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シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
弐乃巻:ダスト

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18/22

豆腐建築の中は、相変わらず無味乾燥だった。


四角い壁。

四角い床。

四角い天井。


「住める」という条件だけを満たし、

「暮らす」という発想を最初から放棄したような箱。


それでも、

人が集まれば、空気は変わる。


「……落ち着かねぇな」


レイザーが、腰を下ろしながら呟いた。


向かいでは、

シンが静かにアセットを展開している。


椅子。


だが、それはこの街でよく見る即席のものではなかった。

背もたれは緩やかな曲線を描き、

座面は深く、脚部は太く、無駄に安定している。


「……見慣れない形状ばかりだな」


レイザーが言う。


「強者に相応しい椅子は必要だろう」


シンは、当然のことのように返した。


「座る姿勢一つで、集中も判断も変わる」


言葉は少ない。

だが、その椅子には、

“戦う人間が休む”という明確な思想があった。


次に現れたのは、食器。


皿。

カトラリー。

コップ。


どれも統一感があり、

触れなくても、手触りが想像できる。


「……無駄に凝ってるな」


「壊す前に、整える」


それだけ言って、

シンは配置を終える。


レイザーは、鼻で笑った。


「Lv3で殴り合うやつらに挟まれて、

 俺は何してんだろうな」


その言葉に、

私は床に座り込んだまま、視線だけを上げる。


身体が、まだ重い。


生命の丸薬は働いている。

だが、自然回復が追いついていない。


私は、装備を再現する。


クナイ。

手裏剣。

紐。

巻物。


イメージをなぞるたび、

身体の奥が、じくりと痛む。


(……次に備えないと)


レイザーが、ちらりとこちらを見る。


「無理すんな」


「してない」


即答。


「……その返し、もう聞き飽きた」


そう言いながら、

彼は立ち上がった。


「こういう時は、だ」


アセットが展開される。


分厚いステーキ肉。

それを、迷いなく細切れにする。


包丁の動きが、妙に慣れている。


「……お前、前から料理してたのか?」


シンが聞く。


「趣味ってほどじゃねぇよ」


レイザーは答える。


「ただ、腹が減ったままじゃ、

 頭も回らねぇだろ」


次に、

炊き立ての白米。


湯気が立ち上る。


醤油が霧状に展開され、

空中で米と絡み合っていく。


大きめの鍋が現れ、

それらが一気に落ちる。


塩。

コショウ。

刻んだニンニク。

ピーマン。

ネギ。

謎の粉。


最後に、

バター。


一気に炒める。


香りが、空間を満たした。


「……腹減る匂いだな」


シンが、珍しくそう言った。


「だろ?」


レイザーは、少しだけ得意げだ。


「スタミナ満点、

 ガーリックステーキチャーハンだ」


「体力も、すぐ戻るぞ」


皿が配られる。


……正直、

私には重い。


喉が、まだ本調子じゃない。


シンも、同じように箸を止めている。


「……通りにくいな」


「だろ?」


シンが、少し考えてから言う。


「食べる人のこと、考えた方がいい」


私は、無言で頷いた。


レイザーは固まる。


「……あ」


鍋を見つめる。


「……味じゃねぇな」


「どう食うか、か」


その顔は、

何かに気づいた人間のそれだった。


すると、

シンが指を鳴らす。


今度は、スープ。


白く、湯気を立てる液体。


「俺にとって、究極にうまいスープだ」


一口、飲む。


……豆乳スープに、よく似ている。


「筋力回復付きだ」


それを合わせると、

不思議と、喉を通った。


「……悪くない」


私が言うと、

レイザーは小さく笑った。


「だろ」


しばらく、

三人とも黙って食べる。


戦闘の話は、出ない。


だが、

空気は、妙に穏やかだった。


その時。


「おや」


声がした。


入口の方。


男が、立っている。


キョウ。


施設で、見覚えのある顔。


彼は、まず私を見て、眉をひそめた。


「……なんでここ(ダスト)にいる?」


その声には、

困惑と苛立ちが混じっていた。


目立たない。

弱い。

そう判断していた存在が、

なぜかダストの連中に囲まれている。


視線が、

シンとレイザーに移る。


「……へぇ」


「飯まで一緒とはな」


その言葉が、

この場の空気を、静かに切り裂いた。


私は、箸を置く。


次は――

また、騒がしくなりそうだ。

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