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SCORE9:ツイン・ナーガ Ⅲ

スプラァーッタ!!(何言ってんだコイツ。)

スプラッタ回です。お気になさらず、小学生以下の子どもは見ないで。普通に困る。


遅れてすみません、この時間帯だったら恐らくお酒とおつまみ・・・というべきか。それでは、どうぞ。

 国境付近の村に侵攻していた帝国軍のうち、アークへシスの駐留基地がある東の方の塹壕内で。

「幸い、こちらの死傷者は一二名。例の山賊の奴らはさらに死んだらしいが。」

「何とかなるだろう、今ここに居る奴らだけだと俺たちの人数差に対応しきれないだろうさ。」

 談笑が飛び交い、そして弾も飛び交う。アークへシス側からはショットガン・タイプの高エネルギー分子が、帝国軍はライフルの弾頭のような空気抵抗を排した弾を。


 どちらも膠着状態にあり、尚且つ決定打が出せない。一〇分、二〇分、いやそれ以上の時間が経過してもなお、戦線は変わらず、そして塹壕を前に掘り進めようとしても向こうは地面にたたきつけるように弾を撃つため、落盤による事故が起きた。

 一二人の内、落盤による死亡者数が五名。これは、ある意味未確認の脅威が本当に脅威であることを物語っていた。向こうも同じようにソルを「脅威」とみなしていたが。


 しかし、彼らには狙いがあった。




 東の森以外の場所では、残り一〇〇人の帝国軍が村のソルジャー部隊に襲い掛かっていたのだ。一応第二中隊・第四小隊の三〇人がソルジャー部隊に加勢していたが、やはり数の差というものはそう簡単に覆せるものでもない。パワードスーツを着ける間もない第四小隊はショットガンのみで対応するほかが無く、機動力にかけていた。

 この時代、もちろん生身での戦闘訓練を行っていたり、地球時代の防弾チョッキなども活用されてはいるものの、やはりパワードスーツの性能の存在が飛び抜けて、そのせいで陸戦=パワードスーツ、という構図が成り立っていた。しかし、彼らとてそう「やわ」でもない。なぜなら、「第二中隊」に属するのだから。


 戦場では、手堅く侵攻している二〇〇人の帝国軍の本部隊よりも、二分の一の分隊が戦果を挙げていた。第二中隊の戦死者数は今で八名、そのうち第四小隊は三名。ソルジャー部隊は六名。そして肝心の帝国軍の死者は今現在、二十四名。・・・今、シーディアのソルによる蜂型の「シャプト」によって、西の方から来ていた帝国軍の内三名が死んだ。

 人間を数として表記することは、不謹慎にも思えるかもしれない。しかし、彼らはそんなことよりも「一人でも多くの敵を殺す」ことを念頭に入れていた。相手の命を思いやる余裕はなかったのだ。


 一人、背後から突出してシーディアに襲い掛かった。ジンクスだった。彼の凶刃が彼女の首元を襲う。だが、彼女とて同じ失態を犯さない。彼女が握っている魔法杖を伝って、実弾のショットガンが火を噴いたのだ。

「おっと!!これは火薬の匂い!!」ジンクスは瞬時に理解した。クルバノフにはそれを作るだけの科学の発見はない。これは密偵の情報と自分自身の潜入調査ですでに分かり切っていることだ。

 これは例の駐留軍から譲り受けた物だろう。しかし、この杖を媒体として出てくるソルの制御機能を叩き潰せば造作もない事!


 ジンクスはすぐに実行に移した。周りから敵がわらわらと近づいて来るが、すぐに自軍のライフル弾の援護射撃で脳しょうを砕かれた。これで二〇人近くまで削れた。しかし・・・ここの「ソルジャー」達は恐らく王家の命令のよってギルド内部から派遣された「精鋭兵」!だからここまで手こずる、そうジンクスは思った。


 そしてシーディアは防戦一方だった。杖でかわし切れない部分はシャプトによって補っているが、それでもストックが無くなる。ジンクスという名のナイフ使いが即座にシャプト内部にある「グリーン・コア」、つまり帝国軍が強制離脱する際に使う、緑色の宝玉を作る時に出来る産廃物を密輸し固めてできた中枢機関をこれでもかと言わんばかりにナイフで的確に叩き割っていた。

「『シャプト』の技術は元々こちらの十八番でね!!」そして、戦闘中のせいか、ジンクスはハイになっていた。




「ほぉ、やるな、あの『マージ・ブリスツ』の落ちこぼれは。」ロレン・フェリス帝国陸軍少佐は傍観していた。しかし事はそう芳しくないようだ。駐留軍は依然として脅威のままで、シーディア、マクラーナ両名を潰したら即、そちらの方に兵力の大部分を加えて加勢する必要がある。

 シーディアを追い詰めている時点でその目的の半分は成功に近い、後は例のどこかに隠れているもう一人のソルジャーのあの女さえ。あの女さえ潰せれば。そう中佐は思っていた。

