SCORE1:コンバット・ウェンディエゴ Ⅰ
最初は誰も読んでくれないのは承知の上で。
前書きで積極的に文章を「書きたい。」何て思うのは贅沢な考え方なのだろうか。それでも、書きたいものは書きたい。この駄文は別に読み飛ばしてくれても構わない。
「今何を書くのか?」だって?・・・それは・・・物語が少しだけ進んでからのお楽しみ♠
「どうしてこんなに暇なのかしら?」
いつものように全長十五メートル以上もある単座式宇宙用小型機(SINGlE・SEAT・SMALL・SPACECRAFTという戦闘機。通称:S4)の調整を終え、毎日の映像式シミュレーション訓練を終え、他に何もすることがなくなったレベッカは、いつものようにカフェテリアで足を組んでくつろぎながら凛とした表情でコーヒーを飲んでいた。
彼女の本名はレベッカ・フリート。アークへシス宇宙連邦国の所有する惑星探査用巨大都市型船〈チェルカトーレ〉の護衛艦、〈マーシャル6〉の搭乗員である。〈マーシャル6〉が半重力モードに移行してるために、彼女の赤い髪がふわふわ宙を浮き上がらせている。そしてそのグレーの瞳には退屈な表情を隠しきれなかった。
一応「探査船」と銘売ってるもののかなり巨大で、人口約四〇〇万人が住んでいる。半径約一〇キロメートル、全長約百キロメートルの円柱型の「コロニー」であり、「セル・コロニー」が十基連接してできているいる。本来は拡張をしやすくするための設計なのだが、何か事件があったときにはすぐにゲートを封鎖して犯人を捜索することが容易になり、また事故があったときには住民を避難させて後にブロックごと分離して二次災害を防ぐといった役割もある。
外側の表面には強化ガラスと液体金属との化合物でできた「液体金属ガラス(Liquid・Metal・Glassより、通称LMGと呼ばれる。)」が覆っている構造で、かなりの衝撃を加えないと割れることもなく衝撃を吸収し、仮に割れたとしても液体金属としての性質を引き継ぎ、徐々に修復していく仕組みだという。
なお、ブロックごと分離するときには、それぞれの「セル・コロニー」内部にある塩基性の「クローナ」という一〇本近くの棒がコロニーのリング全体の一二〇度の角度に突出し、LMGをただの「もろいガラス」に変えて、それを割りながら分離を進める、といった仕組みである。
多くの人が住んでおり、「国家」として成り立っている。セル・コロニーごとに議会があり、また、コロニー全体でも議会がある。国と県、国会と地方議会との違いといっていいだろう。そして、コロニーの中から国家元首のような役割を果たす「船長」を一人、三年に一度、全市民が選ぶ。その時になると、かつてのアメリカの大統領選挙のように白熱する。
さらなる新天地を求め、リスクを冒して船を進めるか、それとも未確認の惑星を見つけるのではなく「宇宙人」として地に足付けず生きていくか、という舵取りの選択の場でもあるからだ。
四〇〇万人の人口に食料を行き届かせるために数々の遺伝子組み換えの食品合成工場、野菜などの生鮮食品の天然式農業・養殖プラントなどの他、水道やガス、電気などのインフラ、住宅街、学校、娯楽施設などが充実している。食料やエネルギーの自給自足の体制は既に整っていた。しかしながら、この設備ですら十分ではない。なぜなら、人口も増えているからである。
一度世界人口が一億を切った程に落ち込み、種としての存続が危ぶまれた時があった。それが人々をダメになった地球から宇宙へと逃れるように旅だった経緯でもある。限られた宇宙空間の中でわざわざ人口を増やし続ける理由には一般市民の反発や宗教観といった政府の要望との乖離、そして「人類の救世主」などと自称する過激派の活動家たちなどの運動などによるもので、人口を強制的に制限するわけにもいかなかった。
選挙戦にも影響するうえ、これ以上は反発を生むだけだと中央部も判断したのである。政府からしてみれば、これはあくまでも「妥協」であって決して心から賛同してはいなかったが。
土地だけならまだしも(半径が限りなく大きいという点については目を瞑るとして)、水や空気は母数が限られているため、むやみに拡張するわけにもいかない。いくら節約しようがリサイクルしようが一〇〇%は一〇〇%。一〇〇%の母数が一二〇%になるような錬金術も存在しない。
それに加えて探査船と水素や酸素、レアメタルや有機物などの資源を巡って争うときがある。大抵はコロニーの探査船同士の戦争は滅多に起こらないが、前に水資源が豊富な小惑星地帯「リンガード宙域戦線」と呼ばれる〈チェルカトーレ〉と他のコロニーの〈メビウス〉のS4同士の戦闘があったこともある。どちらが先に攻撃したのか、は不明のまま開戦したケースも少なくない。大抵は小規模の戦闘になることもあるが、この時代になったとしても人間の本質は変わらないのだ。
