新社会人~お風呂に入れないこともある
この春から社会人になる皆様、いかがお過ごしでしょうか。
学校から、そして会社から、渡された書類が山になってないでしょうか。
「もらった書類はきちんと中身を理解して、分類してクリアファイルに入れているよ。透明ポケットに一枚ずつ入っているから裏も表もすぐ読める。ファイルの背表紙に分類も書いてあるから、探すのも問題なし」
という貴方、お見事です。
その緻密な整理テクニックはきっと仕事に役立つことでしょう。
「なんか色々もらったけど、後で読もうと思って机に置きっぱなし。そういえばバッグに入れっぱなしのもある」
という貴方、とりあえず書類は一か所にまとめましょう。
ざっくり「学校」「会社」「その他」と分けておくと良いですね。
書類用の大きな茶封筒を一束買ってきて、「2026(令和8年)3月」とでも大きな字で書いて、捨てたらまずそうな書類は片っ端から放り込んでおきましょう。
どれかが必要になった時、その封筒をひっくり返して探せば出て来ます。
提出が必要な書類に限らず、チラシっぽいものとか、パンフレット的な冊子とか、カードとか、入社時は色々渡されます。
とにかく捨てないことです。
どれが重要なのか最初は分かりませんからね。
保険とか、年金とか、福利厚生とか。
とりあえず1年間は保管するつもりで、配られた印刷物は全部取っておきましょう。
要るもの要らないものを分類するのは来年でも出来ます。
さて、配属先の社宅で窓ガラスにヒビが入った部屋を割り当てられた息子は、慣れない一人暮らしに戸惑いながら、それでも元気に仕事に通っていました。
自炊がんばろうと思って一通りの調理器具をそろえたけれど、実際には暇がなく、米を研ぐのもままなりません。
大体、去年(2025年)の米の価格は異常でしたしね。
あんな高い米買って自炊するくらいなら、コンビニ弁当の方が節約になる……と言ったら言い過ぎかもしれませんが、自炊の意欲を減退させたのは確かです。
そんなこんなで帰宅途中にスーパーでお弁当を買ったり、ファストフードの宅配を利用することを覚えた頃、彼はある事実に気づきました。
風呂に入ろうとすると、お湯が出ないのです。
お湯が出るはずの蛇口から水しか出ない。
何か操作を間違えているのか、様々な角度から検証し、彼は一つの結論に達しました。
「朝や日中は問題なくお湯が出る。夕方から夜にかけての特定の時間帯のみお湯が出なくなる」
その事実から推測されたのは……。
「階下の他の住人たちが一斉に風呂に入ってお湯を使い始めると、四階の俺の部屋にはお湯がこない……?」
まさかそんなことが、とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
しかし実際に起こり得るらしいのです、給湯器や配管設備が古ければ。
このアパート、築年数もけっこう古かったんですよね……。
風呂に入りたい彼は考えました。
「他の住人達と入浴時間帯が重ならなければいいわけだ」
そして彼は入浴時間をずらしました。
……深夜2時に。
夕方5時まで仕事をして、たまに残業もして、帰り道で買い物をして、帰ってきて夕食を済ませて、仮眠。
深夜2時ごろに起き上がり、風呂へ。
風呂から上がって髪を乾かしたり色々して、再びベッドへ。
朝6時、起床。
……なんて不憫な。
睡眠時間がブツ切りじゃないですか。
ボロアパートに住まわされたばっかりに。
道理で休みの日にLINE送ったら日中未読で、夕方になってやっと『寝てた』と返ってくるわけですよ。
慢性的に寝不足じゃないですか。
息子がそんな試練の中で生活しているとは露知らず、親の私は暢気に猫のスタンプなどを送っていたわけですが。
それにしてもこのアパート、他にも困った点がいくつかありました。
駐車場が隅っこの変形した狭いスペースを割り当てられていたり。
住人の誰かが共有の宅配ボックスを占領していて、常に使用不可だったり。
いつの住人が付けたのか分かりませんが、壁に折れたフックの根元だけが残っていて、外そうとしても外せないし、折れた先端が尖っていて危ないのに、なんで管理会社はこれを放置してるのか、絶対退去時チェックに来てないだろ……と思ったりもしました。
しかし社宅だから仕方ないと思えば、多少の不具合には目をつむって住めるものです。
息子は住環境に適応していきました。
そんな彼に今度は別の角度から試練が襲い掛かってくるとは。
誰が予想し得たでしょう。
彼は山(仕事の現場)で遭難したのです。(続く)




