表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
参乃巻:旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/34

湖4

湖の中央に辿り着いた瞬間、突然風が止んだ。


そのときだった。


水中の奥底に、四角い影が見えた。


直線。


角。


規則的な構造。


「……あれ」


私は目を細める。


沈んだ、豆腐建築。

だが、道中で見たソレとは異なる。


白い箱が、水底に沈んでいる。


屋根も、壁も、窓も。

施設の外観に似ている。


「……なんで、下に」


レイザーが言いかけた、その瞬間。


ぱちん、と。


目に見えない何かが切れた。


レイザーの足元の水が、弾かなくなる。


シンの身体強化の圧が、消える。


二人の身体が、沈む。


「……っ?」


レイザーが目を見開く。


「何が――」


言い終わる前に、水面が割れる。


シンも沈む。


「……!」


私は即座にログを確認する。


《アセット使用:不可》


レイザー、シンのみ。


私の水雲は、まだ沈んでいない。


(攻撃されている)


考察は、後。


私は水雲を脱ぎ捨てた。

着水すると、装備の重みを感じる。

しかし次の瞬間には、それらを手放していた。


袖口に残るのは、わずか。


クナイ一本。

鉄線。

巻物一枚。

あとは、水の中へ。


私は躊躇なく飛び込む。


冷たい。


肺が縮む。


だが、慌てない。


沈む二人の元へ。


レイザーは、必死に手足を動かしている。


だが泳ぎの概念がない。


“沈まない移動”しか知らない身体は、

水の抵抗を処理できない。


シンは、沈みながらも冷静だが、

息が持たない。


私は二人を抱き寄せる。


立ち泳ぎで浮力を確保し、

体勢を整える。


(ここで死なせない)


水面へ向かって蹴る。


だが重い。


二人分。


装備を捨てた意味は、ここにある。


水を飲む音がする。


レイザーが咳き込む。


シンの意識が、落ちる。


(もしここで魔法が使えないまま死んだら)


フェムトデバイスが身体を再生する。


だが、酸素がない。


再生。


窒息。


再生。


窒息。


無限。


(……ムゲン)


背筋が冷える。


ここは、魔法を封じる“場”だ。


死は、終わらない。


私は歯を食いしばる。


忍びは孤独でも耐えられる。


一人で、任務を遂行できる。


だが。


友がいることは、悪くない。


人は、一人より二人。


二人より三人。


沈ませない。


私は体を反転させ、背泳ぎの姿勢に切り替える。


二人を胸元に抱え、

足で水を蹴る。


何度も。


何度も。


湖は広い。


岸が、遠い。


体温が奪われる。


手足の感覚が薄れる。


それでも、止まらない。


何時間、泳いだのか。


時間の感覚が消える。


ようやく、足が底に触れた。


大地だ。


浅い。


私は最後の力で立ち上がる。


二人を引きずるように、岸へ。


倒れ込む。


呼吸が荒い。


指先が震える。


だが――


《アセット使用:可能》


戻っている。


私は濡れた袖口から巻物を取り出す。


震える手で広げる。


火遁(かとん)(かがり)


炎が灯る。


暖かい。


私は二人の胸元に手を当てる。


水を吐かせる。


圧迫。


呼吸補助。


蘇生術(そせいじゅつ)


淡い光が、胸に流れ込む。


レイザーが咳き込み、水を吐く。


シンが大きく息を吸う。


私は、ようやく膝をついた。


湖は、静かだ。


だがもう、ただの湖ではない。


あの水底の建築。


アセットの強制解除。


(ここには、何かがいる)


しかし、人の気配は感知出来なかった。

誰かが仕掛けた罠だと、そう割り切る。


西へは、簡単には進ませてくれない領域のようだ。

それでも、私は止まらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