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SCORE6:ブラッディ・ドリーム Ⅰ

キャラクター・ノート

・スズキ・トモカ(鈴木 智香)(スズキ少将の奥さん。故人。享年48。核融合制御技師だった。スズキ中佐が軍に入るころに仕事で事故が起き、急性放射線障害で死亡。〈チェルカトーレ〉出身。)

・リューベック・デザートデューン軍曹(第二中隊・第一小隊所属。〈パシフィック〉)

・ズィブ・ファジュル曹長(同じく第二中隊・第一小隊所属。〈エーゲ〉)

・トマス・ロック伍長(第二中隊・第一小隊所属。〈ゴールド・イーグル〉)

・モディ・ダイオライト一等兵(第二中隊・第一小隊所属。〈ミシガンベルツ〉)


さてさて・・・新登場の「アルファ」共も・・・。

・キース(ソルジャーギルドの部隊長(まあ、よくある「冒険者ギルド」みたいなシステムみたいなものだと思ってくれれば)にしてファイター。脳筋・・・という訳でもなく、この星の住人がほぼ皆使える謎の力「ソル」のエネルギーを筋肉の収縮・肉体強化に当てている。知能は高いがカールと同類(端的に言って馬鹿)。)

・ア―タルタ(キースの部下。実はキースと恋仲。水の扱いに長けた優秀なメイジ。

※え?炎の方が上手いだろ、だって?あれは水源がまともに使えないときの「苦し紛れの苦の一手」だ。無から有を生み出すのができないのと同様、雨の海だと強いが晴れの陸では無能、それが「水使い」の宿命。)

・シーディア(メイジ。シャプト(「ソル」を動力として操るやや大きめの人形)の扱いに長けている。※「あ●るかん」ではない。)

・クリプトン(アルミナの住んでいる村のギルド・コマンダー(支部長みたいなもの)。ファイター。メイジではない。)



 ところで。この小説の登場人物にして準主人公「レベッカ・フリート」、こいつはファッションブランドの「レベッカ・テイラー」と、80年代に活躍した歌手グループの「REBECCA」とは別物。(なお「フレンズ」と「ヴァージニティー」の曲は好き。リズムが好き。)

 西の森の制圧は楽ではなかった。だが、彼らはあくまで最初の別動隊に過ぎず、五人の斥候しか居なかった。第一小隊の内一五人がそこに留まっていたため、村の人がそれに気づく前に目にすることができた。性別は全員男だった「かもしれない」。

 一部確認しようにもない遺体がいくつか存在したが。


 まず、ランス・ファードック一等兵が彼らの姿を確認し、彼らを初手で撃つことができたが、かすっただけで運が悪かった。


 そしていきなりナイフを投げつけられ、避けざるを得なかった。いくらパワードスーツの性能が良くても、相手は魔法という名の物理演算無視の能力が使えるという。避けざるを得なかった。

 六時間後、砂漠のベースキャンプに戻り、成分解析をして分かったことだが、ストロファンチンという名の、「毒草からとれる」成分が塗りたくられていたことが判明していた。貫通するかどうかはさておき、刺されたら三〇秒後に心停止、という代物だった。

 ここの星に、その成分を所有する生物がいることに驚きだったという。地球とあまり変わらない、とは言うものの、そういった危険要素(人類種にとって)も当然存在するわけだ。母なる大地は時折、どうしようもない木偶息子にお灸をすえるものなのだろう、きっと。たまったものではない。


 彼らはまずその人物を、ナイフを避けながら射殺した。ブラスターの細い線が頭を貫いた。頭から割れた水風船のように血が出るその様と、コール隊長の話から察するに、彼らは人間としての体を持っていることを再確認した。同じなのだ、DNAも、色々と。魔法が使えるという特異点には目を瞑るとして。それに加え、彼ら現地民は中世の武器で対処している。この二六世紀の科学力に。


 よくゲテモノのようなエイリアンが出てくるSFホラー映画では、対処のしようがない。だがしかし、人間と言うのなら話は別だ。こちらは正規兵だ。こういうことは戦闘中に考えてはいけないのだろう。だが、こっちはキョウコ大隊長の訓練を乗り切っている、そうランスは思わずにいられなかった。


 ランスは続けて三人の腕や足を撃った。一人は体に当たり、大きなテーマパークに存在するような噴水のように口から大きく血を吐き、倒れた。一切の動きもなくなった。

 彼のその死に様を目撃し、残る三人は逃げ出そうとしたが、足をやられた人物は逃げられず置いて行かれた。残留部隊のうち三人が彼の周りを囲い、軍用の電磁式結束バンドを装着した。無理に外そうとすれば手ごと焼け落ちる仕組みだ。これで残る二人。

