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第二十話:『三位一体の咆哮』


「……ぁ、あああああああッ!!」


 ミオの喉から、少女のものとは思えない野太い咆哮が漏れた。  


全身の毛細血管が浮き上がり、限界を超えた霊素の循環サイクルが、ジャージの袖をズタズタに引き裂く。


『お嬢さん、思考を止めなさい! 私が「最適解」を直接あなたの脊髄に流し込む!』  


周防の声が脳を焼き、亡霊騎士の胸の中央、怨念が渦巻く一点が赤く点滅して見える。


『獅子王、合わせろ! ミオ、左足を捨ててでも踏み込め!』  

影縫の冷徹な号令が下る。


 亡霊騎士が黒い大剣を全力で振り下ろした。  


ミオはそれを避けない。


折れた木刀を捨て、素手でその刃を受け流した。


 ――影縫流・受け技『鏡写かがみうつし』。


 鋼鉄をも断つ怨念の刃が、ミオの掌に沿って滑り、床を粉砕する。  


その隙に、ミオの右拳が、獅子王の闘気を纏って赤熱した。


『食らえッ! これが地獄の底を這いずった俺たちの意地だ!!』


 ――獅子王流・奥義『紅蓮壊ぐれんかい』。

 ドゴォォォォォン!!


 ミオの小さな拳が、亡霊騎士の胸部、周防が示した「崩壊点」に突き刺さった。  


ただの物理現象ではない。


獅子王の破壊、影縫の貫通、周防の分解。三つの異能が一点に凝縮され、亡霊騎士の存在そのものを、分子レベルで消滅させる。


「ギ、ギィイイイアアアアア!!」


 絶叫と共に、亡霊騎士の巨躯が内側から弾け飛んだ。  


衝撃波は保管庫の壁を突き破り、地下の構造をねじ曲げ、やがて地上の訓練施設へと突き抜けた。


 地上の試験会場。  


「魔導ドールを何体倒した」と競っていた一ノ瀬たちが、突然の足元からの震動に膝をついた。


「な、なんだ!? 地震か!?」

「いや、地下から……とてつもない魔力の奔流が……っ!」


 ドォォォォン! と、グラウンドの中央が爆発するように盛り上がり、そこから一人の少女が這い出してきた。  


ボロボロになったジャージ。


肩から血を流し、息を荒げているミオの姿に、会場は水を打ったように静まり返った。


「……はぁ、はぁ。……試験、まだ、続いてる……?」


 ミオの手には、あの黒い箱から回収した「虹色に輝く最高品質の魔石」がしっかりと握られていた。


「お、おい……あの子、地下にいたのか? あの場所、封鎖区画だったはずじゃ……」


「見てみろよ、あの魔力……。Eランクが放っていい波動じゃないぞ」


 神代部長や巫女の八雲が駆け寄る中、ミオはふらりとよろけ、八雲の腕の中に倒れ込んだ。


「……お嬢さん、よく頑張りました」  

周防の安堵した声。


「……あ、これ。……ボーナス、出る、かな……」


 意識を失う直前まで、ミオは自分の懐にある魔石を離さなかった。  


その光景を見ていた国の上層部は、確信した。この少女は、単なる「天才」ではない。


この国、いや、世界の「龍脈」の秩序を根底から覆す可能性を持った、最大級の特異点であると。


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