SCORE4:レゴリス・ダスト Ⅱ
妥協は しない・・・
「かっ、閣下ッ!」チェルカトーレ・コロニーの宇宙港で。情報部機密情報運用課(別名キツネ)、チェルカトーレ支部に所属するアレキサンドラ・カヴァルカンチ少佐は、意外な人物の訪れに動揺していた。
「やあ、久しぶりだな。元気してたか?」顔色を一ミリも変えなかったアデレイドだった。
実はこの時、彼女は疑っていた。こいつもマクシミリアン少将の息がかかっているのではないか、という疑惑が。
カールに「キツネ」でも一部しか知らないコードを教えたため、カールから直接情報が来た、という訳だ。当然、マクシミリアン少将にそれをジャミングする方法を知らない。
例えカールとアデレイドの直接的な回線を切ったとしても、今度は周りのコロニーを経由して送るため意味がない。まさにコロニー・ネットワークだ。だが、多くの人がこれを使ってしまうとワープ・ファイバーが容量過多で遅延が生じ使い物にならない。故にこれは最後の手段である。
「・・・疑ってますね?ですが、私とてサボっていたわけではありません・・・ちゃんとホワイトスクエアの中に証拠は存在しますのでッ!」自信満々に言うカヴァルカンチ。
「何だ?録音か?」
「録画ですッ!・・・彼らの薄っすい後頭部を映したまでのこと。」そしてハハハ、と豪快に笑うのだった。・・・准将の前で。何という豪胆さ。
「後頭部・・・?」副官のリーゼロッテ少佐は気づいていた。これで、カヴァルカンチは完全に白だという事が。
「言わなくていい、リーゼロッテ。分かってるから。」笑いを必死で抑えるアデレイドだった。
「これで良いのだろうか。」マティーニ少佐は家のベランダで、ディスプレイの画面で映し出されている疑似的な空を眺めて外(されどコロニー内)の空気を吸っていた。午前一〇時に起きて、パジャマのまま何もしない一日。久しぶりだ。
実はあの後、カールたちが「スターピアサー」を回収する直前に、コックピットにばれない様にメモの切れ端を入れていたのだ。それには、
「・・・電子基板が終わっているのにあの野郎、強制でロールアウトさせやがった。外の方は出来てる。だから、基盤を『ウェンディエゴ』のやつで代用した。これとウェンディエゴは、システムが同じ奴だから問題はない。ちなみに、これは絶対ミッチ大佐に言わないでほしい。
『新型の基盤が欲しい』という理由で、二週間で新作を作れと言われた。本当は最低でも三月はかかるというのに。
そして実際無理だった。なのに、不安定な基盤を入れろ、と言ったんだ。出来ていないのにもかかわらず、だ。ミッチ大佐はカールたちにネガティブな感情を抱いている!
スズキ准将かローゼンバーグ准将に言ってほしい。自分はどうなってもいい。だから、こいつらの不正を暴いてくれ!」
と、書かれていたのである。
そして、これが有休を消費している理由であった。部下からも「危ないから休め」と言われる始末でもあったのだから。久々の自由である。とはいえ、今更何をすればいいのかも分からず、昼のつまらないテレビの電源を切って、ただひたすらに時間を浪費するだけであった。
その時、インターホンが鳴り、2Ⅾの画面が映し出されると、そこには情報部の帽子をかぶり、准将という階級を持っている三〇近い女性とその他数人がここにいるではないか。
さてはあの大佐の追っ手か?
