SCORE5:ザ・バンビッツ・ウォークライ Ⅱ
前回の回を読んだ読者の反応集(勝手)
「遂に『なろう』の悪魔に魂を売ったか・・・。」
「多分ここからチートとハーレムが出てくる(期待)」
「難解なくせしてそのまた更に風呂敷広げても良いのか?うまくできるのは一握りなのに」
「テンプレの極み」
・・・多分こんな言われ具合になるんだろうか・・・次ぃッ!
「そうか・・・それで、彼はどんな感じなんだ・・・?」クリプトンが言った。
彼は村の「ソルジャー・ギルド」のギルド・コマンダーチーフ(要は支部長)である。キースの上司で、この捜索の命令を下したのも彼だった。
「今やっと起き出しました。まだ頭が痛そうな様でしたが。」恐らくクリプトンの事務室のような所でキースが報告していた。
「言葉は通じるのか?」
「いえ。恐らく、異民族の類かと。」
「空から飛んでくる程の技術力を持った部族か・・・聞いたことないな。」
「他のメンバーは『神の使いかもしれない』と勝手に騒いでいましたが・・・どうなんでしょうか。童話に出てきた格好いい王子柄ってわけでもありませんから。」笑いながらキースは言った。カールがそれを聞いていたらイヤミの一つや二つは言うだろう。もっとも、その言語が分かっていればの話だが。
「酷い物言いだな。」
「事実ですから。少なくとも俺よりは男前ではない。」
「自分で自称するものでは無かろうに・・・。まあいい。」そう言って、キースには経過報告を怠らないように念を入れて退出させた。
「それで、どうなんだ、こいつは?」ギルドの医務室へと入って行ったキースが言った。
「今起き出したところよ。」近くにいたアータルタは答えた。
「で、何を話したか分かるか?」
「ぜんぜん。」
「そうか・・・。」そう言ってカールの目の前に立って話しかけた。
「おーい、聞こえるかー。」カールはなんか馬鹿にされたような気がして少しむっとした。
「・・・本当は聞こえるんじゃねえの?そうだな・・・一応、紙とペンをどっかから持ってきたり出来るか?」
「私は使用人じゃあないわよ。それにさっき、馬鹿って言ったでしょ。」
「うっ!・・・頼む。・・・いや、お願いします。」キースは頭を下げた。
「・・・分かった。」彼女は照れながら言った。言葉こそは分からなかったものの、ジェスチャーは似通ったものがある。少なくとも、お辞儀はこの星の住人にもあるみたいだ。
カールは勝手ながら「ツンデレかこいつ」とも思った。将来尻に敷かれそうなカップルを横目に見ながら今置かれている状況を再確認した。
服装は病人服。ローブみたいな感じで、一応トランクスは取られていなくてほっとした。ああ、良かった。こんな人前で見られたら恥ずかしいじゃないか。そう思ったが、誰かにそれを共有できないというのは辛いものだ。別にそのことを言いたいわけじゃない。だが、話が通じないという言語の壁にぶち当たり、孤独がより一層深まった。
考えてみれば、レベッカは自分が「導火線」と茶化しても話だけは聞いてくれる奴だった。今生きているかは分からない。だが、自分が今生きていて何もされていないように、多分捕まっても大丈夫・・・という訳にもいかない。
レベッカは女だ。生物学上では。あいつがどんな思想かは分からないが。それでも、あいつは女だ。そして、こいつら・・・いや、人に向かってこいつと言うのも失礼か。この人たちに捕まったらどんな目に遭うか・・・。
いや、どうせ援軍を連れてから行動するだろう・・・援軍?おいおいおいおいコールを連れてくるっていうのかい?!話が通じる相手でもない上、自分が捕らわれている以上強硬手段に出ない訳がない。まずいな、むしろいつもよく顔を合わせる第二中隊の面子共をなだめる番になるとは。そうだ、ホワイトスクエア、あれさえあれば連絡できるし、・・・今手元に無いんだった。
病み上がりの頭で精一杯どうにかしようと思索するカールだった。そして、自分の今置かれている状況をどうにかして打破・・・とは行かないまでも何とかしたい心境だった。
女の人からペンと紙が渡され、カールは文字を書いた。最初は「HELLO」の文字だったが、彼らは顔をしかめていた。これは困った。やはり通じない。では、四角い鏡みたいなホワイトスクエアの絵を描いてみる、これは通じたようだが、どうも首を振っていた。
