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シノビナイト★ ~世界最弱と判定された少女は、忍術で本気だす~  作者: PP
弐乃巻:ダスト

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13/19

シン(中)

合意が成立した瞬間、

世界が薄くなる。


音が削がれ、

色が落ちる。


当事者だけが残る、魔法対戦の領域。


シンは、構えない。


足を引かず、

拳も上げない。


ただ、立っている。


(身体強化は常時)


私は距離を測る。

三歩。

四歩。


(走馬。騎乗系――)


地上戦を想定。

低く、速く、詰める。


私は動く。


床を蹴る。

空を蹴る。


同時に、粉末を散布。

視界阻害。

位置誤認。


――間に合う。


はずだった。


シンの姿が、そこにない。


消えた、のではない。

跳んだ、でもない。


最初から、いなかったかのように、

私の攻撃線から外れている。


(……?)


私は回転し、クナイを放つ。


直線。

確実。


だが――


クナイが、空を切る前に、

シンはもう一歩、横にいる。


速い?


違う。


(反応している?)


否。


反応しているなら、

“間”が生まれる。


これは、

選択が先にある動きだ。


私は紐を張る。

罠を起動。


足首を取る構成。


だが、踏まれない。


正確に、

罠の“ない場所”だけを選んで進む。


(……見えてる?)


見えているなら、

罠が意味をなさない。


だが、

見えている“感じ”がしない。


シンは、淡々と距離を詰めてくる。


拳が来る。


私は変わり身。


――成立。


……したはずなのに。


入れ替わった木片が、

砕ける前に、

シンの拳は、すでに次の位置にある。


(おかしい)


私は後退し、煙を撒く。


視界は、完全に断たれた。


それでも。


足音が、迷わない。


煙の“薄い”ところを、

正確に踏み抜いてくる。


「……」


私は、初めて舌打ちした。


(走ってない)


(反射でもない)


(じゃあ、何だ)


次の瞬間。


シンの拳が、

私の頬を掠めた。


――当たっていない。


だが、

空気が、裂けた。


身体強化。


もし直撃していたら、

骨が持たなかった。


私は距離を切る。


空中で、姿勢を立て直す。


その間も、

シンは追ってこない。


待っている。


(待てる……?)


その余裕が、

異常だった。


私は、ようやく気づく。


(走馬……)


(これは、騎乗じゃない)


(死)


その単語が、頭をよぎった瞬間。


理解が、切り替わる。


――走馬灯。


死に直面したとき、

人は、思考が加速する。


それを、

常時・設計として使っている。


(……最悪だ)


これは、

速さでも、強さでもない。


間違えない能力だ。


シンは、私を見る。


「不思議そうだな?」


静かな声。


誇りも、嘲りもない。


「俺は視えている」


走馬。


死のイメージをトリガーに、

超高速思考。

超反射行動。


だから――


「外さない」


私は、息を整える。


即興が、通じない相手。


忍術の“読み”が、

ことごとく先回りされる。


それでも。


私は、口元をわずかに緩めた。


(なるほど)


(じゃあ――)


死なない攻撃なら、きっと見えない。


私は、次の巻物に指をかける。


これは、

“殺さない”戦いになる。

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