 だが、その二人が引き連れたのは五〇人規模の集団だった。その時に、コール達の応援が加わることを説明される。だが、かなりの戦力がここに集まっていたことは確かだった。


 S4からも火を吐く。バーバラの方が当たった様だった。次々と固定砲台の餌食となり、彼らは消滅したか、体の一部がきれいさっぱり焼け切れた。

「おいおい・・・これじゃあ赤い水風船じゃないか。わざわざやられに来るなんて。」

「この野郎!ランス、お前パワードスーツの回避能力が無かったらナイフが貫通していたのだからな!この腐れ頭皮!」小隊長のベンに怒鳴られた。


 何処かの訓練所の教官が言っていそうなセリフのそれだった。そして完全に調子に乗っていたランスだった。映画では真っ先に死ぬだろう。フル・・・メタル・・・おっと。それ以上はいけない。ともかく、彼は微笑んではいない。それでも、一〇世紀近くもの科学力の差が恐怖心をかき消していたのは確かだった。


 だが、山賊たちもやられっぱなしではいられなかった。山賊の一人がバーバラにやられる直後、クロスボウを撃ったが、そのスピードが尋常じゃなかった。撃ってしばらくした後にいきなり加速しだしたのだ。まるで宇宙空間でS4から射出したミサイルのように。その速度は軽くコイルガンを圧倒していた。気流も多少は変化していた。まるで奥から押し上げるように。


 少なくとも、クロスボウよりも「圧倒的に」破壊力・貫通力のある実弾ライフルでさえ防ぐ事ができる装甲だ。だが、その矢を腕にかすった兵士が一名いたが、パワードスーツのその部分に「大きくヒビが入った程度」で、肉体の方は打撲程度で済んだという。それでも、たかがクロスボウで、だ。

 それも傷一つついていない状態からの、である。亀裂も何もなく、この現象が生じたのだ。この事実が彼らをピクニック気分から戦場の香りを思い出させ、それと同時に圧倒的な力の差という差は微塵に感じられなくさせることになる。




 キースたちは、東の森の方での対処に追われていた。実を言うと、山賊は東と西の両方へと展開していたのだ。例え村が丸太の柵で、そしてその内部は岩石を多めに含んだ土の壁で覆われていたとしても、二方向から攻められている状態はあまりにも不利だった。そう、本来なら。


 キースは運がいいと自覚せざるを得なかった。それは、襲撃の直前に援軍にあり付けたのだから。あくまで「自分たちの技術を山賊に悪用されないように」という動機からだったが。ナイス、アータルタ。身勝手ながら彼はそう思っていた。


 アータルタが瓶を地面に落として割り、火の玉を生み出し、連射して敵を火だるまにする。だが、山賊たちも魔法で応戦する。カールたちにとっては、どちらの方もその原理を知る由もなかったが。

レベッカたちも応戦する。いつぞやのショットガンのせいか、エネルギー量は五〇パーセント程度だった。


 東の森からはあと三〇人位は山賊たちはいるだろう。流石に多い。レベッカの銃の腕前はカールよりも良かったものの、決して上手、という訳でもない。実際外す方が多かった。隠れながらであるというのもあるが、単に経験の差の方が大きい。

 本職はパイロットで、空間の認識能力には長けていても地に足が着く戦いでは分が悪かった。まして宇宙で巧みに逃げ回るカールは尚更だった。当たればいい方。殆ど当たる陸戦(変態、を上に入れる悪意を持った人間もいる)部隊とは違う点がそこにあった。


 コールが幾人か陸戦兵を村に残したのは妙案だったのかもしれない。彼らは目に見えた、青いスカーフを身に着けていない敵をレーザーで撃ち落とした。圧倒的に当てやすいショットガンと比べ命中率が下がってしまうのだが、当たれば強い。パワードスーツの装甲は、角度によっては溶かすこともでき、尚且つショットガンよりコスパがいい。だが、射撃の腕が優れた彼ら陸戦兵には、レーザーとショットガンの命中率は同じだった。


「右の方の弾幕が薄い!もう少し撃ってくれ、カール!」リューベリックはカールに怒鳴った。だが、カールは元々病み上がりの体だ。これで戦いに出ているのだから、かなりのハード・ワークである。


 キースの部下、シーディアが、馬のような、されど上の部分に収納された腕に取り付けられた剣と杖の先端部分から、どこか空想の「ケンタウロス」を彷彿とさせ、彼らはこの人形のことを総称して「シャプト」と呼ぶ、まさにこの文明の戦車とも呼べる代物を起動していた。


