表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
弐乃巻:ダスト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/21

狩り

街は、管理されすぎていた。


施設の外に出て最初に感じたのは、

危険がないことでも、自由があることでもない。


雑然としているのに、切実さがない。


衣食住は、すべて自分で用意できる世界。

それはつまり、

「生きるために、選ばなくていい」ということだ。


通り沿いには、四角い建物が並んでいる。

高さも形も似たような、

直方体をそのまま置いたような建築。


――豆腐。


誰かが、思いついたまま作ったのだろう。

壁も、屋根も、最低限。

装飾はないか、途中で止まっている。


住んでいる気配のある建物もあれば、

扉が開いたまま、誰もいないものもある。


中を覗くと、内装はさらにばらばらだった。


途中まで凝った形跡のある部屋。

壁の色だけ変えて、満足したような空間。

家具だけ置いて、使われていない居室。


キッチンがある家もある。

でも、料理に本気な人がいるというより、

「作れるから作った」だけの痕跡に見える。


(……生活してる、というより)


(思いついたことを、形にしただけだな)


豆腐の建物は、まとまって並ぶこともあれば、

道端に唐突に現れることもある。


計画性はない。

でも、制限もない。


だから、街は広い。

無意味に。


目立とうとしたのか、

意味もなく高い塔を建てている者もいた。


眺めはいい。

それだけだ。


誰かが集まる理由には、なっていない。


――例外を除いて。


人の流れを追うと、

自然と辿り着く場所がある。


広場。


円形だったり、

やたらと開けていたり、

最初から“見せる”ことを前提に作られた空間。


そこでは、必ず魔法対戦が行われている。


派手な光。

観戦者向けの演出。

歓声。


(……やっぱり)


この世界では、

人が集まる=魔法対戦だ。


でも。


私は、その広場には近づかなかった。


理由は単純だ。


目立つ。

記録される。

ログが濃く残る。


忍びが立つ場所じゃない。


私は、人の流れから少し外れた場所に腰を下ろし、

アイズを開いた。


目的は、参加じゃない。


観測だ。


魔法対戦のログは、誰でも見られる。

娯楽だから。

共有されることが、前提だから。


画面に並ぶのは、

勝敗、Lv、アセット封印。


放出直後。

対戦Lv:2。

敗北。


また、敗北。

また、同じ相手。


(……)


数を追う。


一人。

二人。

三人。


全員、初心者。

全員、短時間。

全員、同一人物。


「……娯楽じゃないな」


声には出さない。


これは、狩りだ。


派手な広場ではなく、

人目につかない場所で、

安全な範囲で、

折る。


殺さない。

でも、続けられなくする。


(合理的だ)


この世界に、よく合っている。


ログの詳細を開く。

対戦者ID。


――レイザー。


その瞬間、視界の端で通知が点灯した。


「……は?」


レイザーは、違和感を覚えた。


いつも通りだ。

新人に声をかけて、

「練習だよ」「死なないから」


Lv2で合意。

恐怖で判断力が落ちた相手ほど、素直だ。


――そのはずだった。


【対戦Lv:3 合意申請】


「……誰だよ」


即、却下。


Lv3なんて、やる意味がない。

娯楽の外だ。


数秒後。


【対戦Lv:3 合意申請】


「……?」


バグかと思った。

システムの不具合。


却下。


さらに数秒。


【対戦Lv:3 合意申請】


「……ッ」


申請元は、同一。

しかも、位置が動いている。


レイザーは、周囲を見回した。


見慣れた街。

豆腐みたいな建物。

安全な光。


なのに。


集中できない。


申請は拒否できる。

成立しなければ、何も起きない。


それでも、

思考にノイズが残る。


(誰だ……)


(なんで、こんなことを)


レイザーは知らない。


Lv3を、

戦うためではなく、

相手を削るために使う発想を。


私は、霧の向こうからそれを見ていた。


広場から離れた場所。

人の流れの外側。


ログと、現実が一致する。


(……いた)


ここは、目立たない。

でも、人は流れ着く。


狩る側にとって、

ちょうどいい場所。


忍びにとっても。


私は、もう一度だけ、申請を送った。


Lv3。


通らなくていい。

合意されなくていい。


これは、

遊ばないという意思表示だ。


「本気だすだけだよ」


声は、街に溶ける。


豆腐みたいな建物の影で、

霧は、静かに広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