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SCORE7:マジック・エンパイア Ⅳ

第七章最後のエピソード。どうぞ。

 シーディアとコールの模擬戦のしばらく後、カールとキースは村の中を散歩していた。別にこれと言ったこともない。ただ、純粋に新鮮な空気を吸いたいだけである。夕焼けの前の、昼下がりの午後。そこで、ただボーっとしながらほっつき歩いていた。


「キース、聞きたいことがある。僕らが使えるか使えないかとか、そういうのはどうでも良い。シンプルに知りたい。『魔法』と言うのはどういうものなのか。」カールはしばらくの静寂の後に、キースに向かって言った。

「知って何になる?」

「・・・科学屋共が来る前に一足先に論文を書いて、一山当てたくて。」

「俗物め。」真っ当な意見。だが、カールはそこでくじけない。


「僕らは君たちに最低限の『科学』を教えるつもりでいる。でも、科学と言うのは手順を大きく挟む。確かに便利だ。でもな、その『便利さ』は僕たちの五〇〇〇年以上の歴史がある。」

 人類はエジプトやメソポタミアの古代文明の頃からロジックで動いていた。紀元前一二〇〇年よりも前には既に文書記録が残されている。それから数千年、人類は災害、戦争、宗教、疫病など様々な要因で振り回されていた。

 そして、その人類の歴史の中で数少ない功績の一例たるものが「科学」なのである。


「つまり、その見返りとして、俺たちの『ソル』の秘密を教えろ、という訳だな?」

「物分かりが良いのは良い事だ。」苦笑しながらカールは言った。何とも図々しい言い方だろう。だが、キースには否定的な感情はあまりなかった。


「まあ、いいだろう。なら、今見せてやる。・・・この小石が見えるか?」キースは立ち止まり、二〇メートル先にある大きさ五センチぐらいの石を指さした。

「これが何だ?」

「まあ、見てろ。」そう言って彼が手の平をその例の小石に向けると、小石が少し動いた。そして、低空飛行しながら、徐々に近づいていくにつれスピードも若干上がり、最終的にパシッと言う軽快な音と共に、彼の手元に小石が収まった。


「これは・・・この軌道は・・・」カールは少し驚いた表情だったが、今まで山賊騒ぎの時に魔法は散々見て来たと自負している。だが、これがいわゆる「基幹運動」だとするのなら・・・

「変な動きだろ?でも、これが『ソル』なんだ。」

 そうキースに説明されたところで、カールはより一層謎が深まった。何か、何か科学的に説明できるからくりがあるのではないか、と。あの軌道、どこかで見たことあるような・・・。


 数十秒黙り込んだ後、カールは口を開いた。

「『他』に出来ることはあるのか・・・?」

 そして、キースは答えた。

「アータルタはまた違った能力が使える。まあ、来い。」そう言ってキースはアータルタの家へとカールを連れて行った。




「何?今そんなに暇じゃないんだけど?」私服姿にエプロンを着けたアータルタはぶっきら棒に言った。彼女のお家の前で箒をはたき、掃除をしていた。彼女の実家はここにあり、そして小さいながらも雑貨屋を営んでいる。

「魔法は使わないのか?」カールは少し気になった。彼女は「優秀な」メイジだという評判らしい。

 この国でも指折りの実力者でもある、とクリプトンは言っていた。最初に会った時とは比べ物にならない程の印象があったが・・・。


「そんなことにいちいち使っていたら、いざって時に困るでしょ?」それもそうだった。

「・・・俺がここの掃き掃除代わってやるから、ほら、アータルタの得意な()()()()()、あれをカールに見せられないかと思って。」

「ああ・・・あれね。」そう言って扉を開けて、お願いね、と言いながらキースに箒を渡し、カールに入るように誘導した。


 カールは少し頭を下げてその店の中に入った。照明は行き届いており、小綺麗さを感じる、そんな雰囲気だった。

 その時、奥のカウンターから何やら四〇近くの女性の声が聞こえた。

「あら、お客さん・・・じゃなくて、アルミナちゃんを助けてくれた『空の民』じゃないの!なんとまあ、何と言うか、・・・」アータルタの身長と殆ど大差ないカールを二度三度見ては不思議がっていた。