そのための液体金属ガラスでもありあり、護衛艦であり、軍隊である。ただ、その軍隊の実際の正式名称は「対デブリ防衛団」とかいう安っぽい名前であるが。軍隊としての機能を保持しつつ、飛んでくるデブリも除去する。組織的には軍であるのには変わりないが、何とも人々の嘲笑を買うような名前だろう。
そしてレベッカはその軍に所属し、階級は大尉である。わずか一八歳にして。整った顔立ちではあるものの気が強い性格でけなされるとすぐに怒ったので、彼女の黒に近い赤毛をなじって「赤毛の導火線」などと呼ばれている始末である。
だが、そんな不憫なことを言われる「かわいそうな」少女は、二年前の探査船同士の戦争で一五基、敵のS4を撃墜しているエースパイロットである。その為の大尉という階級である。かなりの腕前で称賛される一方、同期から嫉妬の対象にもなっている。
そして、そんな彼女の怒りの導火線を普通よりも短いものにさせてしまった張本人がいる。それが今、レベッカの目の前に立っている。
「元気そうだな。でも洗浄用のオイルはここじゃなくても飲めるだろ?」
そう口にした彼の名は、カルロス・パルマ。「カール」と呼ばれている。彼もまた大尉でエースパイロット。空挺隊の中ではまともに口が利ける同期である。黒い髪と同様、性格も黒である。なお、彼も一八歳で未成年。こんな少年も戦場に出て戦うこの軍はまともとは言い難いが、これには訳がある。
「リンガード宙域戦線」の二年前に、探査船ではなくコロニー同士での大規模な戦争があった。その時に彼もレベッカも戦災孤児になってしまった。難民である。元々は別のコロニーにいた者同士だったが、コロニー・〈メビウス〉の所属する「南宙独立自治連盟」の攻撃にあって、命からがら逃げてきた。この科学技術において、ワープ技術によって移動速度も速くなっていたが、情報システムはその倍に進化し、何光年離れているところでも「ワープ・ファイバー・システム」によってすぐにコロニー間で情報が知れることができた。そのため、二人は辛うじて運よく助かった。
中には攻撃時では死ななかったものの、避難所の水、食料、そして一番減るのが速い酸素が枯渇して死んでいった地域もあったからである。そして、二人は行きついたコロニーで入軍。そして今に至る。この国からしても、難民出身者が志願兵になってくれることはとてもありがたかった。特にこのご時世であればなおさら。
「コーヒーよ。お子様にはまだまだ早いようね。」
「残念。僕は不健康なのは飲まない主義なのさ。」
「お酒は飲んでいるくせに、未成年。」
「君だって『一杯よこせ』と言っていたくせに・・・。お互い一八歳だっていうのによ。副艦長にばれたら自習室行きどころか、営倉に入れられてしまう。」
「あなたにはお似合いでしょうに?」
「ほお。僕は言うぜ。ボトルの七割は君が飲んだってな。」
「あら。私の方から言ってやろうと思ったのに。」
あまりにも皮肉を言われ続けて怒る気力をなくし、最近はイヤミのほうが多かった。カールの方も「導火線」をいかにして完全に燃焼させずイヤミと皮肉を言い、彼女を怒らせ「お禿にする」寸前まで続けることにスリルを味わうような、そんな性格だった。
しかし、レベッカも彼から直伝でイヤミと皮肉を学んでいるために、時にはカールを凌駕する皮肉をカールに向けて言ったりする。
元々、軍に所属する前はは純粋な性格で、真っすぐだった少女だったのが、精神を毒され、次第に皮肉やイヤミに性格のベクトルをさらに悪い方向に大きくしていた。朱に交われば赤くなるのと同様、白も黒で毒される。そして、
「なんだ?酒か?ダメだぞ、未成年。」長身で筋肉質、そして健康そうな青年は自分も未成年であることを放っておいてカールたちのいざこざに入ってきた。
「何を、お前も一九だろうが。」
「うるさいなあ・・・俺はごまかせるんだよ。それに俺はあと数時間で二〇だ。やっと二〇歳になれる。この国・・・コロニーでは二〇歳未満は飲んではいけないらしいからな。律儀なことだ。」
「まあいい。あと三分。そうすりゃあ勤務時間外だ。」
こののっぽな青年はティース・コール。長身で灰色の髪を持つ、カールと比べたら聖人君子のように見えてしまうくらいに落ち着いた性格の彼は、こんな「のんべえパイロット」などではなく、れっきとした「のんべえ陸戦兵」である。一九歳の彼もカールたちと一緒に酒を飲んでいる、れっきとした「悪友」の象徴である。
ただ、ティースはもともとカールやレベッカとは違って志願兵などではなく士官学校の兵器開発科に入りたかったものの志願者が多数おり、運悪く落とされたうちの一人であった。
不幸にも彼はフィジカル面では高水準だったため陸戦科に入れられた。そしてさらに運悪く、「リンガード宙域戦線」が入軍後すぐに始まり、小惑星地帯の大規模軍事要塞の強襲、破壊というかなりのハードな任務が彼の所属する第六連隊に与えられ、死線を何度もくぐる羽目になった。そして同じく大尉である。中隊長という中間管理職になってしまい、転向もしようにもできない。落ち着いた性格が部下からは「温厚だが、まさかその性格のせいでいつか途中で辞めるのではないだろうな」と思われていたようで、
