SCORE3:ダークネス・パール Ⅰ
人物が多くなってきたところで、今まで出て来たキャラクターの名簿をここに書きます。これからは、章が終わってから更新、という形で。
アークへシス宇宙連邦国
・カルロス・パルマ(第六戦闘艇部隊・副隊長。コロニー〈フランクリン〉出身。【一応これが主人公。異論は認める。だがこいつで書き続ける。】)
・レベッカ・フリート(第六戦闘艇部隊・隊長。コロニー〈ペレリンダ〉出身。)
・リン・ゼーラン少尉(第六戦闘艇部隊所属。〈チェルカトーレ〉出身。)
・バーバラ・ミューラー少尉(第六戦闘艇部隊所属。元々AKコロニー〈ルーベル〉に住んでいた。〈チェルカトーレ〉在住。)
・エリオ・ローゼンバーグ大佐(第六艦隊・巡行艦空母マーシャル6艦長。〈コンキスト〉出身。)
・スズキ・ヨシユキ中佐(マーシャル6副艦長・元機密情報運用課所属。〈チェルカトーレ〉出身。)
・ドラゴミル・ハイヴィチ中尉(マーシャル6・管制官。コロニー〈ゴールド・イーグル〉出身。※まだ名前で出していない。名前で出すのは4章に入ってから。)
・ダイアナ・ワーツ伍長(マーシャル6の整備長。二児の母。コロニー〈チェルカトーレ〉出身。)
・ヤマナシ・ケイイチ(マーシャル6厨房職員長。コロニー〈アンバーライト・マム〉出身。)
・オグラ・キョウコ中佐(第六連隊・第六大隊長。コロニー〈アンバーライト・マム〉出身。)
・ティース・コール大尉(第六連隊・第六大隊第二中隊長。〈チェルカトーレ〉出身)
・ニール・シャルマ(第六連隊所属第六大隊・第二中隊・第二小隊長。コロニー〈ガンジス〉出身。)
・セオドア・マクシミリアン少将(チェルカトーレ防衛責任顧問・名誉階級保持者。祖父が初代デブリ防衛隊司令官長だったことから。コロニー〈ゴールド・イーグル〉出身。)
・スズキ・ソウマ准将(チェルカトーレ防衛責任副顧問。セオドア少将の次席。〈チェルカトーレ〉出身)
・ナターシャ・レアニール中佐(スズキ准将の有能な副官。冷淡。〈ペレリンダ〉出身)
ノクタリス
・ハビエル・ロメロ(軍属・中型輸送船〈クラ・20〉の総舵手。ノクタリス・コロニー〈キリマンジャロ〉出身。)
情報部・機密情報運用課。それは「国及び国民にとって害と為す情報を取り扱い、未然に危機を防ぐものとする。」と、憲法に明記された部署である。
ノクタリスとの戦争が勃発して五年後、アークへシス側が苦境に立たされた時、「国力向上」の名目で作られたこの法律は当然、批判の的となった。秘密警察のそれだったからだ。ただし、「この条文はあくまで戦時中の特例措置とし、戦争終結後ただちに解散するものとする。」との文言が記載されてはいた。
だが、それだけでは知識人などの有識者は黙ってはいなかった。当然、首都コロニー〈ゴールド・イーグル〉を含むアークへシスの主要コロニーではデモが起きてしまい、軍が出動する事態にまで発展した。
発砲こそなかったものの死傷者は全体で二〇六名、負傷者六〇〇〇人という数字をたたき出してしまった。一年後にノクタリスが大々的なコロニーの攻撃を行って、計六基ものコロニーが宇宙の塵と化してしまうと、その反論は無くなっていったという。
表向きはテロ防止やスパイ対策のための捜査を謳っているが実際は「国益・国民の生命に損害を与える危険性がある」人物を連行し、脳周波を使うポリグラフにかけて尋問し、情報を吐き出させることが主な仕事だ。
しかしながら、読み取る機械が普通の警察が扱っているものと比べ「敏感に反応する」という特徴があるという、その情報が流布された。
最終的にそれはデマに過ぎないものだったが、これが「間違いだった」と証明されたのは終戦を迎えてからだ。だが、連行・有罪までの流れが九九・九九パーセントの驚異的な確率で行われていることから、当時から侮蔑の念を込められて「キツネ」と呼ばれていた。
他にも、特定の一般市民(国家転覆活動者と思わしき者)の通信傍受や、一時期は政治的プロパガンダのⅭⅯ制作も行われていたりと、「情報」を操作するエキスパートでもある。そしてそんな情報将校の彼らの昇級は早い。故にエリートと称される人々の仲間入りを果たしていた。
