第四十三話:『【悲報】地下の主、珍味のエビとして乱獲される』
地下迷宮での「大海老実食事件」から一夜。
探索者専用掲示板は、もはや恐怖を超えて、困惑の渦に包まれていた。
1:名無しの探索者
【悲報】うちのアカデミーの地下、もう怖くて歩けない。
2:名無しの探索者
例の「影這いの大海老」の脱走か? あれCランク上位だろ? プロでも数人がかりで仕留める厄介なやつ。
3:名無しの探索者
いや……。もう仕留められてる。
現場に行ったらさ、あのジャージの死神と、不登校だった一ノ瀬と、Eランクのドベ娘が三人で焚き火囲んでたんだわ。
4:名無しの探索者
焚き火? 修行の一環か?
5:名無しの探索者
大海老を串焼きにして食ってたんだよ!!
しかも一ノ瀬のやつ、あいつの「一文字」って名刀だろ?
それを使って「師匠! この関節のところ、一番脂が乗ってますよ!」とか言って、嬉々として解体してた。
6:名無しの探索者
嘘だろwww あのプライドの塊みたいな一ノ瀬が?「僕に触れるな、汚れる」とか言ってた王子様だぞ?
7:名無しの探索者
動画上がってるぞ。
【動画:闇の中で一心不乱に海老を解体する一ノ瀬と、それを凝視するミオ、盾をテーブル代わりにしているルナ】
8:名無しの探索者
待て、ルナが持ってるあのデカい盾……。
あれ、大海老が体当たりしてもビクともしなかったらしいぞ。
「無能」って言われてたルナが、なんであんな重戦車みたいになってんだよ。
9:名無しの探索者
噂だと、ジャージの死神に「お肉を食べたければ、卵を割らずにダンプカーを受け止めろ」っていう地獄の特訓を受けたらしい。
10:名無しの探索者
それ、修行じゃなくて虐待だろ。
でも結果的に、一ノ瀬の攻撃精度とルナの防御力が異常進化してる。
あいつら三人で組んだら、学園の「七賢人」でも止められないんじゃないか?
11:名無しの探索者
最近、学園で新しい二つ名がついてるらしいぞ。
折原ミオ:『黄金の暴食』
一ノ瀬:『銀の包丁』
ルナ:『鉄のまな板』
12:名無しの探索者
完全に厨房関係で草www
でも、あいつらが通った後の演習場、魔獣が絶滅しててワロタ。
「あれ、唐揚げにしたら美味しそうですね」ってミオが言うと、魔獣が震えて逃げるらしい。
13:名無しの探索者
今の1-C組、学園内で「最凶の食堂」って呼ばれてるぞ。
今日なんて、九条院会長が「僕も……僕もそのエビ、一口だけ恵んでくれないか……」って泣きながらミオにすり寄ってたし。
14:名無しの探索者
もうこの学園、終わりだよ(いい意味で)。
次は「Bランクの魔獣をバーベキューにする」って予告されたらどうしよう。
15:名無しの探索者
【悲報】学食の調理員さん、ミオが厨房に入ってくるたびに「素材の味にうるさい師匠が来た」って震えて隠れるようになる。
「……ねぇ。……掲示板、変なこと書いてある」
ミオがスマホを見ながら呟くと、横で必死に「ジャージの染み抜き(昨日の海老の体液)」をしていた一ノ瀬が、清々しい笑顔で答えた。
「気にする必要はありませんよ、師匠。凡人には、高みの美食は理解できないものです。……それより、次の演習場の『大猪』、どう調理しましょうか?」
「……私は、生姜焼きがいい」
「了解です、師匠!」
ルナも横で、盾を磨きながら「私は角煮がいいです!」と元気よく挙手した。
学園の秩序は、今日も美味しそうな匂いと共に崩壊していく。