 どうしてこんな子供が軍人を張っているのか、とでも言いたそうな表情でこちらを見つめていた。アータルタだって自分よりも二歳年下、何ならリンやバーバラと同年代だというものを。

「拍子抜け?」カールが笑いながら自分を卑下して言った。その女性の表情は少しだけ驚いていた。


「いやいや、違いますって!あの山賊騒ぎ時、ギルドの中にいたもので、意識が朦朧(もうろう)としていたもので。」

 カールは、あの時の人質の様子のおかしなことに違和感を覚えていた。酸素不足に近い状態だったためである。変なガスを使ったようにも見えたが、それも何か違う。あのとき入り込んでいた山賊たちはそれの対策を「何も」していなかった。

 ガスマスクも無し、酸素ボンベも無し。この文明はそこまで進んでいないことは明白だったが、だからと言って毒ガスを多用出来る筈もない。まして、己に被害が生じれば意味がない。


「もう、母さん。カールも冗談言わない。紹介するわ、母のフルーネよ。」

「どうも。」そう言ってカールは会釈した。そして、少しだけあたりの品物を遠目で見た。


 その雑貨屋は、奇妙な道具でいっぱい、と言うよりもむしろ本当に「日用品」を扱うものであった。ガラス細工に、ナイフやフォークに近い金属製の食器、ペーパーナイフに果物ナイフ、鉄瓶やペン、インク、紙の製品などが多くあった。

 ここで勘のいい人間ならば、これがどういったことを表しているか理解ができるのだろうか。普通の、それも一般庶民が「金属」の食器を普通に扱えるという事実を。


 地球人類史における金属製の食器、特に銀が使われた食器は高価で有名。果たしてこれは銀製品なのか、どうなのか。古代ギリシャなどで水の腐食を防ぐ効果があるとして銀製の器が使われ、その用いられる用途は年代を追うごとに変わって行った。

 中世では身分の象徴や毒物発見器として(昔、ヒ素を生成する際に硫砒鉄鋼が使用されており、銀が硫黄と反応して黒くなることから。)、一九〇〇年代には抗生物質が出てくるまでは重要な抗細菌剤として活用されており、人類に近しい金属の一つと言えるだろう。


 そんな銀を手軽に活用している程に、それも地方の一般階級が使えるとなると流石に話も変わってくる。そんな技術力を持っているとするのなら、明らかに己は何とも高を括っていただろう。そう、カールは思った。もしや、「中世」や「近代」などの区分で言えることでは無いのではないか。


「何ボーっとしてるの?早く『錆び落とし』を見るんじゃなかったの?」アータルタに言われて、カールは我に返った。

「・・・アータルタ。一つだけ聞きたいことがある。銀や鉄、銅などはこの辺りでよく取れるのか?」カールは言った。


「・・・まあ、山脈に近いし、鉱山は隣町にあるし・・・。ほら、ここの土地は山脈の丁度境目で、後は森に囲まれているだけに過ぎないのよ。だから、帝国からの襲撃にも会いやすい。でも、皆ここでの生活を大切に思っている。だから、戦うの。」

 これを地域の伝統と呼ぶべきか。彼女らが帝国と徹底抗戦する理由も分からなくはなかった。


「気になることでもあるの?」フルーネにそう聞かれたが、カールは別に、と答えた。

 そして、カウンターの奥へと向かっていくのだった。




 その裏は、鍛冶場になっていた。鍛冶場は二人いた。生え際に白髪が付いているものの筋骨隆々な壮年が一人、白のバンダナを着けた若い男が一人、そして彼らは何かしらの容器に()()()によって高温で流体になった金属を注いでいた。恐らくこれが店の前に売られている鉄瓶の制作工程なのだろう。

 カールは、るつぼから鋳型へと注ぐその様子を息を飲んで見ていた。るつぼから一滴もこぼさず正確に鋳型の「入れ口」へと入れ、そして次々とそれを満たしていった。


 だが、カールは同時にとあることを思った。「魔法を使わないのだろうか」、という事だ。先程キースがやったみたくドロドロに溶けた金属を浮かして運べば、いや浮かしたまま固めれば、鋳型すら必要ではないようにも思える。

 だが、それをする素振りはない。であるならば、何かしらの制限があるのではないか。




 工程がひとしきり終わったところで、白いバンダナを着けていた人物がカールに寄ってきた。

「おい、姉さん。鍛冶場に人を連れてきちゃあ・・・おっと、確か・・・」

「カルロス。カールで結構。どうも。」そう言ってお互いに握手した。

「こっちは弟のカルスク。で、向こうで一服タバコを吸っているのが父のアルゴノフ。」

 アータルタは一家の全員を紹介した。


「おお、『空の民』と言う輩も客として見学に来たというのか。変わったものだ。で、何の用で来たんだ?」アルゴノフはぶっきら棒に言った。・・・嫌なのだろうか?