「下手なことしてベランダから飛び降りるなよ、私はお前を救いに来たんだから。」
「そんな冗談が通じますか?!」
「下を見て見ろ、何人も『キツネ』がお前を見ている。ほら、今はクッションを敷いているぞ、お前がヘマしないように、だ。」
「何がしたいんです、あなたは!」
「ミッチのセクハラ野郎が憎いんだろう?ならば手を組め。」
「そんないきなり言われても・・・。」返答に困る内容だった。
「『ウェンディエゴ』が本来なら設計は君が担当していたということは皆が知っている。君の不幸はただ一つ。あの豚野郎を上官に持ったということだけだ。さあ、開けてくれ。でないと扉の修理費が私たちの経費から落ちる。だから、開けてくれ。」
怪しくはあっても、何度も何度も「豚野郎」だの「セクハラ野郎」だの暴言を吐きまくっているこの女性士官は・・・まだ信用できるはずだ。
「一〇分だけですからね!」観念して扉を開けた。
「それで、電子基板以外は問題ないわけだ。」アデレイドは言った。
「はい、ただ、あの野ろ・・・おっと、『あの』ミッチ大佐は電子基板が直らないということで説明していたら、あれは『そうか』、と言った後、私が後ろを向くと、笑っていたんです。とても気味が悪かった。」
「だから、電子基板を『ウェンディエゴ』のもので代用させた、と。まあ、カール達ならなんとかなるだろうな。」
「あの短期間で他にどうしようもありませんでしたから。・・・カールって誰のことを言っているのです?カルロス・パルマのことは知っていますが・・・。親御さんですか、もしかして。失礼かもしれませんが、若干雰囲気が似ていると思ったので・・・。」
「そう言われるのは初めてだな。私の甥だ。気にするな。」そう言うと、いきなり近づいて、ミッチの笑みと遜色ない位の笑みを浮かべて問いかけた。
「何故、こんなことをしていたと思う?」いきなりそう言われて、マティーニは混乱した。
「私をクビにしたいから?」
「半分正解している。だがな、これを聞かない限りは『あれ』が何を考えているかは分からないだろう。」そう言うとホワイトスクエアを取り出して、マティーニの目の前で動画を開いた。そこには、あの二人の後頭部が映っているではないか。
「・・・彼らを死に追いやり、その責任をマティーニとやらになすり付ける。」聞きたくもない音声が流れて来た。
改竄、副顧問、副官、シンデリア。すべてが繋がっていたという事実だ。
それと同時に、ある疑問が浮かび上がった。どうして動画の画面が、彼らの後頭部を映し出しているのだろう。上からとっているのは理解できる。だが、どうやって室内に入り込んだのだろう。
アデレイドは少し離れて、付け加えた。
「これは部下がダクトを通って撮ったものだ。清掃業者を偽って、というかそのフリをして同じフロアに入る。そして、『ダクトの中も掃除しますので。』と言って掃除もしつつ、ほふく前進で潜入したものだ。通信連絡網がマクシミリアン少将によって探知されている状態だから命令が出せなくてね。だけど、彼だけでここまで証拠を集められたのだ。驚いたよ。」
マティーニは少し笑いをこらえるのに必死だった。この時ばかりのアデレイドは、少年の目のように輝いていたからだ。
「あの時は大変でしたよ、中にゴキブリが居たものですからッ!」当の本人、アレキサンドラ・カヴァルカンチ少佐は満面のドヤ顔をしながら語った。
「証拠は集めるッ、掃除もするッ、どうだ、凄いだろッ!私はッ!!」ああ、これ以上自分を笑わせないでくれ。そう思わざるにいられないマティーニだった。
「もしかして、マーダーライセンス持ってたりします?」
「まさかッ!!」カヴァルカンチは否定したが、その部屋にいた人の皆が笑ってしまった。
ああ、ここまで大笑いしたのは久しぶりではないか。士官学校時代以来だ。すぐにあの野郎の部下になって八年もの間、ずっと自分の、いや工廠の皆の功績を独占し、曇天の気分で働いてきた。愛国印の狂気の元に。
だが、少しは良くなるだろう。今は殆ど戦闘が起きず、半ば休戦状態だ。保証はできないが。あくまで呼吸を合わせて大規模な出兵案をどちらも「自粛」しているようなものだ。
それでも、ずっとあるよりはマシだ。そして、そういう緊迫した状態でないから、今まで「キツネ」でも野放しする他無かった奴らを捕まえたり取り締まったりできるだろう。そうなれば、工廠の皆に何か恩返しもできるだろう。
「何か手伝うことはありますか?」いきなりマティーニはアデレイドに聞いてみた。希望、というよりも宣言でもしているかのような声色だったが。
「では、まずは着替えてくれ。これからスズキ准将にこのビデオを見せに行くのだからな。」
パジャマのままで准将という階級に会っていたことにやっと気が付いたようだ。カールに近しい部分が彼にはあった。
「嘘!本気か?!この俺が汚職?!」相変わらずのスズキ准将だった。
「仕立てようというだけだ、彼らは。私と手を組め。今、軍部でも犯人探しが本格的に行われている頃だろう。」いつもの手口で話を進めるアデレイドだった。
スズキ准将の勤務室で、アデレイドとマティーニは、スズキ准将の机の前で立っていた。流石にその情報を知ったスズキ准将。当然動揺はしたが、すぐに落ち着きを取り戻して経緯を尋ねた。