アークへシス首都コロニー〈ゴールド・イーグル〉にスズキ准将率いる一行が到着して早々、彼らは休む暇もなく、中央議場へと進んで行った。中央議会で開かれる評議会で「有水源惑星の開発調査」に向けた提案の提出を見届けるおよそ三〇分前のこと。
トイレに行ったローゼンバーグは、奇妙な面々に遭遇していた。
女性将校にして機密情報運用課のトップ、アデレイド・ムーン准将に。そして二人の護衛を連れていた。議会会場のトイレ前廊下でのことだった。
「これは・・・ローゼンバーグ大佐ではないですか。」アデレイドの冷たく突き放すような声で大佐はすぐに感じ取った。彼女の刺すような目がこちらに向けられていることを。「仕事を増やしやがって」とでも言いたげな表情だ。その目の下には少しばかりかクマができていた。
悪い人ではないとは知っているが、少々行き過ぎたところがある、とスズキ中佐から情報を前もって受けていた。なお、子どもを殴ったのは前任らしい。だから、この人は違うと願いたいが・・・どうだろうか。この女性将校は元々、AKコロニー〈フランクリン〉に住んでいたらしい。そして、そこはカールが住んでいた所らしい。・・・これは詮索すべきではない。
自分が何を考えていたか悟られないよう、すぐに頭の中を整理したローゼンバーグだった。
「ええ、どうも。」
「いち早く情報を拝見させていただきましたが、・・・にわかに信じがたいですね。まさか我々人類の当初の目的が、ここからたったの四・九光年でたどり着く距離にあったとは。」アデレイドが言う。この情報は、軍の限られた人しか知らないはずなのだが。情報将校なら仕方ない。
「外宇宙(ここでは地球から半径二〇光年から外の宙域のこと)は、戦争が始まってから探索の機会がありませんでしたから。・・・それでは、失礼。」
「こちらも勝手ながら傍聴させてもらいます。では。」アデレイドはそう言って、両者は互いに逆方向へと行った。「傍聴させてもらう」?余計なお世話だ。ローゼンバーグはそう思った。
「閣下。ローゼンバーグ大佐をどうなさるおつもりで?」アデレイドの部下の一人が言った。
「どうにもならない。最初はスパイかと思ったが、話を聞く限りその疑念もなくなってしまった。呆れたものだ。一応、難民の奴らの監視は手抜かりなく行え。念のためにな。」
「大佐の方はいいので・・・?」部下の困惑した表情に、彼女は答えた。辛辣さと共に。
「奴は裏切らない。少なくとも、我々の国家がまともな状態のままであったら裏切らないだろう。データによるとあの家族も四年前、ノクタリスが行った大規模なの『コロニー破壊作戦』で亡くなっていた。これはただのうわさに過ぎないが、奴に家族の単語を並べると無意識に苦い顔をする。『妻や娘』の所で若干、目の間に線が細くできるという。だから私は、奴は黒ではないと考えている。」
「ですが難民は別、ですね。」
「当たり前だ。行くぞ。どうやら我々の権限によると、議会での閣僚との会合に、聞くだけなら我々も参加できるらしいからな。まったく、政治家もいい仕事をしているようだ。」
「はい、閣下。」
そう答えると彼女らも議場に入って行った。銃を持った警備員にカードを差し出し、傍聴席へと入って行った。
円状に傍聴席で囲むような議場には、議員はいなかった。議場と行政府が一つの部屋で交互に行われるシステムだからだ。
閣僚はいるものの「安全保障」という面で、(というより行政が使うときは基本的に)非公開になっている。議会が行われている時、真ん中の円の部分はただの床だが、行政府の会議の時には議員の席の一番手前の列の部分を職員の人が移動させて円卓ができるという仕組みである。
その時、傍聴席にも議員はおろかメディアの人間さえも入ることはできなかった。
ただし、世の中は「例外」がつきものである。「キツネ」には「戦時中特例措置」として傍聴が許されている。スパイが政界にもいるかもしれないから、ということだ。この時点で民主主義としての尊厳が奪われている気もするが、あくまで証拠がない限り文官武官には手を出してはいなかった。