「父さん、あまり悪く言ったら・・・」

「何が『空の民』だ。俺がこういうのは柄じゃあないんだがな、お前らは要はこの星を軍の前哨基地にしたいだけだと、違うか?」

「父さん!!」アータルタは苦言を言った。しかし、カールもそのことはよく理解していた。


「こちら側として当分得たいと考えているのは、『魔法』の技術の仕組みと、瞬間転移できるであろう緑の石の情報、そしてその成分だけ。・・・国だって、『魔法』に対してはあまり触れたくないんじゃあないかな・・・。」カールは、言い訳染みた感じで言った。この時ばかりは負けだった。


「これは、()()()()でなく、()()()()()()()か?」図星だった。


 カールは、ただそこに立ち尽くすだけだった。丁度その時。

「こら。いい加減にしなさい!あなた!」フルーネによる救いの手だった。彼女に後頭部をスリッパで殴られ、痛そうにしていたアルゴノフだった。


「イタタ・・・分かった!分かった!」アルゴノフは叫んでいた。これは、完全に尻に敷かれている。

「この子は向かい隣のアルミナちゃんを少なからず助けたんだから!」一八歳で酒も飲んでいる己に向かって「この子」と呼んでくれるこの人を嫌いになる理由を見つけるのはカールには難しかった。悪意が無く言っているのだから。


 結局、アルゴノフはただカールがどんな人物であったかを見極めるための「テスト」のつもりで行っていたらしい。なお、これはキースの時より「マシ」だったと、カールにはフルーネから伝えられている。

 なお、後日カールが「どうしてキースの時は厳しくテストしていたのか」と聞くと、

「娘が変な男と付き合ってたら嫌でしょ?でも、キースはそんな悪い子じゃないと分かっているからねえ。」だという事らしい。因みに、これはキースやアータルタがいない所で聞いている。バレたら困る。


 それはともかく、カールは念願の「錆び落とし」とやらを見ることになった。アータルタは樽の中に刺さってあった、使い古し(、と言うにはあまりにもひどく錆で覆われている程)の槍を手に取って、手をかざした。

「私たちは、さっき父さんがやったような鉄瓶の製造とかだったり、色々な製品を作って入るけど、錆び落としもやっているのよね。見てて。」


 そう言って手をスライドさせると、触れていた部分が一瞬で鉄の金属光沢が蘇った。カールは驚いた。錆び落としは従来、物理的に落とすか、重曹などで落とすか、ひいては二一世紀後期に一般化したレーザー式錆び落とし機が主流だった。

 だが、これは酸素を直接「拭き取っている」と評して良かった。そのままの意味だからである。


「どう?凄いでしょ?」アータルタは若干ドヤ顔でこちらを見つめていたが、カールの表情が驚愕と畏怖の中間にあったためか、すぐに元に戻った。

「凄い・・・いや、それどころじゃない・・・。」カールは、そこから二〇秒近く黙ってしまっていた。


「おーい、掃除終わったぜ。どこに箒を置けばいい?」店の扉を開け、中に入ったキースの声でカールは我に返った。そして、とあることに気が付いた。

「あと何回位これができる?」

「・・・あと二〇本ぐらい?でも、これは物体を動かすよりも難しいことよ・・・」

「個人差があるのか?」

「ええ、まあ。」


「姉さんは小さい時から『ソル』の扱いが上手くて。短気で怒りっぽいところがあるけど。」カルスクは笑いながら言っていたが、短気な彼女はそこまで寛容ではなかった。

「カルスク?」

「ゴメン!」カルスクには慣れていた。どうやったら「アータルタ」と言う名の黒色火薬(最早導火線ですらない彼女)に火の粉を付けないようにするかを。


 そして、カールはとある実験を思い出した。中学校の頃に行った「気体の実験」なるものを。水を電気分解させて、水素や酸素の性質を調べる、ただそれだけのものだった。

 この頃のカールはまともに授業を聞いていなかった。内容があまりにも薄かったからである。授業態度はしっかりしているように「見せかけ」ているくせに、裏では高校の化学の教科書を読み漁っていた。そんな学生時代であった。