「どういう訳だ?」
「貴官が後出しで提案した惑星開拓案、あれは確かマクシミリアン少将を通して提出しただろう。その後、少将と中央の一軍人・・・まだ分かっていないため、ここでは言えないのだが、その人との通話データが残っていた。全くひどいものだ。開発資源を改竄する談合だったからな。何故少将なんかにそんな重要なデータを提出した?貴官自身が出せばよかっただろうに・・・。」
「ああ、『何故この私に行かせなかった?!本来なら私に行かせるべきだっただろ!』と激怒していて、もしこれ以上惑星のことで話を大きくするのなら、私を通してからにしろ、と。それで、あの紙を渡したまでのことだ。」仕方なく話を進めるスズキ准将だった。
先程まで読んでいたグラビア誌を机の下に隠して。
「例の提案書のことか。」
「そう。俺が行こうが行くまいが結局、発言権はローゼンバーグとロメロだった。私はローゼンバーグが下手なことをしないようにあくまで『保護者』の役をやっていたまでだ。」
「要介護、ではないのか?」
「あんたは時々きついことを言う。今回は私にか?」苦笑いするスズキ准将だった。
「しかし何故、今更少将の許可が必要だったのか。発見者はロメロだと、この私もあの場所で聞いていたのだが。」先程の問いかけの答えにはなっていないことは発言者のアデレイドには分かっていたが。
「宙域探査の部分ではあの少将は見向きもしなかっただろう。俺が中央に行ったことが問題だったのか?」
「・・・動機は分からない。だが、誰かに唆されて、こんなバレバレの汚職に手を出したわけだ。もっとも、私達『キツネ』が居なければ成功していたのだろうが。」情報統制にまで手を出していたのだ。救いようもない。そして、一呼吸置いて、アデレイドは続けた。
「だが、確定していることは、貴官が白、マクシミリアン少将とミッチ大佐は黒だということ。それだけで十分だ。今持っているビデオだけで彼らが犯人だという証拠は揃っている。さて、マティーニ少佐。貴官は今どこにミッチ大佐は居ると思う?」
やっと出番が回ってきた、と言わんばかりに彼は部屋の中に入った。活気に満ちた表情で。
「『シンデリア』の『シリコン・ヴェイル』という店によく行っています。今で丁度定時です。この時間なら行っているかと。『渉外活動』とかいう名目で。」
「さあ、准将、我々の逮捕劇の特等席のチケットを渡す、と言ったら?」
「ぜひ、受け取らせてもらおう。楽しませてくれよ、俺の人生がかかっているからには。」
「それでは、豚を豚箱に連れ戻しに行きますか。」その時のアデレイドの目は少年のように生き生きしていた。やはりカールと似通っている。
「昨日は確かエリーゼだったな、じゃあ今日はミランダにするか。」
午後六時半。シンデリアの検問を通り抜け、「下」の矢印の誘導する通りに「シリコン・ヴェイル」へと車を進めたミッチ大佐だった。
「もうそろそろロボットなんかに金を使う必要もなくなると言っても、感慨深いものだ。なら今日は一〇時間たっぷり可愛がってやるか。朝帰りだろうな。」恐らくこの場所でなかったら、間違いなく白い目で見られるか、憲兵に捕まるだろう。
特別歓楽街「シンデリア」。そこはカジノ、競馬や競輪、キャバクラや風俗店、それらが「合法的」に認められている地区だ。その理由は、税収がかなりあること。
多くの人が稼いだお金をそこにつぎ込んで、結果、税収が上がる仕組みだという。その集金具合はすさまじく、「第二の税務署」と呼ばれるくらいである。第九セル・コロニーに位置し、コロニー全体でも端の方にあるその区域は、軍の施設にも近いが治安は悪い。
電動モノレールでの移動が主な移動手段となってはいるが、その地区は常に憲兵や警察が行き来している。そしてその地区に住んでいない人は一八歳未満に入場制限が課せられる。
なお、カールがコールに「シリコン・ヴェイル」のネタでからかっていた時があったのを覚えているだろうか。その時、「精巧に作られた」とカールは言っていたが、あれは嘘だ。
実を言うと「人形」だと偽った「人間」である。もちろん、人形のものもある。だが、それはメンテナンスがかかりすぎる。かといって、本物の人だと性病を心配する客は入ってこなくなる。その上、「性病の抑止」の元、払う税金の金額も上がってしまう。
つまり、あくまでキャストを強制的に整形させ、最新型で性能のいい「人形」だと偽って、客に使わせる。そして、税金を払う必要がなくなった金の一部を「経費」として性病の治療などに充てる。ロボットということにしているため、客の抵抗感は薄れる。
「ロボットじゃないだろう」と言う客は一部いるが、最終的に暗黙の了解でそれを黙認している。どのみち、人間は「本物がいい」という本能には逆らえないようだ。
そして、車を降り、ミッチ大佐が興奮した足取りで歩いていると、軍服を着た女が見えた。褐色肌でまだ若い。こんな顔のキャストがいたら、また通う羽目になるじゃないか。そう思ったのも束の間、見覚えのある顔が次々と目の前に現れた。
そして、その女、よく見ると自分よりも階級が上じゃないか。思い出した。「キツネ」のアデレイドだ!
