小屋の子猫
ボロい木で出来た小屋に一匹の子猫がいた。
雨の日に少年のアルはその小さな猫を見つけた。
子猫は明らかに弱っており、寒そうだった。
「可哀想に。僕の家においで。」
その子猫を家に持ち帰った。
家に帰ると母に言われた。
「うちはペット禁止です。返してきなさい。」
「でも、ずっとボロい小屋の中に居たんだよ。可哀想じゃないか。こんなに傷だらけで。」
「駄目です。うちはペットを飼える余裕なんてありません。可哀想だけど小屋に返してきなさい。」
「そんな、、、。」
少年アルは悲しそうな目をしていた。
子猫はニャーと鳴いた。
母は言う。
「分かったわ。お小遣いあげる。そのお小遣いで餌とか買ってその猫にあげなさい。それでその猫を救えるわ。」
「分かったよ。母さん。」
少年アルは子猫を抱えて餌を買いに行った。
スーパーの前に子猫をおいて「ここで少し待ってて」と言った。
少年アルは子猫に餌を与えると、子猫は少し元気になった。
少年アルは子猫をもといた小屋に返した。
「ごめんな。こんな無力な僕を許してくれ。」
子猫はニャーと鳴いた。
「そうだ。家から毛布を持ってきたんだよ。ほら、これあったかいだろ。この毛布に包まって寒い夜を凌いでくれ。」
そう言って少年アルは子猫に毛布を与えた。
子猫は嬉しそうにニャーと鳴いた。
少年アルは子猫を撫でた。
「じゃあね。僕はもうそろそろ行くよ。元気でね。」
猫は寂しそうにニャーと鳴いた。
少年アルも寂しい気持ちを堪えて小屋から出て行った。
少年アルは次の日の朝も小屋に来た。
小屋には相変わらず子猫がいた。
「また会えたね。嬉しいよ。」
子猫も嬉しそうにニャーと鳴いた。
「とりあえず餌を渡すね。」
そういうと、餌をあげた。
子猫は美味しそうに餌を食べた。
「それじゃあまたね。」
そう言って小屋から出て行った。
次の日、少年アルは学校で友達のケイトとジョンに言った。
「ぼくの新しい友達を紹介したいんだよ。子猫なんだ。今も小屋に居るんだけどさ。」
ケイトは言う。
「え!?マジ。野生の猫か!見にいこうぜ。」
ジョンも言う。
「へぇ〜。猫かぁ〜。良いよ〜。見にいこうよ。」
少年アルは友達のケイトとジョンを連れてまた小屋にきた。
ケイトは言う。
「くっさ!この小屋かなりくっさいんだけど!」アルは聞く。
「え?そうかい?」
「臭えよ。アルお前やっぱ鼻つまってんな!」
確かにアルは鼻が詰まってる。
ジョンは言う。
「臭いのは当然だよ〜。だって猫のオシッコは人のオシッコよりも何倍もアンモニアが含まれてるからねぇ〜。」
ケイトは言う。
「あ、じゃあこの匂いって猫のオシッコだったんだな。まぁそうだよな。ここでオシッコする訳だからな。」
アルは匂いをよく嗅いでみた。
確かにかなり臭かった。
アルは少しホッとした。
もし2日前にあのまま子猫を自分の部屋に入れて、自分の家の部屋で子猫にオシッコをされたら自分の部屋が悪臭まみれになってしまう。
母がペット禁止にしている理由も少し分かった。
ペットを飼うのは想像以上に大変なのかも知れない。
アルはそんなことを考えていた。
ケイトが言う。
「でもやっぱりアルってそういうとこあるよなぁ〜。抜けすぎてるところ。」
「ケイトには言われたくないよ。」
ジョンは言う。
「子猫はどこにいるのかな?」
「あ、そうだったね。ここだよ。」
目の前には小さな段ボールがあった。
その中に子猫がいた。
子猫はアル達の顔をみると喜んでニャーと鳴いた。
「はい。餌だよ。」
そう言ってアルは子猫に餌を与えた。
ジョンが言う。
「可愛いね〜。この子猫。」
ケイトが言う。
「ジョン。お前の家で飼えば良いんじゃね。」
「うちはお金ないから無理だよ〜。」
「そうかぁー。俺も動物飼うのはメンドイしなぁ〜。そうだ。エナに言おうぜ!」
エナはアル、ケイト、ジョンの3人のクラスとは別のクラスにいる女の子である。
アルもジョンもあまり関わりは無かった。
アルは思う。
ケイトは顔が広いな〜と。
それは羨ましい。
次の日、3人はエナに子猫の事を話した。
エナは子猫を見せてほしいと言った。
四人は子猫のいる小屋に向かった。
エナが子猫を見て言う。
「可愛い〜!この子が子猫ちゃんね!」
ケイトは言う。
「そうだよ。ほらお前この前猫飼いたいって言ってただろ。コイツもらってけよ。」
エナ「今日、母親に聞いてみるわ。もしかしたら飼って良いって言ってもらえるかもしれないし。」
ジョン「それは良かったねぇ〜。」
エナ「うん。ありがと。皆。」
次の日、アルとジョンはケイトに呼ばれた。
「よう。報告がある。エナが母親から許可貰ったからあの子猫飼えるらしいぞ!」
アルは言った。
「本当に?良かった!じゃあ小屋に行こう。」
エナが来て言った。
「さて。今回も小屋まで案内してもらって良いかしら?」
四人は小屋に到着した。
小屋の中に入って段ボールを覗くと、子猫はおらず中は空っぽだった。
アルは驚いた。
「え?どうして・・・」
ケイトは言う。
「多分この小屋の何処かにいるんじゃねぇか?」ジョンは言う。
「四人で手分けして探そうか。」
四人は子猫を探し始めた。
ケイトは言う。
「エナ。そっちはいたか?」
エナは言う。
「いや、居ないわ。」
ケイトはいった。
「こっちもいないんだよ。」
ジョンは言った。
「小屋の外の周辺も探してみた方が良いね。」
四人は手分けして小屋の周りの草原を探し回った。
けれど子猫はどこにもいなかった。
アルは怖くなった。
もしかしたら子猫は死んでしまったのではないか?
