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SCORE2:アップル・イン・ザ・スカイ Ⅳ

「なんでここだけ2000字なんだ。」リンは口酸っぱく言った。

「・・・配分ミスさ。」

「これじゃあ読者は満足しないだろうさ。」カール・・・こいつ!

 ああそうかい!君がそう言うならこっちだって・・・!

「すみませんでした。かなり遅くなってしまって。」

 移民局に辿り着いた大佐はロメロ夫人に向かってこう言った。

「いえ、そんな。私達はただ、ノクタリスのように、軍に連行されたら絶対に帰ってこないものだとてっきり思っていたものですから・・・。ですが、いまこうして夫に会える。それだけで十分じゃないですか。」・・・とんだ風評被害だ。

「遅れてきたのは大した理由ではないのですが・・・。」本当に大したことの無い理由だったのだが、そう言いながら、二人はキャンディーの箱を二ダース、立ち寄ったコンビニで買ってきたものを渡した。


「そんな!私達はもう十分助けていただいたのですよ!それに・・・。」

「いえ。これにはもう一つ訳もあるんです。明日正午に、ハビエルさんをお借りします。おそらく五日間、帰って来れないでしょう。アークへシスの首都のコロニーに行くのですから。なのでここ一週間近く彼も含め私たちはいかなければなりません。・・・大丈夫です、ワープ用に常に兵が配備された宙域を通るのですから。首都コロニーまでの道のりは安全です。」

「そうですか・・・。」少し悲しげな顔をして夫人は言った。

「では、また明日伺いますので、よろしくお願いします。」そう言うと、本部へ戻ってマーシャル6で荷物を整理するために、タクシーを使って戻って行った。


「副艦長!」食堂へ向かう道中、声をかけられた。バーバラ達だった。

「あー。今は艦長代理としてここに来ている。さっき大佐による艦内放送があっただろう?」

 バーバラの泣きそうな声にスズキ中佐はぶっきらぼうに答えた。

「で、どうした?」


「まだあの二人、出てこないんですよ!」

「・・・また?」

「はい!」そしてリンがついでにこう言った。

「この部屋の管理責任者がレベッカになっている以上、権限が無いんですよ。工兵の人でさえどうしようも無くて。あの年で工兵らよりも階級が上なんですから、断念してしまって・・・。晩飯食えって言っているのに聞かなくて。それにもう一〇時になりますよ。あの人たち、午前中は寝ていて、午後に起きだすと急に訓練に割って入って来て。これで七時間連続ですよ。」どのみち、こうなったあの二人を止めるにはこの方法しかない。副艦長にチクってしまうことだ。


「簡単な話だ。コンセントを抜けば解決だ。」バーバラたちは少し戸惑った。

「壊れますよ!絶対!」バーバラはそう言って止めようとした。前にブレーカーを落とした時、不具合が生じ戦闘艇部隊の隊員は始末書を書かされる羽目になっていた。工兵たちにも迷惑をかける結果となり、責任がカールとレベッカ、そして副艦長にも行ったのだった。


 が、中佐は聞かずに警告した。

「あと一〇秒で出なかったらコンセントを抜く!これが最後通牒だ!一!二!三!四・・・」

 いきなり、カールたちの部屋の扉が二つ、開いた。開いたが・・・後ろから出てこなかった。ずっとコックピットを模した椅子に座って、コントロール・バーを強く握りつけたままだった。

「待って下さい!艦長代理!あと一〇キルなんです!スコア四桁でレベッカに勝てるんです!いまギリギリなんですから!あと三分!三分だけ!!」目が赤く充血した状態でカールは叫ぶように言った。


「ほーお。・・・分かった。」そう言うと、工兵に問題ないか確認して、そのシミュレーション部屋のコンピューターをシャットダウンさせた。


 これなら壊れることもなく、始末書を書く必要もなくなる―スズキ中佐の分は。もっとも、あの二人には同じようなものであったが。配線管理の区画はその部屋の真横に位置していたため、声が透き通る程良く聞こえた。実際は透き通るどころか鼓膜を叩く程の呻き声だったが。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!畜生めええええええぇ!」一応ここに記しておくが、こいつに「誰か」を彷彿とさせるようなちょび髭は無い。・・・美大に落ちた人が主人公の映画の空耳だ。

