表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/51

第十九話:『暴走する呪物』

黒い箱の封印が弾け飛んだ瞬間、保管庫内の温度が氷点下まで急降下した。  


溢れ出したのは、どろりとした墨汁のような「怨念の塊」だ。


それはかつてこの施設で実験に失敗し、龍脈の塵となった探索者たちの成れの果て――『亡霊騎士レヴナント』の姿を象り始めた。


「……っ、息が、苦しい……」


 ミオの肺が、濃密すぎる霊素の毒に焼かれる。


目の前に立つ亡霊騎士は、かつてのDランク上位の実力を持っていたのか、手にしたボロボロの大剣から、ミオの防御を貫通しかねない重圧を放っていた。


『ミオ! ぼんやりするな! そいつは「理屈」が通じねえ化け物だ!』  


獅子王が咆哮するが、その声すらノイズに掻き消されそうになる。


 亡霊騎士が、物理法則を無視した速度で肉薄し、黒い大剣を振り下ろした。  


ミオは反射的に木刀で受け止めるが――。


 ミシッ……。


 特注の模擬刀が、一撃で悲鳴を上げた。


 重い。  獅子王の剛力で耐えても、影縫の歩法で逃げようとしても、この狭い地下空間では、怨念の影が触手のように足首に絡みついて動きを封じてくる。


『……お嬢さん、計算外です。この空間自体が、奴の「胃袋」と化している。脱出するには、奴の核を一撃で撃ち抜くしかありません。……ですが、今のあなたの出力では足りない』  


周防の冷静な声に、初めて焦りが混じる。


 亡霊騎士の追撃。


黒い剣閃がミオの肩をかすめ、制服のジャージが裂け、鮮血が舞った。


「あ……っ、が……!」  

痛みが脳を突き刺す。


これまで「無双」してきたミオが、初めて直面する「本物の死」の予感。


『影縫、手を貸せ。……ミオ、これ以上は俺たちが「直接」お前の神経を弄る。脳が焼き切れるかもしれねえが、死ぬよりはマシだろ!?』


「……やって。……ここで死んだら、一千万が、無駄になる……!」


 ミオが歯を食いしばり、意識の奥底にある「かせ」を外した。    


――全霊シンクロ率:十五%(オーバーリミット)。


 ミオの視界が真っ赤に染まった。  


右腕には獅子王の暴力的な破壊衝動。  


左腕には影縫の神経を断つ冷徹な技術。  


そして脳内には、周防が弾き出す「敵の原子崩壊点」へのナビゲーション。


 三つの異なる力が、ミオの小さな体を戦場にして激しく衝突し、融合していく。  


ミオの皮膚の下を、金と黒の紋様が血管のように走り始めた。


「……はぁ、はぁ……。……殺す。……私の、ケーキ代を、脅かすやつは……!!」


 ミオは、もはや折れかかっている木刀を捨て、素手で亡霊騎士に向かって踏み出した。


 それは、少女の姿を借りた「三柱の怪物」の顕現だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