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シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
参乃巻:旅

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相応しき者(序)

塔は、何も語らなかった。


雲の上へ消えていく黒い構造体は、

そこに立っているだけで世界の空気を歪めている。


それでも三人は、その足元で火を囲んでいた。


魚の串焼きが、ぱちりと弾ける。


レイザーが串を回す。


「なぁ」


彼は塔を見上げながら言った。


「登らないのか?」


シンも視線だけを向ける。


「普通なら、行く場所だな」


塔。


どう見ても“イベント”だ。


階層構造。

禍々しい雰囲気。

見せつけるような巨大さ。


この世界の住人なら、

娯楽として真っ先に挑む場所。


だが私は、首を振った。


「登らない」


レイザーが苦笑する。


「マジかよ」


シンは一瞬だけ考え、肩をすくめた。


「理由は?」


「興味がない」


嘘ではない。


塔は、明らかに“誰かが用意した舞台”だ。


登れと言っている。


挑めと言っている。


だが――


忍びは、用意された道を歩かない。


レイザーが魚をかじる。


「こんな面白そうなイベント、逃すか普通」


シンが続く。


「登らない理由の方が珍しい」


私は串を火から外した。


「急ぐ理由もない」


静かな返答。


塔は逃げない。


だが。


二人の空気が、少し変わる。


レイザーが、ちらりとシンを見る。


シンも同じだ。


火を挟んで、目が合う。


「……なぁ」


レイザーが言った。


「今の俺たち、どっちが強いと思う?」


シンが鼻で笑う。


「決まってる」


「俺だ」


レイザーがすぐ返す。


「いや、俺だ」


シンの声は静かだが、揺れない。


「走馬」


「身体強化」


「完全異常耐性」


「俺の基礎は完成している」


レイザーは肩を回す。


「俺はカウンター型だ」


「お前の動き、既に何度も見ている」


二人の視線がぶつかる。


火の向こうで、空気が張る。


私は黙って見ていた。


(始まった)


湖のこと。


命を救われたこと。


二人とも口には出さない。


だが、空気が変わったのは明白だった。


レイザーが言う。


「なぁシノ」


「どっちが強いと思う?」


シンも同時に視線を向ける。


答えを待っている。


私は少しだけ考えた。


答えは、簡単だ。


「知らない」


二人が同時に眉を動かす。


私は火の串を置いた。


「なら」


静かに言う。


「今ここで力を示して」


沈黙。


そして。


レイザーが笑う。


「いいね」


シンも頷いた。


「望むところだ」


二人は同時に立ち上がる。


だが。


レイザーが言う。


「魔法大戦、申請するか?」


私は首を振った。


「しない」


「今回は、ただ戦うだけ」


シンが理解したように頷く。


「制約なし、か」


レイザーも納得する。


魔法大戦ではない。


つまり。


痛み制御なし。

制限なし。

時間制限なし。


純粋な戦闘。


私はゆっくり立ち上がる。


影が長く伸びる。


そして。


忍法・影忍び(かげしのび)


私は二人の影の奥へ沈む。


存在を、溶かす。


二人には分かる。


気配はある。


だが、外部からは認識できない。


塔の窓。


黒い穴。


そこから見ている“何か”にも、見えない。


レイザーが拳を握る。


シンが足を踏み出す。


火が、消えかける。


塔の影が揺れる。


そして――


二人の戦いが、始まる。

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