「あたしの七時間を返して!返してええ!」本気で泣き出してしまいそうな二人だった。


「何でまたこんな事をやってる?今度は何を賭けてた?ビールか?」隣の部屋から戻って来て、呆れたように艦長代理のスズキ中佐は言った。

「・・・。」だんまり。


「第一、ここはゲームセンターじゃない。訓練用備品だ。それにこんなもので体力を使ってすぐ出撃したいか?まさかね。それと・・・」中佐は一呼吸置いていった。

「大人のヒステリーはあまり良い物じゃない。お前らは一八。選挙権は一六だが。これでもお前らは立派な成人なんだぞ。酒は二〇からだがな。わきまえてくれ。ま、そんな訳だ。ほら、あいつらはお前らのことが心配でたまらなかったようだ。戦場での生存率に大きくかかわってくるからな。飯食えよ。」

 そう言うと、カフェテリアに向かっていった。


「・・・てくれ。」

「へ?」バーバラは戸惑った。

「だから今その手に持っているプレート・・・そう、そこにある水、持ってきてくれ・・・叫んだのが酔っている状態にとどめを刺したらしい。気分悪い・・・。」カールがそう言うと、少し目を瞑ったまま、座っている状態でうつ伏せにぱたっ、と倒れこんでしまった。酒を飲んでぐるぐるバットを二〇〇〇回も回った後の気分だった、と意識が回復した後、医務室でバーバラとリンに見守られながら言っていた。レベッカと同様に死ななかったが。

 カルテには、長時間の画面の見過ぎと、「飲酒」と脱水による熱中症、と書かれていた。前日のアルコールが抜けていない状態で行ったのだ、当然である。


「遅かったですね。艦長代理。」厨房職員長のヤマナシ・ケイイチはこう言った。彼は軍属である。

「遅かった?」

「ええ。」

「参ったな。何か余っているものでいい。」少し困った。今日は月曜日、飲食店は休みの店が多い。元から閉まっている店が多かったが。そしてスズキ中佐は艦内でいろいろ仕事があったので、すぐに戻ってきたのだった。

「自動販売機にあるカップラーメンとハンバーガーのどれかはあるのですが・・・。」

「仕方ないな・・・。」

 そして、中佐は三ドルを入れた。十数秒後、お椀に麵、ゆで卵、ネギの順で乱雑に乗っけられた後、熱々のしょうゆベースのスープを注がれたラーメンが出てきた。

「たまには、これもアリか・・・。」そう呑気に言って、熱そうにお椀を持ち上げたスズキ中佐だった。


 いつもと変わらない日常。戦闘もなく、大佐からの無茶ぶりもなく、平穏が続いていた。だが、大佐たちが戻ってきた途端に、その平穏が壊される命令が本部から下されることになる。

「なあ、『畜生め!』って・・・?」

「ああ、ドイツでは・・・」コールに問われたカールは、言いかけたが、言ったのを後悔した。

「『Sie ist ohne Ehre(本当の読み方は「ズィー イスト オーネ エーレ」。日本語に訳すと「恥知らずめ」、の意。)・・・?』」まずい。ここにはネイティブのドイツ人がいる。ドイツ人コミュニティで生まれ育ったバーバラ・ミュラーが。

「カールさん、見損ないましたよ・・・。」その手にはブラスターが握られている。何で知っているんだよ!そうカールは思った。

「・・・分かった、分かったよ、だからそれを下ろすんだ!悪かった!悪かったから!!」

「誤って許されるなら戦争は起きませんよ!」バーバラの銃口が火を噴いた。


注釈:この前書き、後書き小説は本文を元にした「茶番」です。お気になさらず。

 え?なぜこれを続けるか、だって?それは・・・「滑稽だからさ」。


※ズィー イスト オーネ エーレ・・・「ヒトラー~最後の12日間~」という映画に出て来たセリフ。日本語で「畜生め!」と聞こえることで有名。詳しくは、youtubeの「総統閣下シリーズ」にて。

(なお、これからパロディしたものを随時公表しますので、どうかお気になさらず。)

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