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第三十四話:『実力測定(フィジカル・チェック)』

「この学園では、実績よりも『今、何ができるか』が全てだ。……折原、そこへ入れ」


 案内されたのは、体育館三つ分ほどもある巨大なドーム状の施設。最新鋭の戦闘シミュレーター『アレス』だ。  


周囲の観覧席には、ミオの品定めをしようと集まったエリート生徒たちが、ニヤニヤと見下ろしている。


「おい、あのジャージ。仮想空間の重圧に耐えられなくて泣き出すんじゃねーか?」


「一ノ瀬様なら三秒でクリアした『Cランク級・模擬ドール』だ。見ものだな」


 ミオは無言で、ドームの中央に立った。


『お嬢さん、ここは仮想空間ですが、感覚は現実とリンクしています。周囲の生徒たちに舐められない程度に、かつ、施設を壊さない程度に……分かっていますね?』  

周防の念押し。



「……分かってる。……卵、一個分」


 【シミュレーション、スタート】


 無機質な音声と共に、目の前に巨大な鋼鉄の騎士――『Cランク級・タイタン』が三体、ホログラムで生成された。現実なら、一ノ瀬クラスの探索者がパーティを組んで挑む強敵だ。


 三体のタイタンが、同時に巨大な斧を振り下ろす。  ドームが震えるほどの衝撃波。


しかし、ミオの姿は既にそこにはない。


『ミオ、足首だ。……力を流せ』  

影縫の助言。


 ミオは最速の踏み込みを見せた。だが、ただ速いだけではない。  


一歩踏み出すごとに、地面の霊素を吸収し、それを全身のバネへと変換する。


「……せいっ」


 ミオが放ったのは、ただの正拳突き。  


しかし、その拳が一体目のタイタンの胴体に触れた瞬間、**「ドォォォォン!!」**という、物理現象を無視した爆鳴が轟いた。


 仮想空間のデータで構成されているはずのタイタンが、まるでガラス細工のように粉々に砕け散り、その背後の空間ごと「ノイズ」となって消滅した。


「……あ、しまっ」


『がはは! お前、加減って言葉を忘れたのか!?』  


獅子王が爆笑する。


 勢いは止まらない。


一体を壊した衝撃波が、余波だけで残りの二体を消し飛ばした。  


それどころか、ミオの拳から放たれた「霊素の奔流」は、仮想空間の許容容量キャパシティを瞬時に超過。


 【警告:出力異常。システムオーバーロード。緊急停止――】


 パリン、という硬質な音と共に、ドーム内を覆っていたホログラムが鏡のように割れた。  


剥き出しになったのは、回路が焼き切れ、黒煙を上げる高価な演算装置の山。


 静まり返る観覧席。  


笑っていた生徒たちの顔は、もはや恐怖を通り越して「理解不能」という表情で固まっている。


「……壊れちゃった。……これ、私の給料から引かれる?」


 真っ青な顔で駆け寄ってきた教師に、ミオは真っ先に「弁償の有無」を確認した。


『……お嬢さん。今の破壊、控えめに言ってもCランク上位の出力でしたよ。……おかげで、あなたの「ジャージの死神」という二つ名が、学園中に定着しそうです』  

周防の呆れ声。



 この日を境に、ミオに喧嘩を売ろうとする生徒は一人もいなくなった。  


代わりに、学園を裏から支配する「七賢人」と呼ばれる生徒会メンバーたちが、ミオを「排除すべき劇物」としてマークし始める。


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