「ここであなたがここを辞めててしまったら、この部隊に残るのはシャルマ中尉とキョウコ中佐だけなんですよ!ホントにホントに辞めないでください!」と言われる始末であった。
ただ実際、辞める気はなかった。また戦争が起こるかもしれない。そんな時に守ることができるのだろうか、家族や、友人や、悪友・・・もっとも、彼らも戦っているうえに絶対に生きて帰ってくる妙な安心感があったが。その思いが、彼がこの部隊に居続ける理由だった。
彼は今カールたちの前で突っ立ていた・・・ビール瓶を三本持って。
「今日はやけに気前がいいじゃないか。二〇歳の誕生日で善良な心がやっと身についた、とでもいうところか。」カールは9センチ以上もあるのっぽに向かって恭しくいった。カールは一六九、コールは一七八。かわいそうな身長差である。
「いや、こないだのポーカーで負けて自腹で払わされたやつ。」
「ああ、あれのことね。」レベッカはそう付け加え、カールの皮肉を無駄な心遣いの産物として頭の中から追いやった。
「あれ」とは先日、ビール瓶二本を賭けてポーカーでコールが負けて、全額払わされたことである。レベッカは知っていた―カールが左手の袖の中にスペードのエース、ジョーカーのカードがそれぞれ二枚ずつ持っていたことを。よくもまあ、スペードのロイヤルストレートなんて子どもでもイカサマだと分かるものを出してきたことか。
そして、三分経った。午後六時のアラームが鳴って三人は勤務時間が終わり、仕事終わりのビールを飲もうとしたその時・・・
「スクランブル!スクランブル!巡洋艦サイズの不明機が二機、コロニーに接近中!」
晩酌を台無しにする一声だった。
「・・・飲んでいないな?」巡洋艦―おそらく強襲艇ではないことを確認し、陸戦部隊の出る幕ではないと判断したが、やはり飲むのは躊躇した。
「大丈夫。」とカール。
「私も。」とレベッカも続く。
「じゃあ、よし、行け、カール。お前がイカサマした分は後で飲んでやるから安心して出撃してくることだ。」
「・・・!」黒い髪の「間抜け」は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「おいおい、まるで『どうしてばれた!?』という顔してるな?ばれてるさ。あんな左袖に何かありそうな仕草をして。さあ、行け!」
「悪いことするとばれるってことよ。あなたの性格から黒い粒子が周りにまき散らしてるんだから。ほら、グズグズしてないで早く着替えて乗って仕留めるわよ!」
「頑張れよー。」と、後ろから無責任な声がした。
言ってくれるな、そっちだって待機命令があるだろうに。カールはそう思った。運がよかったことに、アルコールは飲んでいなかったから2人は出撃許可が出た。
「全く何時だと思ってるんだ。細かいことは言わない。ぶちかませ。やれるだろ?」
管制官の無責任に近い声がしたが、カールたちは笑っていた。
「了解!」
「敵は二隻。ただ、格納庫があるタイプの・・・海賊船かもしれない。」
「海賊船?じゃあ〈メビウス〉の攻撃じゃないってことなの?」カールたち以外のパイロットが言った。
「そうかもしれない。ただ、こいつはノクタリスの新型の兵器を積んで、それも政府の勅命を受けた作戦の一環・・・の可能性もある。用心はしとけよ。」
「なんだ、大したことないじゃない・・・。」カールの後輩、バーバラ・ミュラー少尉は穏やかに言って、茶色い髪の毛をきれいにヘルメットの中に入れていた。
「おいおい、バーバラ、それで撃墜されかけるなよ?前の戦闘の時みたく尻ぬぐいはごめんだからな?」カールがすかさず後輩に皮肉を振りかける。
「まさか。冗談言わないでよ、大尉さん。これでもエンドレスモードは今では四〇〇機まではいけるんですから。」
「生きて帰ってこそ一人前よ。油断しないで。」レベッカが指摘する。
「はい!」若干一六歳の少尉のパイロットは気前よくうなずいた。
「全員準備はいいか?」
「「はい!」」全員がそう答えた。そしてみんな一〇代から二〇代の若いパイロットたちだった。
「おい、長くないか?『小説家になろう』の文章って言ったら大抵『端的に、そして小出しに』だろう?500年前のネタだけどさ。」
「うるさいな、カール。仕方ないだろう、本来9月までの公募に出そうと思って、だのにチェックが間に合わなくてここに出しているだけなんだから。」
「じゃあ、なぜわざわざここに出す?」
「読んでもらいたいからに決まっているじゃあないか。」
「ゴマすりやがって・・・。」
「おうおう、だったら最初に殺してやってもいいんだぜえ?お前さんをよぉ・・・。」
「おいおい!最初に主人公を殺す奴がいるか!」
「意外と珍しいものじゃあないんだ。最初の方で主人公が死んじゃう奴。それは、『500年前マニア』の君なら知っているだろうさ・・・!」
「分かった!分かったから!」
「分かってくれればいいのさ。」
まあ、こんな感じで書き続けます。好評だったら続けます。(読んでくれたらいいのだけれど・・・。)