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シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
参乃巻:旅

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湖2

湖畔に近づいたレイザーは再び石を生成した。


「……これで気絶させられねぇかな」


ぽちゃん。


波紋が広がる。


魚の群れが、さっと散った。


「逃げた」


当たり前だ。


「もっとでけぇ石が必要か?」


今度は拳大の石を生成する。


「待って」


私は、思わず制した。


「それじゃ獲れない」


「なんでだ?」


本気の顔だった。


レイザーは魚を“見ている”。

アセットで強化された投擲は、確かにいずれ魚に命中するであろう。

だが、“扱う方法”の本質を知らない。


「水の中にいるものは、直接ぶつけるより、誘ったほうがいい」


「誘う?」


シンは、もう湖面に足を踏み出していた。


波は、沈まない。


彼は何の説明もなく、そのまま水面を歩く。


「……」


湖が、彼の体重を拒まない。


身体強化。

接地圧の制御。


水を“踏める”程度に、足裏の力を均一化している。


「身体強化だけで、水面を歩くたぁ便利だな」


レイザーが呟く。

シンは答えない。


湖の中央へ向かって、ただ進む。


シノのアドバイスを聞きながら、レイザーも続く。

彼は一瞬だけ立ち止まり、アイズを淡く光らせた。


足元の水面が、わずかに歪む。


《反発制御:水面固定》


水が、質量を押し返す。


「……よし、歩けるな」


そのまま一歩、踏み出す。


沈まない。


彼は水の反発力を、常時一定値で固定している。


「落ちたらどうする?」

「落ちねぇよ」


言い切った。


私も続いて湖畔にしゃがみ、土に触れる。


忍具のイメージを固める。


木製の底板。

水面を滑るように支える構造。

足裏に伝わる浮力。


水雲(みずぐも)


足に巻きつくように生成される、平たい浮板。


立つ。


沈まない。


波が、板の下で分かれる。


「相変わらず不思議な使い方をするよな。それもアセットじゃないのか?」


レイザーが訊く。


「忍具」


「……?」


説明はしない。

レイザーは忍術と忍具の違いが「一時的」か「常時」かくらいの違いしか

わからなかったが、そんなもんかと聞き流すことにした。


私は一歩、湖へ踏み出す。


そういて三人が、水面に立つ。


奇妙な光景だった。


誰も泳ごうとしない。


誰も船に乗るという考えも無い。


誰も水に沈む可能性という発想を持たない。


この世界に、泳ぎの概念はない。


移動できるなら、それでいい。

そうして移動を開始する。


しばらくして、先ほどの話を思い出したシノは、

湖の上で、袖から細い糸を取り出す。


巻物ではない。


ただの糸。


その先に、小さな金属片を結ぶ。


「それは?」


「魚を誘う」


レイザーが目を細める。


私は糸を垂らした。


金属片が、水面下で揺れる。


魚の影が、近づく。


「……来た」


レイザーの声が、わずかに弾む。


魚は、光るものに反応する。


食料がない世界で生きる存在は、

“餌”の概念そのものが簡略化されているはずだ。


だからこそ、単純な刺激で反応する。


影が、金属片に触れる。


私は、糸を引く。


水面が割れる。


銀色が跳ねる。


「……!」


魚が、水上に弧を描く。


レイザーが、空中で掴んだ。


「獲れた」


彼の顔に、初めて子どもみたいな笑みが浮かぶ。


「おもしれぇ」


シンが淡々と評価する。


「これが釣り」


私は言った。


「直接狩るより、待つ」


レイザーは魚を見下ろし、少しだけ黙った。


「……うん、すげぇ面白ぇな」


湖の上に、静かな風が吹く。


だが。


私は、糸を巻き取りながら、湖面を見つめる。


魚はいる。


水はある。


だが、湖は――不自然なほど、静かだ。


波はあるのに、匂いが薄い。


循環の気配が、ない。


(誰かが、管理している)


湖のどこかで。


見えない“管理者”が、息をしている。


私たちはまだ、その正体を知らない。


だが。


湖は、ただの水たまりではない。


西へ向かう足は、止まらない。


水面の向こうに、何かがある。


――それを、確かめるために。

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