もうこの世からいなくなってしまったのではないか?
エナが言った。
「きっと私達より前に来た誰かが子猫を持って帰ったのね。」
それを聞いたアルは少し安心した。
ケイトは言った。
「どうして、こいつは小屋の中に居たんだろうな?」
ジョンは言う。
「分からないよ。でも何か事情がありそうだね〜。」
アルは言う。
「この子猫段ボールの中にいたんだよ。てことは誰かがこの子猫を段ボールの中に入れたんだよね?」
エナが言った。
「おそらく捨て猫ね。こんな誰も入ってこないような小屋に捨てるなんてこの中で餓死しろって言ってるようなものね。」
ジョンは言った。
「そういえば、アルはどうやってここに居る子猫を見つけたの?」
ケイトも言う。
「確かにそうだよ。どうやって見つけたんだ?」アルは答える。
「5日前に雨が降ってた日があったんだよ。その日にこの道を通ったら、この小屋の扉が開いてたんだよ。だから、小屋の中で雨が弱くなるまで雨宿りしようと思って。そこで小屋の中の段ボールを見たら子猫がいたんだ。」
アルはこの時、怖い事を考えて背筋が少しゾッとした。
もしあの日小屋の扉が閉まってたら、もしあの日雨が降ってなかったら、アルは子猫を見つけることが出来なかった。
そのまま月日は流れ、子猫は誰にも見つけられないまま弱って餓死していたかもしれない。
この狭い小屋の中で誰にも気づかれず、ずっと一人で・・・。
その時、後ろから声がした。
「ここで何をしておる?」
振り返るとお爺ちゃんがいた。
アルは聞いた。
「あのここに子猫が居たはずなんですけど、今どこに居るか知っていますか?」
お爺ちゃんは答える。
「ああ。その子猫はわしの家で引き取ったよ。皆で話し合って決めたんだよ。」
「みんなって?」
「ここに捨て猫がいることを知っているみんなだよ。この小屋の周りは広い草原だろ。だから、疲れた時や一人になりたい時にここに来て休憩する人達が実は結構多くてね。その人達がここで子猫を見つけて引き取ることにしたんだよ。」アルは驚いた。
自分以外にもこの子猫を見つけてる人がいた事に。
「そうだったんですね。この子猫の存在を知っているのは僕達だけだと思っていました。子猫を最初見つけたのはいつでしたか?」
「丁度5日前の雨の日に、私以外の誰かが見つけてな。」
アルが子猫と初めて出会った日と同じ日だった。
「最初に子猫を見つけた人から聞いた話だが、彼は子猫に餌を与えるために町のスーパーにいったらしい。そして戻ってきたら子猫が居なかったのだよ。小屋の周辺を探しても居なかった。だから彼は近所の人達に聞き込み調査を行ったらしい。だからこの小屋の子猫のことは複数人が知っておる。私もその一人だったのだよ。」
アルはその日の事を思い出した。
そしてアルは、その子猫が小屋から居なくなった原因は自分にあると気づいた。
その日アルが子猫を家に持ち帰ってしまったからだ。
アルはお爺ちゃんにその事を正直に話した。
「一番最初に子猫を見つけた彼に言って下さい。申し訳なかったと。」
お爺ちゃんは答えた。
「イヤイヤ、君が謝ることはない。むしろ君が子猫の為に良かれと思ってした事ではないか。実際、君が子猫に餌と毛布を与えてくれたからこの子猫は今日まで生きてこれた。そして今私の家におる。私は君に感謝を伝えなければならないな。」
ケイトが言う。
「お前やるな!ナイスじゃねぇか!てか、この毛布お前があげたやつなのか!」
ジョンも言う。
「流石だね〜。」
エナが言う。
「気がきくわね。やるじゃんアル君。」
こうして少年少女四人はお爺ちゃんに別れを告げて、小屋から出て行った。
小屋から少し離れたところで、エナが言う。
「まぁ猫を飼えなかった事は少し残念だけど優しそうなお爺ちゃんのもとに行けて良かったと思うわ。」
お爺ちゃんが言う。
「お前さん、子猫を飼いたかったのかい?なら私は構わんよ。」
アルはびっくりした。
いつの間にかお爺ちゃんが真後ろにいたからである。
エナは聞く。
「え?私が飼っていいの?」
「もちろんだとも。その代わりに約束してくれ。大切に育てるとな。」
「やったー!もちろん大切にするわ。前の飼い主みたいに絶対に捨てたりしないから。」
帰り道、夕日がお爺ちゃんと少年少女らの後ろ姿を照らしていた。
終わり




