表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
参乃巻:旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/34

女の子(中編)

少女は、スプーンに手を伸ばす前に、ふっと息を吐いた。


視線は遠くを見ている。


「私、昔ね。食べるの、やめてみたことがあるの」


唐突だった。


「この世界で、飢えたことある?ないでしょ?」


フェムトデバイス。

痛みも、損傷も、管理される世界。


「だから、どこまでいけば“飢えるのか”知りたくて」


一口、また一口。


「飢えるとね」


少女は、小さく笑った。


「世界が、静かになるの」


音が遠のき、

考えが細くなって、

やがて“消えてしまうの”。


「……あれは、死の疑似体験だったと思う」


レイザーが、スプーンを止める。


シンは、何も言わず、聞いている。


「そして、今度は逆をやってみたの」


少女は、クリームを見つめながら続ける。


「いっぱい、食べた」


「飢えたあとに食べる食事はね、

 幸福が、壊れるくらい来るの」


胸の奥が熱くなって、

頭が白くなって。


「それが、忘れられなかった」


だから。


「それ以降、食べて、食べて、食べ続けるのが、私の使命になった」


この世界では、

食事は効率で、完成品で、【同じ】味。


「でも、ある日」


少女の目が、少しだけ揺れた。


「料理をする人に、出会ったの」


手をかけて、

工程を重ねて、

“出来上がるまでの時間”を味にする人。


「それからは、探した」


「料理をする人を見つけては、

 作られた料理を、全部食べた」


勝負でも、

報酬でもない。


ただ、食べる。


「でもね」


「いつのころからか、

 満たしても、満たしても、満たされなくなった」


幸福は、薄くなる。


量を増やしても、

速度を上げても、

あの最初の熱は、戻らない。


「……もう、私は悲観していたわ」


だけど今。


「甘くて、おいしそう」な匂いがした。


変化のある匂い。

完成品じゃない匂い。


「ここを見つけた」


少年と、シノ達を見る。


「……ね」


少女は、スプーンを握り直す。


「私は、このクリームで」


「今度こそ、満たされる」


言い切って、

クリームにスプーンを突っ込む。


速い。

だが、決して乱暴ではない。


味を確かめるように、

確実に口へ運んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