だからなのか、その特例が認められていた。武器の所持こそは無理なのだが。という訳で、あの三人は彼女ら以外には誰もいない傍聴席に佇んでいた。閣僚たちにとってあまりいい気はしなかったが。
「どうしてなんだ、ローゼンバーグ君。彼らがいるのはなぜだ。君たちはともかく、なぜ『キツネ』の連中がここにいる?」行政府のトップ、セルゲイ・アレクセーエフ首相が言った。
あなた方首脳部が決めたことでしょうに。ローゼンバーグは呆れた。いや、首相は反対していたのだった。それでは、怒るのも無理はない。
「これは軍にとってかなりの秘密事項だからです。あなた方の懸念は幾つかあるのは分かりますが、情報保護の面では問題はありません。そして我々を証拠もなしに逮捕する権限もないから大丈夫です。」
「あいつ・・・」アデレイド准将には大佐の声ははっきりと聞こえていた。相当なメンタルじゃないと本人の前では言えないだろう。そこだけは認める事実だった。面の皮が何十にも厚い奴め、そうアデレイドは思った。
閣議での話し合いは単調なものだった。返答に困ったことと言えば、
「どうして彼を、ロメロさんを無条件に信用するのですか。」と閣僚の一人の内務相アイン・サントソに言われたことだった。
「別に無条件ではありません。第一、そこに惑星があるかどうかも二分の一と言った所です。もしそこに敵が待ち伏せしていたりすることがあれば、間違いなくこちらは虚を突かれるでしょう。ですが、わざわざ待ち伏せしているということは、彼らは自分たちをおびき寄せるためにでっちあげた、とでも認識しても良いかと。ですので、今回の出兵はあくまで『探索』です。その実在するかもわからない『星』のために開拓用具をたくさん詰めて出航するわけではございません。」と、きっぱりと言い放った。
「仮に、です。仮に、その情報が敵の罠で、こちらが損害を受けてしまったら、難民もろともあなたが責任を負うという覚悟はあるのですか・・・?」責任を負いたくない責任者め、軽蔑に値する。・・・ああそうかい、そっちがそうならこっちだって・・・。
「もし嘘で被害が出て重傷者や死人が出ようものなら、私が彼を殺し、軍法会議なり刑事裁判なりで私を裁けばいいでしょう。覚悟はできてます。元々、軍人の仕事をしている時はずっとその考え方ですから。」これを円卓近くの席で座っているスズキ准将やロメロの前で言うのだからたまったものではなかった。
当然、一同は驚いた。だが、ローゼンバーグは続けてこう言った。
「ですが、もし仮に、本当に星が在るとするならば、生産能力はコロニーの比ではないことは内務相、あなたが一番よく分かっていらっしゃるではありませんか。」言われた当人は、慄いてどうしようもなかったのは認めざるを得なかったが。悔し気な表情と共に。
結局、大した反対意見も出なかったまま、許可が下りてしまった。ローゼンバーグとしては「面倒なことが終わってよかった」、というあまりにも楽観的な思考だったが、殺害予告と捉えてもいいことを言われたロメロは、最初に難民となってしまった時と同じ表情をしていた。
その後、帰りの船の中で。
「大佐、あれは本心ですか・・・?」と恐る恐る聞いてみたが、
「まさか。ああ言わないと通らないだろ。なにせ、『責任者が責任回避に走っていた』のだからな。私だって危ない橋を渡っているんだ。」と返すだけだった。結局のところ、ロメロは安心できずにいた。
名簿が意外と多いことが分かった。だが、これでもまだ三分の一を満たしているかどうか。かなりの量を書いたが、それでもなお。それでも。それでもおおおおお!
「ユニ●ォォォーーー!ーン」
「やめなさい。」ローゼンバーグに殴られた。こればかりはどうも誤魔化せないだろう。さて・・・説明と行こうか。
ユニコーン・・・機動戦士ガンダムユニコーンの、主人公が言ったセリフ。第21話『この世の果てへ』より。