「隊長!塹壕部隊のうち、約四〇名が死亡しました!!」伝達兵の情報によって一層募る焦りと怒りが、同時に沸き起こった。このままではさらに大勢死なせてしまう。

「一度半数ずつ撤退させろ!!」怒鳴り声で命令した。本来そんなキャラでは無かろうに、そう自分で思いながら。

 そして、更に十数人を引き連れてジンクスが徹底的に追い詰めているのを加勢に加わろうとした。




「しつこいわねぇ・・・!」本当にそうだった。戦場、という特殊な環境でなければ、執拗に追い続けるジンクスはシーディアから見てまさにストーカーとも言えるのだった。だが、ここまで徹底してシャプトを潰されては、手も足も出ない。もうそろそろショットガンの弾も尽きそう。仕舞いには階級が高めの軍服を身に着け、そしてサーベルを鞘から出して切りかかった。そして、脇腹を刺された。

 掠っただけだが熱い。患部が熱い。終わる。ここで死ぬのね。・・・仕方ないか、今まで難民として生き永らえて来たのに、何をいまさら。散々死にかけて、ここでも生き延びるのかなぁ、何て思っていても、・・・もういいや。あの白い騎士さんの名前、まだ聞いていなかったけれど・・・。


 シーディアは、そう思っていた。目をつぶって、自分が死ぬのをゆっくり待っていた。しかし、その考えを改めざるを得なくなった。事はそう諦めない方がいいらしい。正確には「死」が訪れるのではなく、高台からやって来た実弾多段層ショットガンバレットだった。そしてそれを発したのはあろうことかマクラーナ。スナイパーさながらの腕前、なのはこの際どうだっていい。


 これのおかげで、フェリス少佐とジンクス以外の取り巻きは全部片づけられた。高速で飛ぶ銃弾は「ソル」で対応しきれないのか、躱し切れなかった。運よくジンクスとフェリスが躱せたのは、それはジンクスの反応速度がフェリスを射程範囲外に運んだからに他ならなかった。

「運が良い事。あの少年兵、まるで私があの時・・・いやいや、そんな事。」マクラーナは、山賊騒ぎの後に増設したギルドの物見やぐらで悠々と次の狙撃の準備をしていた。


 他の帝国軍が発火性の高い高純度の黄「(リン)」を飛ばしたが、それは無意味な事だった。炎はすぐにマクラーナの十八番の飛来物制御によって跳ね返された。逆に飛んできたリン弾によって敵の居た一帯は悲惨なことになっていた。服に引火し、悶える。第二次世界大戦では焼夷弾の材料として使われただけのことはある性能だった。


「どうするんです、フェリス少佐!」ジンクスは怒鳴った。

「どうするも何も、お前はあの女を狙え!後はこいつは俺がやる!止めを刺して確実に仕留める!」

「了解!!」いちいち会話に使う時間も惜しい。そして、ジンクスは戦闘に向かったが、それは、意外な人物との再会でもあった・・・。




「に・・・逃げろォ!」東側の塹壕では、混乱状態に陥っていた。足にタイヤを付けた一人の狂戦士が居るのだ、斧をもって、タイヤを高速回転させて急速接近してくる奴が。装甲も厚く、メイジ・ランサーでも押し返せない。ソルを束にして、密度を高め、更に少ない力で操ることのできる最新型でさえ。

 それほどまでにこの装甲は重いのだ。ならばなぜ、ここまで動かせる?!


 帝国軍たちの恐怖が増していた。

「民間人を巻き込んだ戦闘は戦争犯罪だ!この外道共!!」そして、タイヤのスピードも相まって、斧を横に構えたまま腕を固定するだけで、多くの兵の頭が飛んだ。


「悪魔・・・悪魔だぁあああ!!」これは、一方的な攻撃のはずだった。塹壕を掘る羽目になったが、それでも優位だったのはこちらの方だった。なのに、なのに、なのにぃ!

「なのにぃィィィ!!」一人の帝国軍工兵が、恐怖で顔を歪めながら地面をゆがめた。地面が液状化した。ここの地下は井戸が掘れる程水が豊富。

 だからこの戦法が有効だと見たのだろう。タイヤに泥を取らせて、捕まえるつもりだと、コールは感心しつつも、その手段が悪手だったという事を強制的に「叩き込んだ」。ジャンプして塹壕の穴を飛び越えるのと同時に、頭に斧がヒットしていたのだ。頭蓋骨を割られた工兵は、まだ若い。コールとそう変わらない年齢、いやそれよりも若いのだろうか。


「コール隊長の行動によって無効に隙が生じた!撃て!」第二小隊長・ニールは怒鳴った。そして、援護射撃というにはとても苛烈を極めた弾幕で、コールの反対側、帝国軍が逃げる先を次々と撃ち付けた。これで、死者は推定四〇名、重傷者五〇人を超えていた。手遅れに近く、残りの帝国軍は一時撤退を余儀なくされた。




 マクラーナは、シーディアが脱出用のシャプトで戦線を一時離脱するところまでしっかりと援護射撃し、ロレン・フェリスとやらの陸軍中佐の攻撃を食い止めていた。

 ここでシーディアに死なれては、今後のクルバノフが危うい。例え帝国軍の甘美な誘惑に誘われても、他の国はどうなったか。中央(ていと)と支配国の間では未だ政治的に安定はしていない。

