幕間 レイザー
――ああ。
俺も、Lv3だったら。
そう思った瞬間、背中が冷えた。
痛みもなく。
恐怖もなく。
自分が死んだことにすら気づかず。
誰にも悟られないまま、
そのまま――消えていたのか。
イトは、そうだった。
叫びもしなかった。
抵抗もしなかった。
終わったことすら、理解しないまま。
(……笑えねえな)
何とも言えない胸の奥の感触を、
俺はどう扱えばいいか分からなかった。
だからだろう。
日が昇ってから、
俺はシノに声をかけていた。
「なあ」
「なに」
相変わらず短い返事。
「近くにさ、
物品店を開いてる物好きがいるらしい」
“物品店”。
この世界では珍しい。
欲しいものは、アセットで作ればいい。
わざわざ店を構える理由なんて、ない。
「一緒に……見るだけでもいいんだけどよ」
言ってから、
俺はそれがデートじゃないことを強調するように付け足した。
「連戦、したいわけでもねえだろ」
「うん」
即答だった。
「行こう」
拍子抜けするほど、あっさり。
歩き出してから、
ふと気づく。
(……長いな)
こんなふうに、
誰かと並んで歩くのは。
施設を出てから、
初めてかもしれない。
一人で狩って、
一人で満たして、
一人で終わる。
それが普通だった。
それなのに。
隣にいるのは、
人をあやめることを躊躇しない、
壊れた存在のはずなのに。
(……重いな)
存在感が。
音も立てず、
感情も多く語らず、
ただそこにいるだけなのに。
気づけば、
その“空白”が、
俺の中でやけに大きくなっている。
イトが消えた場所を、
無意識に避けながら歩いている自分に気づいて、
俺は小さく舌打ちした。
「……柄じゃねえ」
シノは、何も言わない。
それが、余計にきつい。
物品店の影が見えてきた、その時。
俺は、頭の中で
次の名前を思い浮かべていた。
――次は。
ダストの、次のターゲット。
狩りは、続く。