だが、もう遅かった。大勢の情報部の憲兵に取り囲まれ、難なく捕まってしまった。
「一体何に興奮していたんだろうねえ・・・。」ニヤニヤしながらミッチの「下」を眺めてこう言った。
屈辱だ。
彼女・・・アデレイド・ムーン准将は「キツネ」の顧問として「国民の生命が脅かされている時」に限り憲兵(軍の警察)を動員できる権限がある。この時はカールたち四人の生命とスズキ准将、マティーニ少佐の名誉が損なわれる危険性があったため、すぐに動くことができた。
「さて、貴官は何をしているか自覚が無いのか。それとも黙ったままなのか。まあいい。連行しろ。」そうして、逃走劇も活劇もなく、彼は連行されたのだった。ギャラリーが多数いる中、彼女たちは堂々としていた。こちらに非が無いという自信の表れでもあった。
そしてアデレイドは、憲兵たちに「シリコン・ヴェイル」の証拠押収に取り掛かった。
「それで、この『シリコン・ヴェイル』のキャストは、どうやら人間らしいな。それも難民だと。どうも、生活に困窮して、裏の人間に仕方なく身売りするしかなかった、という割合が多かった。」スズキ准将が初めて口を開いた。
「調べていたのか?」
「いや、元から知っていたさ。人間だということは。だが、一度だけそれを聞こうとしたら、いきなり泣き出して、『ごめんなさい』、を何度も何度も声を押し殺しながら言い続けていたよ。いたたまれなかったね・・・。そこからだ、調べ始めたのは。」
「どうしてそれを知っているんだ・・・?」アデレイドが疑問に思って、スズキ准将は何でもないと口を濁した。
「何でもない。それよりも、この店をどうするか。それも問題のはずだ。まさか見逃すわけにもいくまい。」スズキ准将は、まるで遠い過去を見つめるかのように「シリコン・ヴェイル」だった建物を見た。今では憲兵の捜索が進み、キャストの女性たちは毛布で包まれながらしゃがみこんでいる。
「良いのか?」
「良いんだ。俺自身、女を不幸にして幸福になる程狂ってはいないものでね。」
「・・・そうか。働き手はいくらあっても良いからな。それにこちらは情報部だ。仕事の斡旋は専門ではないにせよ、『犯罪被害者』として手を打っておくつもりだ。警察機関の協力もあおる。これは一般市民にとっても関連深い事だろうからな。」最終的に、アデレイドの判断に任せることになった。
「キツネ」の仕事内容は情報にまつわることだが、裏を返せばその権限しかない。つまり、情報は得られても、それが確固たるものでない限り、憲兵の動員が認められることは中々ない。
連行、という文言はあくまで憲兵を動員できた時の話だけである。物的証拠を得る手段を選ばないにしても、最終的には確固たる証拠が無ければ動員できない。あくまで情報部の中に集約されるこの機関は、必ず犯人を捕まえるためにその人物の調査を念入りに欠かせない。
その為、検挙率九九・九パーセントという驚異の数字を出していたのである。皮肉なことに、この事実こそ「歴史上幾ばくも繰り返されてきた秘密警察だ」との疑惑を育て、他の人間の畏怖と侮蔑を買う原因となっていたが。
「貴官はマクシミリアン少将と繋がっている。さあ、ここの司令官は誰と会っていたか、白状したらどうだ?」軍の取調室で、アデレイドは穏やかな口調で、されど辛辣な表情を兼ね揃えてミッチを尋問した。
「・・・言うかよ。」
「良いのか?こちらは名前も情報も知っている。もし白状するなら刑期を減らすように取り計らえる。だが、そうでなければ強制労働行きだ。大佐の階級も剥奪されて、残るのは貴官の詭弁ばかりでうるさい舌だけだ。」