 帝都に食料が入ってこない時に支配国から食料を買い叩き、その支配国が今度は飢えで苦しむ、そんな構図が成り立っていた。たとえ今それが起きていなかったとしても、第三・第五代帝の先例がいるではないか。食い止めなければ。


「・・・逃げたようね、今度は・・・」しかし、それをマクラーナが言った直後、後ろに大きな黒い影が見えた。それは、怒りで一杯の顔だった。その手には強く握られたナイフがあった。

「消えろォォォッ!」ジンクスは、いつもの冷静さを欠いていた。彼は戦いを一種のゲームだと思う癖があったが、それは彼の「美学」にあった。大量殺人者になるのではなく、華麗に、優雅に、そして知性をもって。だが、今の彼は復讐心で一杯だった。


 彼はナイフを振り下ろした。しかし、マクラーナはそれをものともせず、躱し、そして高台から落ちて行った。すると、ジンクスはこちらに向かってきた。

「何なの、一体?!」

「しらばっくれるな!!忘れたか?!八年前、お前が父さんを殺した!あの時!あの場所で!」

 すべてを思い出した。あの時、夫を殺したあの槍使いと顔が似ていた訳が!!


「父さんは勇敢に戦った!なのに帰って来たのは瓶の中に入っていた液体だけだった!お前が父さんの死体(からだ)を弄って!!」着地したマクラーナに、ジンクスは上からナイフを突きつけた。

「母さんはそのショックで体を弱らせて、姉さんは自分を生き永らえさせるために体を売って死んだ!貴族共に良い様に使われてな!父さんも!母さんも姉さんも!!皆・・・皆グチャグチャにしやがって!!」ジンクスは着地し、執拗にマクラーナに襲った。次第にナイフの速度が増した。マクラーナは瓶を叩き割って黄リンを地面に伝わせ、だがジンクスは横に躱した。


「殺してやる!お前をあいつらの悲鳴と同じ悲鳴を上げさせてやる!!」それを言った彼の顔は、怒りのしわ寄せに涙の筋が通っていた。


「私の夫を・・・ベーリングを殺したのよ!!あんたたちの進軍で!」

「知るかァ!そん時傭兵だったお前さえ・・・お前さえいなければ!!」止まらない、復讐連鎖。いつまでも続く復讐連鎖。そして、誰も知らない。これを止める方法を。




 ギルド本館に避難し遅れ、アルミナは自宅の窓から少しだけ確認した。すると、シーディアが中に入って来るではないか。

「どうしたの?!血が・・・!」

「マクラーナさんの、マクラーナさんの『ラボ』はドコ?!」

「あっち!」そして、アルミナが指さした方向に急いで向かうと、急に「ソーダの亜種」と呼ばれる部類の棚を見つけて、急いで注射したのだ!!


「どうして?!なんでこんなことするの?!」

「毒が回りかけたのよ、危ないところだった・・・。」そう言いながら、もう片方の手でシーディアは患部に手を当てていた。

「ガ・・・ガーゼ!!包帯!ほら!」アルミナは言った。そして、マクラーナの魔法杖を手に取って、外に出ようとした。


「何を・・・しようとしてる?!待って!アルミナ!」

「決まってるでしょ!第二中隊の人を連れて、シーディアを運ぶのよ!!」

「危険よ!戻って!」患部から大量の血が出ていて危険なのは自分の方だというのに、

「嫌!父さんは四歳の頃に死んで、・・・あれだけ『必ず帰ってくるら』何て言って!!もう誰にも死んでほしくない!!私は絶対死なない!誰も死なせはしない!」そう言って、第二中隊駐留基地への下り坂を降りた。




「何?!アルミナが来てる、だって?!」ベンは、叫んだ。何故、こんな前線に、それも子供が来る羽目に?

「どうも、シーディアは重傷で大量出血の模様、と!」ランスは大きく言った。もうここの前線は大方片付いた。死者は今では一四名。しかし敵の死傷者は一〇〇人を超えている。敵が無能なのではなくソルジャー達の苛烈な抵抗と、コールのかく乱。これが主だろう。


「よし、行ってこい!ランス、クレアの奴を連れてアルミナを護送しろ!」

「「・・・了解!!」」そして、アルミナの自宅へと向かって行った。

注:青酸カリは一応亜硝酸ナトリウムと結合して中和できなくはない。しかしこれには専門知識が必要で、第一自分たちが亜硝酸ナトリウムを手に入れることはできない(国内では禁止されているのだから)。

 それに、「注射」といったけれど、三パーセント濃度の一〇ミリリットルでしか医療機関は出していない。それも、五分かけて注射するもので、絶対安静は一番。これは応急処置というよりも医療処置。

 ついでに言うけれど、これはいわゆる「食品添加物」の一種で、発がん性物質でもある。アミノ酸と結合してガン物質ができる。少量だったら問題ないけれど、常日頃食べるのであれば変えた方がいいと。


 そんなところで。12/29更新!(ワンチャンこれ、パートⅥまで行くかもしれない。)

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