃げろ」

「はい、了解」

 二人が配送用に見せかけたトラックに乗り込んだとき、まだ警備は眠ったままのようだった(改良した催眠スプレーのおかげだろう)。男が座席に鍵を座らせるが、鍵はもう自分の身体を支えられないらしく、倒れこむ。

「しっかりしろって、鍵!」

「大丈夫、だって」

 小さい、ただ2つだけのボタンがついたスイッチを押す。

 ピッ

 轟くような爆発音。警備が気づいた。まだ麻酔の抜けないままふらふらと、スプリンクラーでずぶ濡れになりながら警備員がそこにたどり着いたとき。ぐにゃり、異様に曲がった扉があった。部屋の中には、置いてあったはずの大量のそれが。

 ない。

 そのころトラックの中では、男が運転しながら鍵に必死で話しかけていた。

「鍵、しっかりしてろよ。帰るまでちゃんと起きてろ。おい、鍵?」

 玉のように浮かんだ汗が流れ落ちる。荒く熱い吐息が吐き出される。意識が、泥の中に沈んでいく。

「……る、せ、――」

 視界がブラックアウトしていく。視野が狭くなる。落ちる、落ちる――

「おい!」

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