 だが、その基礎実験が今になってようやく生かされそうな予感がしていた。アータルタの魔法・・・いや「ソル」がどのような役割を担うのか・・・。

「アータルタ。バケツに水汲んで店の外に行ってくれ。そして、何かしらの透明で丈夫そうなコップか何かあったら持ってきてくれ。もしかしたら、いや、もしかしたら・・・!」少し目がいつもよりも開き、そして興奮している状態であった。

「あるわよ。ガラスだけど。どうしたの、そんなに焦っている感じで。」そう言って鉄製のバケツと、ガラス製のコップを手に取っていた。


「どうした、カールにアータルタ。そんなに忙しそうにして。」キースは箒を持ったまま鍛冶場のドアの前に立っていた。どこに置けばいいのかを聞いておらず、どうしようもなかったため直接聞きに来た次第であった。

「丁度いい、キース。お前も来るんだ。もしかしたら・・・いや、絶対そうだ。そうに決まっている!」


「おい、どうしたんだ?!カール!気が狂ったのか?」

「元から狂っている!早く!」口元が笑顔と言うよりも、狂気と興奮の狭間の成分が生み出したものであった。

 そして、アータルタとキースは、カールに連れられて外に出た。


「・・・やっぱり大丈夫な奴だったのか・・・?」アルゴノフは嵐が過ぎ去ったかのような気分であった。さっきまでの喧噪さが嘘だったように。

「分からないけど、そんな悪人ではないと思うわ。」フルーネは言った。




「いいか、今からお前らに科学を教える!」カールは狂気をはらんだ目で二人を見た。

「『ソル』を知りたいんじゃなかったのか?」キースはやはり困惑していた。

「分かったんだ!いや、『理解っているかもしれない』んだ!科学と『ソル』は表裏一体だという事が!」


「・・・一緒?」キースの表情が少し和らいだ。どちらかと言うと「面食らっていた」に近いのかもしれない。だが、先程の困惑感は殆どなかった。

「そうだ!・・・よく聞け。今、水が張られたバケツの中にコップを入れる。」

「だから何?」アータルタは若干呆れていた。


「じゃあ、今こうしてコップを持つから、アータルタはコップの中の水を『分解』、いや『錆び落とし』してくれないか?」

「ねえ、馬鹿にしている?『水は金属じゃない』のよ?!錆びなんてできる訳ないじゃない!」意味不明なことを次々と言うカールに若干切れ気味であったアータルタであった。

「あー・・・、()()()()()()()。しかし!原理は一緒なんだ。まず、錆びの原因は何だ?」


「金属が最初の反応に戻ろうとしているから?」キースの回答を見る限り、電解的な化学反応である、と言う考え方は少なくともこの国には伝達していないのか。

 それも仕方のない事だろう。七世紀前、かつて産業革命が成功したイギリスでは、蒸気機関の技術の海外への持ち込みは「国益に反する」という理由で禁止されていた。

 魔法による産業革命が発達しているジルカン帝国の面々が論文を輸出しないのにも一理ある。


 だが、これで言わないのはカールのポリシーに反する。

「違う。水と言うのは、酸素と水素でできている。」

「すい・・・そ?何を言っているんだ。」キースは戸惑っていた。


「まあいい。一から説明するのも苦労するな・・・。端的に言う。酸素は、はっきり言って『錆び』の根本的な原因だ。」

「錆びの・・・原因?」アータルタは戸惑っていた。今まで何も考えずに錆びを落としていたのだが、それが何によってなされているのかが分からなかった。いや、分かる必要性も無かった。