気になる所だが、それよりも、ジェスチャーが自分たちの文化に似ていることが意外だった。うなずけば「いい」、横に振れば「だめ」、今はこれで意思疎通ができるかもしれない。
さて、どうやって今の状況を説明しようか・・・。ああ、なんかどっかの映画で見たことある、地球にやってきたエイリアンが少年の助けを借りて宇宙に帰るやつが。自転車で有名な奴だ。あの頃の映画やアニメは良かった記憶がある。少なくとも、生成AI交じりの不純物ではなかったから。酷いものでは脚本もAI、演出もAI、音楽もAI、監督もAIとか言うふざけたものだって。
いやいや、そんなことを考えるんじゃない。ホワイトスクエアをまずは返してもらわねば。あれはコミュニケーションに必要なものだ。そう思ったカールは拙いながらも絵でキースたちに説明した。最初はよく分からず顔をしかめたが、次第に納得し、キースはホワイトスクエアを取りに行った。
「何とか通じたんだろうか・・・。」そうぼやいたが、いまいち歯がゆい。これが旧世紀、大航海時代の頃に交流者が味わった苦難と言うべきか。
ドアの近くに覗いている奴がいる。子どものようだ。カールがそちらに視線を合わせると、すぐに隠れてどっか行った。別に気になった訳じゃない。どうせ話が通じないから、大したことも起きない。
キースがホワイトスクエアを持ってくる。ありがとうと言わんばかりにカールは会釈したが、どちらも複雑な心境だった事には変わりない。
「さてさてAIにイラストを描かせるか・・・自分の絵は『絵が可哀そう』とか言われるレベルだからなあ・・・。」さっきまで「AIはろくでもない」と思っていたが、必要になれば手のひらを返して称賛する。やはり人というのは浅ましく自分勝手な生き物である。
だが、それを開いた瞬間、身に覚えのない画像がいきなり現れた。
「トランスレーションまであと一九パーセント・・・」
一瞬ウィルスの類を疑った。身に覚えのない画像は詐欺だと考えるのが定石。だが、ここは電波も届かない。まして、チェルカトーレまで四・五光年はかかる。いくらワープ・ファイバー・システムがあるからと言っても繋がっているのは今、マーシャル6だけ。では何だ?
カールは数秒考えたが、やがて一人の人物の名前が浮かび上がった。
「コール・・・!」笑っていたが、目だけは狂人の光を放っていた。
「三、二、一・・・『アクティング・アルファ語』、設定完了。これより必要に応じて随時アップデートに入ります。」
「あっっの野郎おおお!自分のホワイトスクエアに何しやがったァ!」
「・・・言えるじゃないか、貴様ァ!」キースは喋るなり怒り出した。
「おいおい、ちょっと待て。聞こえるのか?!」
「ああ、聞こえるさ。・・・待て、本当に喋れているのか?」
「分からない、同時通訳かも・・・。」
「通訳?ああ、言語を変換するやつか。普通は外交官位の面子がやっているような・・・あはは。あのお偉いさんのぼんぼん共の仕事がなくなってしまうじゃねえか。」どういう訳なのか理解できず、ただ笑う事しかできなくなったキースだった。
「いやあ、驚いた。・・・自己紹介がまだだったな。自分の名はカルロス・パルマ。他の不届き者共は自分のことを『カール』なんて呼んでいるがな。」
「じゃあ言いやすいから『カール』で。」他の人が言った。
「あのさァ!」カール(一応ここでも「カール」と言う単略名称は使わせてもらう。決して不届き者ではないが。)は苦笑して抗議した。なんだ、面白い奴らじゃないか。
「で、なんでここに来た?目的は?」いきなりのキースの豹変にカールは少したじろいだ。何て言おうか。
「おっと、俺の自己紹介はキースだ。『パルマ』何て言う貴族はここらにはいない。さては貴様帝国のスパイだな?」
へ?帝国?貴族?何それおいしいの?・・・なんんて冗談言ったらこいつのグラディウスで切られてしまうだろう。
「それってなんていう国?」
「・・・じゃあお前どこから来たんだよ。」
「空。」そして、それを言った途端にキースと他のソルジャーも笑い出した。