恐喝ともとれる一言だったが、ミッチがやったことを思えば仕方のない事だった。そして、口を割らなかった。
「では、話を変えよう。貴様、電子基板に細工をしたな?」
「どうしてそんな足がつくようなことをわざわざ俺がしなければならない?」
「やっていない、というのか。・・・アレキサンドラ、あれを。」
「はッ、閣下。」そう答えると、例のビデオを再生した。
「・・・・・・嘘だろ。」殆ど声を押し殺し、誰かに聞かれないようにミッチは口から脱力感と共に吐き出したが、それは録音されていた。そして、それはアデレイドやスズキ准将、他に一緒にいた軍人たちにも聞かれていた。
「・・・ビンゴですね、閣下。」リーゼロッテは小声でアデレイドに言う。もう、ミッチは逃げ道を失い、沈黙していた。いや、魂が抜けたような表情で上を見つめていた。
「ああ、これで、少将もこの汚職に繋がっているという訳だ。」アデレイドが安心しきっていたその時。
「フフフ・・・」いきなり誰かが狂った声で、そして次第に大声で笑いだしていた。
それは、ミッチ・ハーグレイブという名の、塩害で錆び付きまともな音が出せなくなったスピーカーからだった。
「フフフ・・・フハハハハハ!アーハッハッハ!アハハハハハ!」
「かッ、閣下ッ!」アレキサンドラは動揺していた。情報収集はお手の物であっても、流石に狂人に対する抗体はあまりない。
「気にするな!こいつはただの時間稼ぎだ。」だが、帰ってきたのは思いもよらぬことだった。
「まさか・・・フフ!・・・あいつら、『ウェンディエゴ』の予備基盤も・・・マティーニの野郎が取り換えたやつも全部安全だと思っているんだろうなぁ・・・!フフフフ!アハハハハハ!」
「何だと?!」
「そうさ、俺一人が全部やったことさ。スターピアサーから汚職の計画まで全部なぁ!マクシミリアン少将はこの計画の一パーツに過ぎない!例え俺がこの計画をしくじって今までの権威を失っても、あんたも大事な大事な『たった一人の』家族を失うんだってなあ?!滑稽だぜ、植物動揺で寝たきりの実の娘の方にはそっぽを向いて、甥の方に執着するのだからな!」
アデレイドは思いきり、ミッチ・ハーグレイブという名の狂った笑顔に、拳を勢いよくめり込ませた。どちらも苦痛で顔を歪めながら。事情が事情なため、公に明かされることは無かった。そしてスズキ准将やマティーニも、死ぬまでこの件を口にすることもなかった。が、これは「キツネ」設立以来二件目の暴力事件でった。
今回のパロの元ネタは・・・。
あれは嘘だ・・・「コマンドー」の名セリフ。「殺すのは最後にしてやる」のアレの続き。だから、個人的にはシュワルツェネッガーが演じる映画の中で、コマンドーは「ターミネーター2」の次に好き。(コマンドーは「名言を集めたものが映画になった」みたいな評論をしていた人物がいた。・・・実際そうだ。)
ターミネーター2・・・同じくアーノルド・シュワルツェネッガーが主演の映画。人間の皮膚を被ったサイボーグが「とある」人間を「抹殺」するために過去に送らる、というホラー(?)・アクション。
怖いことは確かだがどちらかというとアクションのほうに重きを置いている。いや、アクションがメインだ。前作はホラーだったが。(あの金属音のBGMが夜眠るときに中々離れなかった。初見では。)
「I'll be back」は有名。
パロネタで若干毒素は・・・薄れるのだろうか。