「シャプト・フレニテディラ(シャプトよシャプト、その名の通りに暴れたまえ)!」新しい単語で翻訳機能がしっかりとしないカールのホワイトスクエアだったが、そう彼女は言うと、いきなりその人形は動き出し、いきなり杖から火を噴き、剣を持っている腕が八の字を描きながら敵の居る方向へと向かって、

まるで赤色の刀削麵でも作るかのように「削った」のだ。

 子どもに見せたらいけない代物だ。ただし、非戦闘員は今、村の中央のソルジャー・ギルドの大きな建物に避難しているため、そのようなことには至らなかったが。


 大分人数は減ったようだ。頃合いだろうか、山賊たちはぞろぞろと逃げ帰っていくようだ。

「逃がさない・・・!」ジャンプしてシャプトに乗ったキースは、それを操るシーディアに怒鳴られた。

「スピードが落ちるのよ!降りなさい!」

「分かっている!・・・ほらよ!」そう言って横に飛び降りると、そこにいた山賊の首を切り落とした。

 血はキース自身に付かなかった。これがプロの仕事。だが、追撃も最後までは出来ず、戻らざるを得なかった。深追いは禁物だ。


 キースたちギルド隊は計三六人。死傷者は一人もおらず、周りからは「本当に運が良かった、そうでなければ村の皆は全員奴隷商に売られてた。」との声が上がっていたという。そして、山賊たちは撃退できたかのように見えた。いや、見えただけであった。




「お頭!不利ですぜ!奴ら、王国騎士団をも連れているようです!」山賊の一人が言った。

「・・・遂に奴さんも本気になってきたという訳か・・・。」山賊、と銘打っている割には眼鏡を付け、地図を広げるその様はまさに「軍師」と呼ぶに相応しい恰好だった。彼の名は、リオ・ウルツワイツ。帝国軍第三指令室・禁軍の将軍である。


「帝国の傘下に下らない、という意思表示だろうか。まあ、面倒ではあるな。君ら『黒竜団』を雇っている身分としては、早く落としてもらいたいところではあるが・・・。そうか、騎士団・・・。よし、あれを使え。」

 彼はそう言うと、二〇本ものメイジ・ランサーを、彼ら「黒竜団」に手渡した。槍と魔道杖のハイブリット、と言うべきその代物は「帝国」の兵器でもあった。新型ができて以降、あくまで周辺諸国の版図を広げるべく現地傭兵団に「ゲリラ戦」をさせるための物だった。


 そして、その槍を用い、全員でキースたちの方へと再び襲い掛かってきた。だが、リオは別の目的があるのか、別の方向へと行ってしまった・・・。




「嘘だろ!普通引いたら多少なりとも立て直すのに時間がかかるだろ!」カールは言った。

「分からないわよ!彼らの考えることなんて!ただのテロリストとは大違い!」レベッカは言った。

 実際そうだった。彼らはほぼ全員魔法が使える。恐らく、この星の住民全員が。確かに強力だ。もしかしたら、体力的にも強化できる手段があるのだろうか。だが、今こうであるように、もし、彼らが自分たちに牙を向けることになったら・・・いや、そんなことを考えている暇はない。


「今度は北の方の門からだ!」そこに当たっていた門番たちが叫びながら言った。門と言っても、彼ら山賊の身体能力だったら丸太の柵も飛び越えられた。そして、その山賊たちは毎回森の方から突撃していたという。毎回、毎回。

 もちろん、最初は門の方もしっかり守っていた。だが、森の方から大人数で来ていた。前まで門で待機していた人が、そちらの方に兵力が集中したが・・・森の方ではなく門の方から抜けられて、半包囲の状態に陥ってしまった。

 そして、その門番のソルジャーは・・・どちらも心臓の辺りを貫かれてしまった。


 現在、村の兵力はアークへシス軍六人、そしてギルド隊三四人の計四〇人。それに対し山賊たちは一二名。だがその槍は一つで三倍の敵をほふることのできる代物だ。中には二本も槍を持っている人もおり、彼らの戦闘力の高さが伺えた。


「コールから連絡が!」レベッカは言った。その内容は、二機のS4がカールたちの所へと向かっているとの事。S4自体は三〇秒で来るが、人員輸送のためにコール達は五分かかる計算だ。つまり・・・

「向こうは掃討できたのか!」トマスは言った。それは安堵に近い声だった。

 こうして、その五分間の間の戦いが、最終局面を迎える結果になる。

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