それよりも、ドアの前に居る変な子ども(アルミナ、という人物であることを知るのはもう少し先になってから)が気になって仕方が無かった。ひょっと出てきてはすぐ隠れている。視線でもぐら叩きやっているんじゃないんだぞ、全く。それにこいつ、笑ってやがる。からかってやがる。僕はおもちゃか何かなのか、とカールは思っていた。
「こんな冗談を言う奴がいるなんて思ってもいなかったぜ・・・!」
「本当なんだがなあ・・・。」カールは小声で言った。
「どうやって生活するんだ、それは?」キースの声色が急激に変わった。もしかして殺されちゃったりする?これ。
この様に、少なからずとも自分の命を諦観して、どうなるか楽しんでいる節のあるカールだった。
「スノーボール・・・てあったりする?」コロニーのことを何て言えばいいのやら。
「スノー・・・?なんだそれは・・・?」キースは戸惑い、カールは理解した。どうやら翻訳は完全には行われないようだ。
「まあいい。取りあえず、翻訳できないものもある訳だ。でもどうしてさっきまで一部の単語はできたんだろう。それは置いといて、帝国って何?自分は今どういう国に居る?いや、それより・・・お前は何だ。お前たちは何だ。」質問を質問で返すのはルールに反するような気もするが、それは今のカールにとってはどうでもいい事だった。
今、こうして囲まれている以上、下手な動きをしたら殺されるかもしれない立場。ならば、その立場の中で精一杯情報を得ることが大事なことだとカールは考えていた。
「・・・いいだろう。まずは俺たちの方からだ。俺たちは『ソルジャー・ギルド』。まあ、要するにここの地域の防衛を担当している兵隊、と言うべきだろう。どうだ、凄いだろ。」
「その強気な口調さえなければ完璧なんだけどな、キース。」
「ク・・・クリプトンさん!」キースの狼狽ぶりにカールを含め全員が笑っていた。徐々にギャラリーが増えていき、最初はキースとペンを渡した女性の人(アータルタ、と分かるのももう少し先になってから。)だけだったのに対し、今では二〇人ぐらいの人数が押し寄せていた。
「この調子じゃあ、ペンは必要なさそうね。」そう言って彼女は帰って行った。カールは勝手に思った。
「レベッカと同じような雰囲気だ。合わせたらどうなるのだろう。どっちの導火線も一瞬で焼き切れたりして。」決して口には出せない内容だ。
だが、ちょっとした悪夢と更なる悪夢の始まりだった。
地球にやってきたエイリアンが少年の助けを借りて宇宙に帰るやつ・・・スティーブン・スピルバーグ監督の映画、「E.T.」のこと。まだ見ていないが今年中に見たい。
ツンデレ・・・元々ギャルゲーの登場キャラの「ツンツンしている面」と「デレている面」のギャップがあるキャラのことを指している。2005年から使われるようになった。(なぜ、カールがそれを知っているか、だって?・・・知らぬさ!)
知らぬさ!・・・機動戦士ガンダムSEEDに登場する、「ラウ・ル・クルーゼ」の言ったセリフ。相手との会話を完全に断ち切る、かなり有効な手段。彼女との喧嘩中に使ったら間違いなく別れ話をさせられるだろう。
例:
「この女だれよ!このラインメッセージ!私に隠れて浮気ってどういうこと?!信じられない!」
「知らぬさ!!」
私に隠れて~・・・「ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD」が元。2008年頃(つまりニコ動がまだ元気だった頃)、ネット上で流行。インパクトのある多数のMADが作られる。個人的にはニコ動の「ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されても不敗な魔術師」が大好き(要はヤンvsヤン)。
「お兄ちゃんの嘘つき!」
「何がだ?証拠は何もない。(下種の勘繰りに付き合っていられるか。)」
ヤン・ウェンリー・・・田中芳樹作「銀河英雄伝説」の、「自由惑星同盟」軍の元帥(※つまり最高位の軍人。)、戦術家だが歴史家志望で、元々はただで歴史が学べるから士官学校に入った人物。
一番のトラウマ。
「いいかい、ユリアン・・・軍人というのは、・・・」