「そう。今まで錆びだと思っていたのはその酸素っていう気体だ。空気中に存在して、物を燃やすことや、僕たちが生きるために必要な気体でもある。」


「・・・つまり、私が今まで行っていたことはその『酸素』とやらを金属から強制的に除去することだった、てこと?」

「物分かりが良いのは実に良い事だ。」カールははにかんだ笑顔で言った。

「じゃあ、理論的にはできる訳ね。」


「仮説が正しければね。まあ、きつかったらストップするんだ。金属から分ける時と比べ慣れていないだろうからね。」

「分かったわ。」そう言って、アータルタはバケツの水の中に手を突っ込んだ。気泡が出て来た。細かな気泡が次々と出てくる。

 彼女は集中していた。本当に慣れない手つき、顔つきでいた。一〇秒してアータルタが水面から手を放したその時には、コップの中は水ではなく、空気とは違った気体で満たされた。


「流石に水がここまで変な感じだなんて思っていなかったわ・・・」アータルタは少し奇妙な表情だった。まるでガムを踏んでしまった人の顔つきだった。

「結合自体はそこまで金属と比べ強くないから。」カールには、もうこの「ソル」の力が何なのかを理解していた。


 そして、カールは板材をコップの口の部分に置き、そして懐の中に入っていたマッチに火を着けた。宇宙空間でも火が付く優れものだ。

「もし、僕の仮説が正しければ、ここからワインのコルクが抜ける音が出て水ができる。さて、どうか。」カールは緊張していた。アータルタとキースには不可思議に見えた。だが、次の瞬間。


 ポン、と軽快な音と共に、ガラスが縦に割れた。幸い、カールや他の二人には破片は飛び散らなかったが、初めての事態にこの二人は衝撃が隠せなかった。


「おい・・・カール・・・これは・・・」キースは、散文的に言葉が思いつくだけであった。

「凄い・・・!」アータルタは、畏怖の心が芽生えていた。

 これが、科学。人類の度重なる戦乱によって発達した「技術」だった。だが、その技術は多くの人の命を救い、生活を豊かにしても、その更に倍の犠牲を生んだ。核の炎と言う名のハルマゲドンによって。


「これで、確信がついた。」カールは、最短で答えを見つけられた満足感を得た直後に、空虚感に見舞われた。そしてひとしきり興奮した後、冷静になって二人にこう言った。

「今日はありがとう。空を見てくれ、もう暗い。遅くまでごめんな、それと・・・」粉々になったガラスコップの残骸を見たが、アータルタは

「いいわよ、そんな事。これ、形があまりよろしくなくて売り物じゃなかったものだし。流石に割れるのは想定外だったけど。」だと言っていた。


 そして、カールは近くにあるアークへシス軍のテントへと向かおうとした。しかし、五歩ぐらい進んだ後に、

「あと、危険だから絶対鍛冶場の前の水でやるなよ!!」と念を押した。




「オグラ司令官、魔法の正体が分かりました。」カールは、テントの中でオグラ中佐とホワイトスクエアで話していた。

「結局、どんな能力だったの?」

「『分子を動かし自在に操れる力』です。まだ調べがいがありそうですが。」この時ばかりは、あまり物理や化学に精通していないオグラでさえもおののいた。


「分子・・・じゃあ、相手の肺の中を一酸化炭素で満たせたり、いっそ手っ取り早く人間の体を分解したりできる訳ね。」カールにとっては、これを一瞬で考え付くオグラの方が怖いと思っていた。

「ですが、色々制限もあるそうで。」

「まあ、そうね・・・どうしよ・・・まあ、取りあえず気を付けて。」


「はい、それでは。」そして、通話を切った。

 カールは、テントの外に出た。星々のなんと綺麗な事か。ずっと一つのことについて考えていたのだが、それが一段落ついて終わった。

「カール、飲まないか?俺とレベッカはもう二杯目だ。」コールが後ろから声をかけて来た。

「・・・どうして持ってこれた?!」


「へっへっへ・・・聞いて驚け、俺はもう二〇歳だから検閲に引っかからないのさ!」こんな二〇歳が居ることの方がよっぽど驚きだが。

(赤ワイン)か、(白ワイン)か、それとも黄色(ビール)か?」

「残念、(黒ビール)さ。」

「あぁ、あれか。苦いんだよなあ。」

「文句をいうな、酸味があっておいしいだろ。」


 そう言って二人は、レベッカの居る簡易的なテーブルへと向かって行った。

諸事情によって次回は11・29日です。どうかよろしくお願いいたします。


・・・なんか業務連絡だけになってしまっているなあ。

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